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はじめてのスパイスブック

2018.07.01 公開 ポスト

スパイス料理研究家が教える基本のスパイス(1)

毎日使える黄色い万能薬、ターメリックカワムラケンジ(スパイス料理研究家)

体調管理が難しい蒸し暑い季節にぴったりの新刊『おいしい&ヘルシー!はじめてのスパイスブック』では、心も身体も元気になるスパイス生活について紹介しています。

インドや周辺諸国の人々にとってスパイスが健康に役立つということは常識で、その日の気候や体調に応じてスパイスを使い分けています。日常に「グッド・フォー・ヘルス」が溢れているんです。

本書より、スパイスの知られざる魅力と手軽な取り入れ方を抜粋してお伝えします。

基本のスパイス(1)ターメリック

◎主な使い方
南アジアで大切なスパイス。肉や魚介類などの下味としても多用する。

◎味
ほのかな甘みがある。直輸入品の中には時々苦みやえぐみの強いものが混ざることも。

◎主な効果
抗菌作用。肝機能亢進や抗ウイルス活性の期待。月経不順や健胃作用、美肌など。継続的に摂取すると記憶力や空間認識力に好影響をもたらすとも言われる。

◎常備量
30g以上。紫外線に当たると色が褪せてくるので密閉容器で暗所に保管。

◎特長
南アジアで最もよく使うキング・オブ・スパイス。薬、着色料としても使う。

◎その他
沖縄ではウコンと呼ぶ。春、紫、秋、黒、白など種類があり、スパイスとして使われるのは秋ウコン。オレンジ色に近い黄色で色が鮮やか。

◎主な産地
インド、東南アジア、沖縄など

抗菌、止血、健胃胆など毎日でも使える黄色い万能薬

「THALI」時代にガラスの破片で手を切ってしまったことがあり、周囲のインド人たちが傷口にターメリックをかけろと言うので恐る恐るぱらり。するとすぐに血は止まり、化膿せず数日できれいに治ったことがある。彼らの噂通、ターメリックは確かに傷薬であった。

 料理でも肉や魚介類の下味として使っているのをよく見かける。ネパールの山中で川魚レストランを営むジャヌカさん(*1)は、1尾の魚に対しターメリックをひとつまみずつ振りかけ、30分ほど置いてから油で揚げる。「ターメリックは抗菌剤。魚のような生ものには特に必要ね」。

 西インド出身の主婦ラタさん(*2)は美容にも使えると言う。「バターやクリームチーズに練り込んで、それを肌や顔に塗ると綺麗になるね。吹き出物やニキビなどじぇったい治る。あと、蜂蜜と合わせて小さじ1杯だけ舐めるのもいい。血液が綺麗になる。人によって使う量や服用期間は違う。継続が大事」。

 東インド出身の料理人アリムルさん(*3)は「子供の頃、フレッシュターメリックのジュースをお母さんがよく作ってくれた。風邪、胃痛、しんどいとき、なんでも効く。あと身体に塗ると美容になるし、魔除けにもなる。結婚する男女は顔や手に塗りつけ3日後に式を挙げます。洗わずそのままにしておくことでグッドエネルギーが宿るのです」。

 近畿大学薬学部(*4)の学生たちにも調べてもらったら「確かに喉の痛み、関節痛、健胃、潰瘍の内服、また疲労回復に役立つというデータがある。古代から万能薬として重宝されてきたことは間違いない」とのことだった。

 科学的分析や感応検査、また論文調査などを進めていくと、古くから抗菌に関する資料が山ほど残されていることに驚く。ほか、肝機能亢進や抗ウィルス活性の情報もあった。最近の論文では、ターメリックを継続的に摂取することで、神経伝達物質量に影響を与え、記憶力や空間認識能力に影響するという報告も。我々日本人もぜひ家庭の必需品としたい。

川魚マスにターメリックをまぶして約15分(ネパール)
秋ウコンのドライスライス

論文:抗ウィルス活性の文献: Sathishkumar M.,Sneha K., Yun Y.-S., Bioresource Technology,101, 7958–7965, 2010.
神経伝達物質の文献: Pyrzanowska J., Piechal A., Blecharz-Klin K., Lehner M., Skrzewska A.,Turzyńska D., Sobolewska A., Plaznik A., Widy-Tyszkiewicz E., Pharmacol. Biochem. Behav.,95, 351-358, 2010.

*1 ジャヌカ・バスコタさん(主婦。ネパール・カトマンズ市街地から30キロほど北西へ行った山中で川魚レストランと宿を経営)/2 ラタ・デーブさん(インド西部グジャラート出身の主婦。現在、大阪市淀川区のインド料理『カジャナ』経営)/3 アリムル・シャイクさん(インド東部コルカタ出身。チェンナイやバンガロールの各ホテルの厨房勤務を経て現在、吹田市のインド料理『カレーリーフ』シェフ)/4 近畿大学薬学部(『スパイスジャーナル』人気コーナー『スパイス宇宙の旅』では毎回、同学部准教授薬学博士の多賀 淳さんとカワムラが共にスパイスの謎に迫る)

関連書籍

カワムラケンジ『おいしい&ヘルシー! はじめてのスパイスブック』

スパイス生活を始めると、心も身体も元気になる! ちょい足しにも、本格料理にも! 代表的なスパイス14種類の基本知識と効能、今日から使えるスパイスレシピ。

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はじめてのスパイスブック

暖かくなったり、寒くなったり、体調管理が難しい季節の変わり目。病気や不調から身を守るには、ふだんの食事がとても大切です。スパイス料理研究家、カワムラケンジさんの『おいしい&ヘルシー! はじめてのスパイスブック』は、心も身体も元気になる「スパイス生活」のキホンがわかる一冊。今回はその中から、ちょい足しあり、本格料理ありの「スパイスレシピ」をご紹介します。今夜のおかずはこれで決まり!

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カワムラケンジ スパイス料理研究家

1965年、大阪生まれ。多岐にわたる飲食現場を経験。とくにスパイスに興味を持ち、1980年代に本格的な研究をはじめる。スパイスの真髄に触れ、1998年にインド料理店「THALI」を開業。本格的なインド料理とクリエイティブな才能を活かし人気を博す。20代後半から執筆活動も開始。2010年、世界で初のバイリンガル・スパイス専門誌『スパイスジャーナル』を創刊(2015年1月まで)。薬学博士、薬剤師、栄養管理士、ヨーガ講師たちとともに、多角的なスパイス研究に取り組んでいる。スパイスをテーマにしたレシピ開発や取材をはじめ、雑誌掲載やテレビ出演も多数。著書に『絶対おいしいスパイスレシピ』など(木楽舎)がある。公式ホームページはこちら

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