少子化社会のモラハラ、パワハラ、マタハラ、セクハラ……と、しなやかに、強かに闘う女性の痛快長篇『四十歳、未婚出産』(垣谷美雨)。書店員さんから、様々な感想が届いています。
主人公優子の気持ちが痛いほどわかります。そして、彼女の周りの登場人物の気持ちも。それぞれが自分に正直で人間くさい。私も田舎から東京へ来て働いている1人です。優子の葛藤、後悔、悲しみ、苛立ち、垣谷先生は私を知っているのか!? と邪推してしまうほどリアルです。ラスト(18節あたり)から私もエールを送りながら読んでしまいました。お母さんのエピローグはきっと垣谷先生から日本に生きるすべての人へのエール、そして、ラストの一言は先生の照れ隠し……ですよね。
(芳林堂高田馬場店 齋部美樹さん)
『後悔病棟』(小学館)を読んでから、垣谷さんの作品のファンです。今回の作品も、一気に読んでしまいました。自分を変えることはなかなかむずかしいけれど垣谷さんの作品の主人公は変わっていく。とてもいい風に。読んでいて元気をもらえる本です。あんまり、主人公のイメージを作って本は読まないのですが、今回は、優子のイメージは松たか子さんでした。楽しかったです。
(三省堂書店名古屋本店 神保町いちのいち名古屋店 大屋恵子さん)
当たり前だけど男は出産出来ないので、相手に知らせず子供を産み育てる、と云う経験は、どんなに頑張っても不可能である。そう考えると、彼女の行動は女性だけに可能な特権であり、男にとっては真には理解出来得ない事なのかも知れない。配偶者は不要だが子供は欲しい、と云うお話は世間坊でも良くある事であるし、実際に実行しておられる方々も多い。優子の気持ちを100%理解して共感する事は私には出来ないが、これから訪れる親子の時間が幸せであれよと願うし、やがては凡庸に似た兄弟が加わったら素敵だな。我が血を分けた子供が産める女性が、ある意味、少し羨ましくもある。
(大垣書店高槻店 井上哲也さん)
もし、中年未婚女性が恋人でもない12歳年下のイケメン部下の子供を妊娠したら? これが子供を産む最後のチャンス。産むか産まないか、相手に伝えるか、否か……。
無理だ……育てられないと自分なら思うだろう。シングルマザーでどうやって子供を育てていくのか? しかも高齢出産、仕事はどうする? 田舎や親戚の偏見や好奇の目、パワハラ上司、お腹の子供の父親、恋人の執拗な詮索もうっとうしい! ただでさえ妊婦はしんどくて辛いのに! でも「産む」ということは、早い段階で心が決まった。心の声に素直に従ったというべきか、凄いと思う。後半、味方が少しずつ現れて、いろいろな問題が解決していく。でもそれはあくまで生活のベースが整っただけで、子供と生きていくために働いて、生活して、子育てしなければならない。これからも、いろいろあるだろう。でも母は強し! 子供をもたず後悔する人生ではなく、大変だけど協力し合える人達に囲まれた人生を掴んだ優子の決断を支持したいと思う。優子の母も、偏見に満ちた人かと思ったら、自由な心を持つ1人の強い母だった。凡庸さんの、うんちくとおもいやり溢れる語りがいい! 読後、これから見えるいろいろな景色を想像すると、暖かい気持ちになりました。
(三洋堂新開橋店 山口智子さん)