辻堂ゆめさんの最新刊『片思い探偵 追掛日菜子』の刊行を記念して、普段から辻堂さんと仲の良い青崎有吾さん、武田綾乃さんをお招きし、「平成に生まれた作家鼎談」を開きました。
平成に生まれた作家としての損得や将来のこと、本を売るためにしていることなどを、お三方にお聞きしました。仲良しだからこそ、平成生まれだからこその鼎談、第二回です!
(文:橘田佐樹/箕輪編集室)
平成作家で得したこと、損したこと
進行 平成生まれ作家で損したなと思うこと、得したなと思うことはありますか?
辻堂 得したこと、あまり思いつかないですね……。あ、青崎さんがデビュー時に「平成のエラリー・クイーン」っていうキャッチコピーで売り出されていましたよね。帯とかにも書かれていて。
青崎 それは損の分類ですね。
辻堂 ごめんなさい、損でしたか(笑)。
武田 ちょっと重かったですか? 背負うものが。
青崎 うん。お、おお、ってなります(笑)。まあ、もう平成も終わりますからね。
進行 「もう平成終わっちゃう」みたいな危機感はないですか?
辻堂 今までは昭和生まれの人たちが「これって昭和だから古いか」って冗談みたいに言ってたけど、今度は私たちがそれを言うのか、一つの時代が過ぎるな、って。若ぶっていられなくなっちゃうね。前時代の人になるからね。
青崎 「え、たまごっちって何ですか?」って。
武田 執筆中もめちゃくちゃ悩みます。もう、今の世代の子とかには「ビデオ」って書いても分からないだろうなとか。
辻堂 MDって絶対小さい子は知らないよね。
青崎 iPodももうだめだよね。
辻堂 「iPadの間違いでは?」って言われそう。
青崎 作家さんと集まってよく話すのが、作中で「LINE」と書きたいとき、「LINE」ってそのまま企業の名前を使って書くか、「メッセージアプリ」とかぼかした名前で書くかどっちが良いんだろうって。けど、『片想い探偵 追掛日菜子』には、「Twitter」はめちゃくちゃ出してますよね。
辻堂 そうですね。Twitterはそれに代わる存在が過去になかったと思うんです。mixiとか似たものはあったんですけど、今この時代に似たものが見当たらない。だから、それを「某SNS」とかtwitterをもじって似た名前にするよりは、そのままの名前の方がスーッと読んでもらえるかなと。固有名詞を隠すことで、逆に違和感にならないようにしたい。
武田 結論としては、平成生まれで得することも得することもそんなにない!
辻堂 損は「平成のエラリー・クイーン」って呼ばれることぐらいです(笑)。
これからの作家のあり方はどう変わる?
進行 将来、自分の子供が大学や高校を出て「専業作家になりたい」と言い出したら止めますか?
辻堂 まず、「自分の子供が大学生」って思い描けない。
青崎 何年後の話だ。
辻堂 20年後ぐらい?
武田 私は、もともと専業作家になる気は全くなかったんです。小さい頃から「兼業作家になる」って卒業の作文とかに書いてたくらいで。
辻堂 私もそんな感じ。現実的な夢と非現実的な夢を二つ持ってました。小学校ぐらいのときに「作家という非現実的な夢だけじゃだめだから、現実的な夢も持ちなさい」って親から言われて。ずっと「作家と○○」って言ってた。作家と会社員、作家と学校の先生とか。
青崎 でも、お二人とも昔から作家になりたいと思ってたんですね。
進行 青崎さんはいつから小説家になりたいと思ってたんですか?
青崎 僕は最初漫画家になりたかったんですけど、絵が上達しないからやめて。大学生ぐらいから「じゃあ小説を書こう」と思って。
武田 じゃあ、「アンデッドガール・マーダーファルス」のコミカライズって、ある意味夢が叶ってますよね。
青崎 すごい嬉しかったですね。あと、アンデッドガールは表紙を大暮維人(おおぐれいと)先生に書いていただいたんですけど。高校生の頃に一番好きだったのが大暮維人先生だったのでちょっと夢が叶った。
武田 着実に夢が叶ってるじゃないですか!
辻堂 青崎さんってたまに自分の著作よりコミカライズされた方をめちゃくちゃ嬉しそうに話してる。自分の著作を語る時はそんなにテンション高くないのに、コミカライズのことを話すときはめちゃくちゃテンション上がってる(笑)。
武田 話を戻すと、「早くデビューしなきゃ」って焦ることが他の人に比べて少なかったかもしれません。会社員をやりながら30歳までに作家デビューするのが夢だったので。
辻堂 自分の子どもが専業作家になるって言って、反対するかどうかは「現実的かどうか?」の問題じゃないですか。そもそも、2040年ぐらいに小説だけを書く作家がいるのかなって疑問に思います。
青崎 なくなってるんじゃないかな。
武田 シナリオライターとか作家が全部一緒になってそう。
青崎 お話を作る人、っていうくくりの職業になってそう。
辻堂 「チャット形式で進む話を書いてくれませんか?」って依頼も今あったりするので。三人とも、小説の形で絶対書きたい、という感じではないですよね。
武田 小説は好きなんですけど、紙媒体の小説だけを絶対視しているわけではないというか。
青崎 仮に紙の本が全部なくなって「Webでお願いします」となっても、お話を書くことでお金が稼げるならあまり気にしないような。
武田 この3人は書くことが好き、作ることが好きっていう集まりなのかも。
青崎 一番好きなのは紙の本ですけどね。
武田 もちろん私も。どの作家さんもそうだと思いますけど、物理的に可能なのであればずっと本を書き続けたいです。
進行 本を売るためにやっていることはありますか? 3人ともTwitterはやってますよね。
青崎 でも宣伝用でやってるわけじゃないので……。僕は適当にやってます。
辻堂 青崎さんは光り過ぎるセンスがあるので(笑)。
武田 2人で会うと、毎回褒めてる(笑)。
辻堂 簡単に炎上する時代でもあるので難しいなって。ツイートする前は書いて消してを繰り返している。
武田 私は「Twitterは最低でも1週間に1回はツイートしよう」と心掛けているのですが、なかなか難しいですね。人を傷つけるツイートはしたくないので、ひとつのツイートに30分くらい考えてしまいます。当たり障りのないことしか言ってないから、宣伝の助けになっていないかも。
辻堂 本売るのに繋がっているのかなって思っちゃいますよね。
青崎 マーケティング的な部分は編集者さんに任せたほうがいいのかも。『片思い探偵 追掛日菜子』は公式Twitterがありますよね。
辻堂 公式Twitter(@kataomoi_tantei)ありますね。編集さんが「ツイ廃か?」っていうくらい更新してくれてて、フォロワーも結構いるんですよ(7/3時点で777人)。
武田 どういう形の宣伝が良いのか、色々と試行錯誤しています。イメージセンテンスを載せるパターンと、普通に「何日発売です」っていうパターンで分けてみるとか。
辻堂 イメージセンテンスっていうのは、帯に描けそうな一文を綾乃ちゃんが自分で考えて載せてるってことだよね?
武田 そう。発売前は新作情報を何度もリツイートするんですけど、同じ情報だとリツイートする側も抵抗があるのかなぁと思って。だから、新しい情報を一文でも載せてたりするとリツイートしてくれる人が増えるかな? と考えたり。
辻堂 綾乃ちゃんがイメージセンテンスをツイッターで発信しているのを見た時、面白いなと思って。帯見た時に「ああ、この本いいな」ってなる感覚と似てて、SNSでもできるんだなって思いました。しかも、作家さん本人が書いてると考えると、特別感もでる。
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