現在25兆円市場と、実は伸び続けているフランチャイズ・ビジネス。
「フランチャイズ」という言葉はなんとなく聞いたことはあっても、実際に脱サラしてオーナーになるのは大変そうだし、何から始めればいいのかわからない……。
そんなフランチャイズ初心者のためにおすすめしたい入門書が、新刊『1円も出さずに全国展開する方法 フランチャイズの処方箋』。この本では、「牛角」や「ガリバー」などを急成長させたフランチャイズのプロ・竹村義宏氏が、「本当に儲かる業種は?」「加盟のリスクは?」「初期費用は?」といったフランチャイズ・ビジネスに関する91の疑問に答えています。
Q. 世界的企業になったフランチャイズはありますか?
フランチャイズは、力の弱いフランチャイザー(主宰者、本部)と、商売上のノウハウを持たない弱者のフランチャイジー(加盟者)がお互いの弱点を補いながら強者(大企業)に立ち向かう手段だ。
カーネル・サンダースは、そこそこ人気のあるお店をやっていたけど、車の流れが変わったために儲からなくなった。困り果てたカーネルは、自分のレシピを使って商売を始める方法を売り込み始めた。これがフランチャイズビジネスの始まりだが、当時のカーネルは、これはもう敗者と呼んだほうがいいような、完全な弱者に過ぎなかった。
それと同じ時代、マルチミキサーの営業マンだったレイ・クロックが、マクドナルド兄弟の経営するハンバーガー店に出合った。
マクドナルド兄弟のハンバーガー店がすごく繁盛していて、マルチミキサーも次々と売れた。このような店がどんどんできれば、自分の機械ももっと売れるはずだと思ったらしい。
ところが店を増やすべきだと勧めても、マクドナルド兄弟は乗ってこない。そこでクロックは、それなら自分がこの店をフランチャイズで広げる担当をするという契約を結んで、マクドナルド兄弟の店に入り込んだ。
やがてクロックは「マクドナルド」という店の商標を買い取り、さらにはフランチャイズ展開の邪魔になってきたマクドナルド兄弟を追い出して、「マクドナルド」を自分のものにしてしまった。そしてその後、一気に全米へフランチャイズ展開して大成功することになる。
この創業秘話は “The Founder”(『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』)という映画になって、2017年の夏、日本でも公開された。
Founderは創業者という意味だけど、繁盛店を作ったマクドナルド兄弟と、それを乗っ取って広げたレイ・クロックのどちらが創業者かというのは、意見が分かれていて面白い。
繁盛する店のアイデアに価値があるのか、それともそのアイデアをマニュアル化して誰にでもできる店にしたところに価値があるのか?
僕の周りの経営者連中に聞けば9割がレイ・クロック支持派だけど、同じことを社員たちに聞くと半分くらいがマクドナルド兄弟支持派になる。これも経営者の視点とサラリーマンの視点との違いがわかって面白い。
ちなみにこの映画の原作といえるレイ・クロックの自伝『成功はゴミ箱の中に』はベストセラーになっていて、ユニクロの柳井さんやソフトバンクの孫さんたちが経営のバイブルとして絶賛しているよ。
「サブウェイ」も、まだ17歳だったデルーカという青年が、大学の学費を稼ぐために作った店だ。貧しかったデルーカ青年に「お前の考えたサンドイッチ屋の発想は面白い」「1000ドル出してやるから店を作って学費を稼げ」とお金を出してくれた人がいた。このデルーカ青年も、弱冠17歳でお金も信用もない、弱者そのものだった。
高価格・高品質を謳い文句にした日本発祥のハンバーガーチェーン「モスバーガー」だって、証券会社に勤めていた男が脱サラで始めた店だった。
Q. フランチャイザーとフランチャイジー、最後に得をするのはどっち?
さまざまなフランチャイズができて、フランチャイズ加盟希望者にとっても選択肢が広がったと言えるね。前にも言ったように、フランチャイズの選び方は自分の志向に合わせた業種のほうがいいから、選択肢が増えれば、より自分に合ったフランチャイズを選ぶことができる。
それとフランチャイザー(主宰者)のほうは、まずフランチャイジー(加盟者)を儲かるようにしてから利益を得るという順序を守らなければならないから、初期の段階では試行錯誤もあって時間がかかる。一方でフランチャイズ加盟希望者のほうは、既存の成功事例を参考にして選択するだけだから即断即決も可能になる。
いわばフランチャイジーは、いいとこ取りができるし、失敗したら切り捨てて、新たなフランチャイズに挑戦すればいいだけだ。損切りも乗り換えもできるから、時代の変化に合わせた臨機応変な対応ができる。だから5勝3敗程度だと難しいが、6勝2敗なら儲かるし、7勝1敗なら大儲けできる。
それと身軽さってことで言えば、まるで株の売買のように、やっているフランチャイズ加盟店を売ることだってできる。自前のラーメン店なんかだと、たとえ繁盛していても、オーナーが代わると同じ味を出せなくなることが多い。同じ味にならないと、店を引き継いでも常連客の足が遠のいてしまう。
これがフランチャイズのラーメン店ならば、オーナーが代わろうとコックが代わろうと味は変わらない。誰でもできるフランチャイズの加盟店だからこそ、容易に売買できる。
フランチャイジーは身軽なだけじゃない。レバレッジをかけて一気に躍進することもできる。最初に加盟したフランチャイズが気に入って、もし他に最適と思われるフランチャイズがないようならば、新規の多店舗化だけでなくフランチャイズ内の既存加盟店を買い取って、そのフランチャイズの中のトップ加盟店になるのも面白い。
商売って、成功だけでなく失敗もあって当然で、自分の失敗だけでなく、人の失敗からも学ぶことが大切になる。失敗の数だけ経験や教訓が身につくものだから、数多くの失敗例を見ることができるのもフランチャイズならではの利点かもしれない。
Q. 多店舗経営だと仕事が大変になりそうです……
フランチャイズ加盟社の社長が、自分でやることなんてほとんどないよ。それどころか何もやらないほうがいい。やることなんて、次にどのエリアに進出するかを考えることと、次はどのようなフランチャイズをやるかって考えることぐらいだよ。
それ以外のことはスタッフに任せないと、人材が育たない。それが直営事業との大きな違いだし、現場をどのように運営するかはフランチャイズの本部が考える仕事だから、加盟店の社長が現場に出てとやかく口を差しはさんでも邪魔なだけだ。
さらに本業だけに精進しているような普通の会社の社長ならば、中長期の戦略を考えて計画を立てるという仕事がある。これもフランチャイズ加盟で事業展開する社長には無縁の仕事だ。
年商数億円から数十億円のマルチフランチャイジーだろうと数百億円のメガフランチャイジーだろうと、そんな悠長な事業計画なんてものを立てなくても、その時々でいいものを取り入れればいいだけだ。
ダメになりそうな店舗を切り捨てて、次に流行りそうなフランチャイズへの加盟を模索する。戦国時代の武将の領地にも似た自分のテリトリー。地元を見渡して、欠けているもの、不足している店は何かを考える。あとは人材育成に力を注ぐ。
同じフランチャイズ加盟店の中で、儲かる店と儲からない店の差なんて、立地条件と人材以外には何もない。だから立地は選べばいいし、人材は育てればいい。
もし他にフランチャイジーとしての明暗を分けるものがあるとすれば、あとは情報力の差だと思う。ただしこの情報力の差は、たとえばSNSに参加しているかどうかといった些細な違いによるものだ。
実は今、SNSをやらない限り情報を共有できないフランチャイズは多い。ここへきて急成長したフランチャイズのほとんどが、Facebookなどをフル活用している。
今の時代、知識や知恵の情報はネット上に溢れている。そのような時代だからこそ、他者と差別化できるのは“生の情報”“リアルタイムの情報”でしかありえない。
もはやホームページやブログの記事はタイムラグのある情報、過去の情報と見られるようになってしまった。だから怖いのは、ホームページなどの情報が最新情報であるかのように思っている情報弱者になることだ。
それさえ避けることができれば、目の前の、手が届くところに“フランチャイズ・ドリーム”は浮かんでいる。
――このつづきは、『1円も出さずに全国展開する方法 フランチャイズの処方箋』をお読みください!