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脳が冴え続ける最強メソッド

2018.06.28 公開 ポスト

心理的ストレスが脳に与える悪影響とは?

世界のビジネスエリートたちは、肉体をメンテナンスするのと同じように、脳のケアにも投資を始めています。日本でも昨年、認知症を予防するための脳トレーニングジム「ブレインフィットネス®」の誕生が話題に。5月にはこの脳トレーニングジムのプロデューサー髙山雅行氏と脳科学者の杉浦理砂氏の共著『ブレインフィットネスバイブル 脳が冴え続ける最強メソッド』が刊行されました。
 今回はストレスが脳に与える影響について。書籍の内容の一端をご紹介するコラムシリーズです。

現代人を取り巻く様々なストレス

現代社会において、人間はストレスと無縁ではいられません。情報過多、過労、人間関係、育児・介護ストレスなど挙げたらきりがないでしょう。それ以外にも、自分自身の老いに伴う認知機能の低下や身体的な問題にストレスを感じることもあると思います。

ストレスには、生体の内部環境に直接影響を与える身体的ストレスと、それ自体は内部環境に直接的な影響を与えないけれど、将来的に影響があることを予測し恐怖や不安、焦りなどが生じる精神的・心理的ストレスがありますが、今回は精神的・心理的ストレスについて話を進めます。

「ストレス」という言葉は、もともと構造物に対する物理的な力をさしていましたが、これが生理学に応用され、外部からの恐怖や嫌悪などの刺激、また刺激を受けたときに生じる生理的反応を表すようになりました。

一般に、「ストレス=悪いもの」と考えられがちですが、必ずしも悪いものではなく、人間にとって有益なストレスもあります。例えば、スピーチの前に体験するような適度なストレスは覚醒度、集中力、注意力、処理速度などを高め、刺激に対する反応を良くします。この類のストレスは短期的なもので、ストレスが有益に働き期待以上の成果が得られれば、やる気の源となるドーパミンが分泌され快感が生まれます。すると、さらなる快感を得ようと、次の行動へのモチベーションが高まり、さらに高い目標へと挑戦するというポジティブな行動へと繋がります。これはドーパミンの「強化学習」と呼ばれ、適度なストレスは私たちを成長へと導きます。

一方、上記のような体験においても、期待通りのパフォーマンスが得られなかった場合は、失敗の体験が尾を引き、ストレス要因になることもあります。また、職場の人間関係や過労によるストレスも多くの人が経験あるのではないでしょうか。健康な状態である時は気分転換や運動でストレスを解消することができますが、これらのストレスの厄介な点は、戦うことも逃げることもできない状況が長期に及ぶことが多いことです。上司に怒りを覚えても強く反抗できない状況が続くこともあるでしょうし、そう簡単に仕事を辞めるわけにもいきません。

これらのストレスが非常に強い場合、または長期間続いた場合は、適応できなくなり、脳の働きが低下したり、身体に様々な悪影響を及ぼします。

精神的・心理的ストレスによる脳疲労のメカニズム

人間はストレッサー(ストレスを誘発する「刺激」)を受けると、大脳皮質(言語や理論的思考など人間の高度な機能を担う)や大脳辺縁系(食欲や睡眠などの本能や、喜び・悲しみ・怒り、快・不快などの情動の機能を担う)の扁桃体が興奮し、間脳にある視床下部に伝達されます。すると、視床下部にある自律神経核によって交感神経と副交感神経がセットで働き、身体を正常に保とうとします。受けるストレスが対応可能な範囲であれば、身体は正常に保たれますが、強さや期間が長期化することにより対処可能な範囲を超えると、そのバランスが崩れていきます。

ここで、ストレッサーを会社の社長、大脳新皮質を部長、大脳辺縁系を課長、間脳を社員に例え脳内の働きをみていきます。健全な組織であれば、(部長-課長-社員)三者間のコミュニケーションは問題なく取れているはずで、社内の人間関係のトラブルは発生せず、皆が本来の仕事に気持ちよく専念できます。生体でいうところの恒常性(ホメオスタシス)が保たれている状態です。

しかし、もし社長(ストレッサー)が次から次へと部長(大脳新皮質)に希望を伝え、部長が社長の希望をそのまま全て課長(大脳辺縁系)に命令し、課長からの意見に全く耳を傾けようとしなかったら、情報の流れは部長(大脳新皮質) → 課長(大脳辺縁系)の一方向のみとなります。また、課長(大脳辺縁系)が過労気味でも、部長(大脳新皮質)がそれを無視し続けていたら、両者の関係は悪化し、亀裂が生じるでしょう。また、部長(大脳新皮質)と課長(大脳辺縁系)の関係が悪くなれば、その下で働く社員(間脳)も不安になり、戸惑い、混乱状態に陥ります。この状態が改善されなければ、やがてこの組織は破綻する(脳機能が低下し脳疲労を起こす)でしょう。

脳内でも同様に、過多な情報(社長の過多な希望)を受け、大脳新皮質(部長)が取捨選択せず全て受け入れ、大脳辺縁系(課長)からの「辛い」、「休息がほしい」、「眠りたい」などのメッセージを無視し続け、一方的で抑圧的な状況が続くと、混乱状態に陥ります。この状態が続くと、大脳新皮質と大脳辺縁系の関係が正常でなくなり、これを受けて間脳(社員)の働きも悪くなり、脳疲労を起こし、脳機能が低下します。

このように、ストレスを抱え込んでいる状態は、大脳辺縁系や視床下部で沸き起こった不快や怒りなどの感情を、大脳新皮質の理性で無理矢理押さえつけている状態です。このような不自然な状態が長期間続くと、脳の視床下部や脳下垂体の働きが悪くなり神経細胞がダメージを受け、制御不能に陥ります。

それでもストレスが緩和されなければ、副腎からコルチゾール(副腎皮質ホルモン)が分泌されます。コルチゾールが過剰に分泌されると、免疫機能が低下し、感染症やあらゆる病気に罹患しやすくなるだけでなく、記憶の中心的役割を果たす海馬を委縮させ、短期記憶、長期記憶が低下するといわれています。

ストレスケアに有効なマインドフルネス

それではストレスを解消するにはどうしたらいいのでしょうか。

書籍『ブレインフィットネスバイブル』(幻冬舎)には、ストレスケアの方法としてマインドフルネスが取り上げられています。マインドフルネスは運動や映画鑑賞などと異なり、やり方さえマスターしてしまえばオフィスでも実践することが可能です。書籍にはマインドフルネスの有効性に関するエビデンスなど多数紹介しておりますので、詳しく知りたい方は『ブレインフィットネスバイブル』(幻冬舎)をご覧ください。

また、下記日程で書籍『ブレインフィットネスバイブル』の出版記念イベントを開催します。著者である脳科学者 杉浦理砂氏の書籍の解説と、岩手医科大学薬学部神経科学講座教授であり、ヨガ療法士資格も取得されている駒野宏人先生によるマインドフルネス・ヨガの体験会を実施します。マインドフルネスを実践してみたい方、脳疲労が気になる方など、参加してみてはいかがでしょうか。


 

『ブレインフィットネスバイブル 脳が冴え続ける最強メソッド』出版記念イベント

大学教授、脳科学者がレクチャー

冴える脳の育て方 ブレインフィットネス解説・実践会

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日時:2018年7月25日(水)19時~21時30分
(受付開始時間:18時45分~)
会場:脳トレーニングジム「ブレインフィットネス®
     (〒150-0013 東京都渋谷区 恵比寿4-22-10 ユニゾebisu422 5階)
費用:3,000円(税込)
登壇者:岩手医科大学薬学部神経科学講座教授 駒野宏人氏 
    株式会社イノベイジ ニューロサイエンスラボディレクター 杉浦理砂氏
詳細・チケット購入はこちら
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