現在25兆円市場と、実は伸び続けているフランチャイズ・ビジネス。
「フランチャイズ」という言葉はなんとなく聞いたことはあっても、実際に脱サラしてオーナーになるのは大変そうだし、何から始めればいいのかわからない……。
そんなフランチャイズ初心者のためにおすすめしたい入門書が、新刊『1円も出さずに全国展開する方法 フランチャイズの処方箋』。この本では、「牛角」や「ガリバー」などを急成長させたフランチャイズのプロ・竹村義宏氏が、「本当に儲かる業種は?」「加盟のリスクは?」「初期費用は?」といったフランチャイズ・ビジネスに関する91の疑問に答えています。
Q. 聞けば聞くほど、選び方がわからなくなってきました……
僕はアメリカのフランチャイズも見てきたけど、アメリカでのフランチャイズ加盟って日本と全然違う。
本部がシミュレーション結果を示しても、「こんなんじゃダメだ。黒字になるまでの期間を半分にするには何をやったらいいか?」。契約書を読んで、「こういうこともやりたいが、契約違反にならないか?」と聞いてくる。やるのは自分だと自覚しているからこそ出てくる質問だ。
だけど日本では、そのような質問など皆無に近い。
「今までに加盟して開業した人たちはどうなっていますか?」
「平均的な売上はいくらぐらいですか?」
「これまでの加盟者は、開業資金としていくらぐらい準備していますか」
と、周りがどうかばかりを気にしている。
まるで、周りがうまくいけば自分もうまくいく、周りが失敗するようだと自分もうまくいかないだろうと、判断基準を平均値に求める傾向がある。
しかし成功者の多いフランチャイズだからって、自分が成功できるとは限らない。
うまくいっていないフランチャイズでも、自分がやったら大成功するかもしれない。
さらに「おおよそでいいんですが、黒字になるのは何か月後ぐらいからでしょうか?」と聞いてくる人がいる。フランチャイズに参加すれば本部が事業を成功させてくれると思っているのだろうか。
脱サラ組の中には、商売がわかっていない人が多いと幾度も述べてきた。
事業の分野を選ぶのもあなたなら、どのフランチャイズが一番相応しいかを選ぶのもあなた、そのフランチャイズに加盟して新規出店するための資金を集めるのもあなた。どのようにして成功にたどり着くかもあなた次第だ。
その場合、自分のやりたい業種であることはもちろん、アーリーステージのフランチャイズか、成熟したフランチャイズかなども、自分の好みで選んだほうがスッキリする。
これはよく言われている通り、アーリーステージのほうは伸びる可能性はあるけど、本部自体がダメになってしまう可能性もある。一方で、成熟して大きくなったフランチャイズは安定しているけれど、初期投資額が高くなり、収益率も低い。どちらを選ぶかはフランチャイズ加盟者の性格と能力次第だ。
Q. フランチャイズビジネスに向き・不向きはありますか?
フランチャイズの選び方は自分の好みや志向でいいけれど、それ以前に性格的にフランチャイズに向いているかどうかという問題がある。フランチャイズに加盟して成功するタイプと、フランチャイズで成功できないタイプだ。
自分がどちらのタイプなのかを見極めてから、フランチャイズ加盟で起業するか、フランチャイズなどに頼らずに自分で起業したほうがいいのかを判断してほしい。
フランチャイズ加盟で成功するタイプを一言で言うと“素直な人”だ。人から教わるビジネスだから素直じゃなきゃダメだ。あまのじゃくな人や自己主張の強い人はフランチャイズには向かない。
だから僕なんてまったく向かない。毎年のように、これはイケるって話に遭遇するけれど、フランチャイズ加盟で開業しようとは思わない。素直じゃないことは自分自身がよくわかっている。数多くの成功例や失敗例を見てきたから、自分でやったら失敗するって断言できちゃうところが辛い。
僕は“戦闘力”って言い方をするけど、自立してビジネスをやれるような人を「戦闘力が高い」というふうに表現している。戦闘力が高すぎるような加盟者の場合、本部では持て余すことになる。
たとえば、すごく商売上手な人がコンビニを始めたら、「これはこうしたほうがいいのに」と思うことも多く、次々と本部へ提言したりクレームをつけたりするはずだ。
ところが大概の本部では、すでにビジネスモデルも確立していて、今のやり方に自信も持っている。他の加盟者を迷わせるような言動は控えてほしい。
自然と本部との関係もギクシャクし始め、加盟店の運営にも支障を来し始める。だから一般的なフランチャイズの場合は、素直で戦闘力が「そこそこ」の人のほうが成功しやすいと言える。
Q. 夫婦でフランチャイズを始めるメリットはありますか?
前項では仲間との折り合いという言い方をしたが、戦闘力と素直さにもう一つつけ加えなければならないのが“仲間”という要素だ。
仲間が成功しても、「すごいね」と喜べる人と、そうでない人がいる。素直に喜べないのは、負けて悔しいという競い合う気持ちからだと思うが、そのような嫉妬心が先に立つようでは、フランチャイズには向かない。
フランチャイズ仲間の成功は、必ずフランチャイズ全体に相乗効果をもたらすはずだ。それなのに「あの地域は特別なんだ」などと、他人の成功を喜べない人がいる。これも性格かな。
当然のようにフランチャイズ仲間同士でも、それぞれの展開する店や教室の地域的条件は異なる。だからこそ一人ひとりの生み出す経験が蓄積されて教訓となり、ナレッジマネジメントの効果を発揮するようになる。そのためにもフランチャイズ加盟者に求めたいのは、「素直さ」「戦闘力」、そして「仲間意識」だ。
素直さや節度のある戦闘力がフランチャイズ参加で成功する人の特徴ならば、フランチャイズそのものの成功の可否は、フランチャイズ参加者の仲間意識にあると言っても過言ではないと思う。
そして夫婦の折り合いだけど、コンビニがこれだけフランチャイズとして急成長したのは、夫婦二人でやっていることが多いからだ。夫婦二人で一生懸命やるから安定している。
「セブン-イレブン」の1号店は、豊洲にあった山本酒店という酒屋さんだ。この山本憲司さん、「1号店をやらせてくれ」と熱い手紙を本部に出したのに「独身じゃダメです」と断られてしまった。独身だと社会的信用がないと言われたらしい。
すると山本さん、「セブン-イレブン」に加盟するために、すぐに相手を探して結婚したらしい。素直さが大切だと前項で書いたけれど、超素直そのものだ! それにしても、コンビニに奥さんが大事なのは、その後の経緯を見てもわかる。
フランチャイズに加盟する人の必要条件である仲間意識とは異なるが、脱サラで独身っていうよりも、奥さんがいて協力してくれるほうが、明らかに成功確率は高い。
それでなくても脱サラしてフランチャイズに加盟して起業しようとしたときは、猛烈に奥さんに反対されたのに、いざ起業してみたら奥さんのほうが活躍しているって例が多い。
女性のほうが堅実だし、ちょっとうまくいったら高級車を買ったり、キャバクラ通いを始める馬鹿亭主と違って、先のことも考えながら着実に前進するのも女性かもしれない。