ネットで好きな相手の素性を探るSNS世代須藤凜々花／辻堂ゆめ（作家）

東京大学在学中に作家デビューし、最新刊『片思い探偵　追掛日菜子』を発売した小説家、辻堂ゆめさん。NMB48メンバーとしてセンターを経験し、著書『人生を危険にさらせ！』を上梓。NMB48卒業後は大学進学を目指しながら、GOETHE(ゲーテ)連載『りりぽんのスキスキ委員会』でエッセイを綴る須藤凜々花さん。作家、タレントと仕事を続けながらも、若くして結婚し家庭を営むお二人が、リアルな女性の恋愛観、結婚観、学びをテーマに対談しました。第1回は、お二人の恋愛観を中心に語っていただきます。
（文：吉崎唯／箕輪編集室）
 

ネットで相手の素性を探るSNS時代の恋愛

――須藤さんに辻堂さんの著作『片思い探偵 追掛日菜子』を読んで頂きましたが、主人公の日菜子のように、相手をストーキングしたいくらい好きになることに共感しますか？

須藤凜々花(以下、須藤)　めっちゃ共感しました。日菜子の「盗聴で自分が捕まってもいいから、推しの（好きな）俳優の潔白を証明したい」っていう姿勢に「こいつガチだ」と。

辻堂ゆめ(以下、辻堂)　（笑）。

須藤　「ガチのいかれてる乙女だ」って思って、そこで「かっこいい！」ってなりました。「何だよ、舞台俳優通かよ」って最初は思ったんですけど、その後好意をもつ相手が相撲の力士、最後は総理大臣にまでぶっ飛んだ。一章一章、読むごとに好きになってきましたね。

辻堂　ありがたい。

須藤　一人一人に対してガチで恋してるから、好感が持てます。

ー好きになって全部相手のこと知りたい！　と今までに思ったことはありますか？

須藤　あります！　もう基本そういうタチです。めちゃめちゃストーカーです。

辻堂　好きになった相手のこと、調べたりします？

須藤　めっちゃ調べました！

辻堂　そうなんですか？　どんな？

須藤　旦那さんに対しても、出会ってから１年間ずっと片想いだったんですけど。お母さんの友達だったので、その友達づてに生年月日を教えてくれって頼みました。毎日、二人の生年月日で相性占いみたいなのやって。

辻堂　すごい（笑）

須藤　 LINE ゲットしたら、トップ画の映りこんでるアルバムの歌詞みたいなのを解読して、そのアーティストを探したり。

辻堂　日菜子並みだ！

須藤　LINEミュージックが広末涼子さんの『MajiでKoiする５秒前』で「マジかよっ、広末派かよ」って思って、美容院に広末さんの写真を持っていって、広末さんに似せたショートカットにしました。友達のアカウントから辿って、ツイッターとインスタのアカウントも見つけました。

辻堂　本人に聞いたわけじゃなくて、先に？

須藤　旦那さんのアカウントを見てたっていうことは言ってないです、今も。

辻堂　そうなの？

須藤　そうなんです。旦那さんが「Nowplaying」という音楽アプリで聴いた曲をハッシュタグをつけてツイートしていて、彼が聴いてる曲を調べて毎日ダウンロードしてました。それで、アプリを彼に勝手に覗かれた時に「えっ？」って驚かれて。

辻堂　疑われなかったんですか？

須藤　はい。

辻堂　趣味が共通してたのかもって思ったんですかね。

須藤　はい、危なかったです。

ー辻堂さんは片想いの相手のことを調べた経験はありますか？

辻堂　結構調べる方ではあります。今だと、実名でやってるFacebookをちょっと覗くくらいは普通なのかなって。

ーどこまで調べますか？タイムラインを見るまでか、友達まで見るのか。過去まで結構遡るのか。

辻堂　どうかなあ。少なくとも、作中の日菜子のようなところまではやってないですね（笑）。

片想いと両想い、どっちが辛い？

須藤　両想いって辛くないですか？　片想いって追いかけるのが、楽しいじゃないですか。両想いになった途端、マジでダルいんですけど。

辻堂　（笑）。それは、気にしなくちゃいけないことが多いからとか？

須藤　なんか不安です。アクションがないから、ゴールが見えないですね。次に待ち受けてるゴールが、別れしかないのが怖い。

辻堂　片想いだと「付き合う」という一番楽しい明確なゴールがあるけど。たしかに一回付き合っちゃったら、どうとでも分岐するし、悪い方にも行く可能性がありますもんね。
ー片思いは何が不安なんですか？

須藤　毎日死にそうになります。

辻堂　それはありますよね。

須藤　めちゃめちゃ死にそうだった、今思えば。毎日会えなくて寝れなかったです。

辻堂　会えないとか、返信が帰ってこなかったり。既読になったのにしばらく返信がない時とか。

須藤　あの焦らしプレイ、マジでいらないです。早く返事をよこせよ！(笑)

辻堂　スタンプ1個ぐらい押してくれてもいいのに…とか思っちゃう。今だとSNSならではのコミュニケーションのもどかしさがありますね。

須藤　たしかに。

辻堂　私は相手から放っておかれる辛さをあんまり楽しめないタイプです。だから、片想いというより、結婚というゴールに辿り着いた方が安心できちゃう。でも、片想いを純粋にドキドキ感としてめちゃくちゃ楽しんでる子の話を書きたい思いはあって。それで日菜子が生まれたという感じです。

須藤　強いですよね、日菜子ちゃん。

辻堂　日菜子はメンタルがめっちゃ強いので、片思いしてる自分も好きなんだろうし、そんなキャラクターになりました。
ー須藤さんは片想い中に毎日死にそうになるわけじゃないですか、それでも片想いの方がいいですか？

辻堂　そこ気になります！

須藤　今は片想いしてた時の自分に嫉妬してます。その時の方がかわいかった気がする。

辻堂　えー！　片思いの時の自分が？

須藤　はい。好きな人にかわいいって言ってもらってたから。片思いの時は、LINEの文章も長くて、忙しくてもめっちゃ会いに来てくれてた。今から思うと、めっちゃ大切にされてたんだなって感じて。当時の自分に「何してんだよ！　それを当たり前と思うなよ」って言いたいです。

幼い恋と初恋の質の違い

辻堂　小学校とかちっちゃい頃は、恋しませんでした？

須藤　しました、しました！　幼稚園の時が一番恋してました！　同じクラスの男子、全員好きでした。人によって初恋の時期って結構違うじゃないですか。幼稚園って子もいるし、高校ぐらいで初めてって子もいるし。でも、幼稚園の時の恋と最終的な初恋は質が全然違うと思う。
今の旦那さんに出会った時、これが初恋かって思いました。昔、高校の先生を好きになったことがあって。52歳の地理の先生で、結婚して子どももいて、どうにもならないんですけど。でも、だからこそ、好きだったのかなあって今は思います。絶対こっちを好きにならないから。

辻堂　確かに、完全な片想い成立ですよね。私も高校時代に「推し」の先生がいました。世界史の先生が好きで、クラスの卒業文集のランキングで「先生キラー」1位の称号をもらいました(笑)。その先生のこと「大好き！大好き！」って言い過ぎてたから。確かに高校の頃は、闇雲に一人の先生を推してた時期はあったかもしれない。その先生とどうにかなりたいとは思ってないけれど。

須藤　思わないですよね。

辻堂　まったく思わないです。何にもなく、ただただその先生が好き。

須藤　一緒にカルピスが飲みたいと思いました。

辻堂　青春！(笑)　52歳の地理の先生と！

須藤　同級生の男子にも超言われてました。「お前、じゃあ先生と付き合えよ」とか、「そういう妄想とかしてんだろ」みたいなこと。私としては「いやっ、私は先生とカルピスが飲みたいだけ」って。

辻堂　めっちゃ面白い！私も一緒にカルピス飲めればよかったなあ。