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はじめてのスパイスブック

2018.07.19 公開 ポスト

スパイス料理研究家が教える常備したいスパイス

日本の奇跡のスパイス、わさびカワムラケンジ(スパイス料理研究家)

体調管理が難しい蒸し暑い季節にぴったりの新刊『おいしい&ヘルシー!はじめてのスパイスブック』では、心も身体も元気になるスパイス生活について紹介しています。

インドや周辺諸国の人々にとってスパイスが健康に役立つということは常識で、その日の気候や体調に応じてスパイスを使い分けています。日常には「グッド・フォー・ヘルス」が溢れているんです。

本書より、スパイスの知られざる魅力と手軽な取り入れ方を抜粋してお伝えします。

常備したいスパイス:わさび

◎主な使い方
おろして寿司やざるそばの薬味に。鶏肉とのあえもの。ステーキなど肉にトッピング。チューブタイプのワサビなら醤油や酢を合わせてドレッシングにもなる。

◎味
そのままだと爽快な香り。すりおろすことで酵素が働き辛みが生まれる。

◎主な効果
抗菌、抗酸化、抗炎症、抗がん各作用。ストレスの緩和。臭み消し。

◎常備量
生なら1本を購入。残れば冷蔵、冷凍保存が可能。

◎特長
最近はブランド農園・産地ものをインターネットで購入できる。

◎その他
生の場合、1本300円~1500円くらいまでと幅があるので、好みのものを選ぼう。

◎主な産地
日本

抗菌、抗酸化、臭み消し。清流の中でしか育たない日本の奇跡のスパイス

『スパイスジャーナルvol. 10』ではわさびを特集した。その際、いつものように薬学博士の多賀さんと共に調査と分析を試みた。議題は辛さの理由と薬効の有無について。結論は次のとおりである。

「辛みの正体はアリルイソチオシアネートという化合物。だが、すぐに揮発してしまうのでシニグリンという前駆物質として細胞の中に蓄えられている」

「シニグリンはブドウ糖とくっついた状態で貯蔵されており、必要なときに酵素を使ってアリルイソチオシアネートとブドウ糖に分解する」

 早い話が、おろすことで辛みが生まれ、その中に薬効が期待できる成分が確かに含まれているということである。薬効は「抗菌、抗酸化、抗炎症作用、そして抗がん作用」などとすごい。ただ、揮発性が高く、現実的にどこまで吸収できるのかはこの時点でわからず、ひとまず単純に辛さがいつまで持続するのかを計ったら、なんと5分ほどで消え、同時に味も格段に落ちてしまった。そのことと薬効力の関係までは判断できないが、確実なのは、おろしたての生わさびを出すそば店や日本料理店へ行くか、あるいは食事する直前に自分で生わさびをおろすか、ということに。冷凍をおろすことも可能なので、生わさびさえ手に入るなら意外に現実的な作戦である。

 特集内でもうひとつ興味深い話がある。それが天然わさびの冒険だ。リーダーは滋賀県の料理宿ご主人の徳山浩明さん(*20)たち3人。川を越えて茂みの中を突き進む。途中、何度かわさびを発見するが、すべて直径1センチほどの細いものばかり。この理由がなんと、茂みの中では、自らが持つ抗菌作用で中毒を起こして大きくなれないというのだ。仮に何かの拍子で成長したとしても採れるまでにまだ2、3年はかかるという。この後、さらに清水を辿り、崖を這い上がったところでようやく大きなわさびを発見。そこは水温10 ~15℃の中性の水が湧き続ける場所であった。天然もので太いわさびを見つけることは奇跡に近い、ということをこのとき我々は初めて知った。

 山の案内人曰く、乱獲防止のため採取場所を公開することはできないという。日本原産のスパイスは自然の絶妙なバランスの中で今も育まれている。

滋賀の山中でみつけた天然わさび

鮫の皮おろしならきめ細かくクリーミーに。東海、信州、山陰、北関東など各地で栽培されている。水の中で育てる沢わさびと、土中で育てる畑わさびがあり、前者のほうが形も大きく価格は高い。最近は品種や畑の改良が進み、肉厚なものが出回り、中国産も増えている

*20徳山浩明さん(天然のワサビや山椒など自ら採取にいく。滋賀県長浜市余呉町にて料理宿『徳山鮓』を営む)

関連書籍

カワムラケンジ『おいしい&ヘルシー! はじめてのスパイスブック』

スパイス生活を始めると、心も身体も元気になる! ちょい足しにも、本格料理にも! 代表的なスパイス14種類の基本知識と効能、今日から使えるスパイスレシピ。

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はじめてのスパイスブック

暖かくなったり、寒くなったり、体調管理が難しい季節の変わり目。病気や不調から身を守るには、ふだんの食事がとても大切です。スパイス料理研究家、カワムラケンジさんの『おいしい&ヘルシー! はじめてのスパイスブック』は、心も身体も元気になる「スパイス生活」のキホンがわかる一冊。今回はその中から、ちょい足しあり、本格料理ありの「スパイスレシピ」をご紹介します。今夜のおかずはこれで決まり!

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カワムラケンジ スパイス料理研究家

1965年、大阪生まれ。多岐にわたる飲食現場を経験。とくにスパイスに興味を持ち、1980年代に本格的な研究をはじめる。スパイスの真髄に触れ、1998年にインド料理店「THALI」を開業。本格的なインド料理とクリエイティブな才能を活かし人気を博す。20代後半から執筆活動も開始。2010年、世界で初のバイリンガル・スパイス専門誌『スパイスジャーナル』を創刊(2015年1月まで)。薬学博士、薬剤師、栄養管理士、ヨーガ講師たちとともに、多角的なスパイス研究に取り組んでいる。スパイスをテーマにしたレシピ開発や取材をはじめ、雑誌掲載やテレビ出演も多数。著書に『絶対おいしいスパイスレシピ』など(木楽舎)がある。公式ホームページはこちら

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