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週末島旅

2018.08.06 公開 ポスト

島民との絆「ゲストハウスひるねこプロジェクト」【讃岐広島】小林希(旅作家)

6月8日に上梓された、旅作家・小林希(こばやしのぞみ)さんの最新刊『週末島旅』。
6月27日に、『週末島旅』の発売を記念したトークイベントが開催され、書籍に収録されていない話も含めて、たっぷりと島旅の魅力をお聞きしました。今回は、讃岐広島編です。(文:世良 菜津子)

ゲストハウスひるねこ、発足

会社を辞めて世界一周した後、瀬戸内海の島旅に出かけました。その島旅で、讃岐広島にどっぷりとつかることになります。

讃岐広島は、塩飽諸島(しわくしょとう)と言って、丸亀から船で行けるような場所にあります。讃岐広島は、そのあたりの島々でいちばん大きい島なので広島って言います。でも、広島県と間違えられるので正式名称ではありませんが、みんな「讃岐広島」って呼んでいます。

讃岐広島の茂浦(もうら)という集落で、島の皆さんと一緒にゲストハウス「ひるねこ」を作りました。

初めて讃岐広島で島の人たちに会った時、「何をしたら、島に人が来てくれるようになるだろうか?」という相談を受けました。讃岐広島には、観光名所や宿、食事処がありません。人を呼ぶにはあまりにも受け入れ体制が整っていなかったので、宿を作りませんか?と、島の方に提案しました。そんな縁から、島の皆さんと一緒に茂浦にある空き家を利用してゲストハウスを作ることになりました。

その空き家は、築60年くらいで、30年間空き家だったそうです。状態を調べたところ、屋根が落ちたり、雨漏りしたりとかがなかったので、できる限りの手を加えるだけで、なんとかゲストハウスの運営ができるように再生しました。

この空き家の再生は、市の助成金など、どこかからお金をもらうということは一切なく、本当に自力でやりました。ゲストハウスを作りたいけど、お金がありません。島の人たちは、当時65歳前後で、空き家再生の経験も全くない。そういう状況で、「だけどもやらんといけんのや」っていう島の皆さんの強い想いだけでプロジェクトが立ち上がって、始まりました。

島でゲストハウスを立ち上げると言っても、いちばん大事なことは地元の人たちの気持ちと、地元の人に受け入れてもらうことです。きちんと一人ひとりに個別で説明することはできないので、自治会長協力のもと説明会など何度か設けていただいて、島の方たちに「やりましょう」と地道に話してきました。

この時は、1か月のうち1週間くらいは讃岐広島に滞在して、島の人たちに顔を覚えてもらうために活動していました。

いくつになってもみんな夢をもって、「とにかくやろう!」っていう想いで動き始めるのはすごく美しいなぁと感動し、このプロジェクトの中で、私が励まされることも多くありました。

島の人たちとの衝突、悔し涙。そして大漁旗。

ただ、島で新しいことを始めるっていうことを理解してもらうのには、すごく時間がかかりました。島という世界の中にいると、外から来る「旅人の気持ち」がよくわからないということもあって、いくら私が「こういう風にした方がいいですよ」って言っても、「それはよくない」っていう風になっちゃって。島の人たちとよく衝突していました。

本当に、何回泣いたかわかりません(笑)。「私はこの島を出ます!!」って言って、隣の島に家出ならぬ島出をしたこともあります。

隣の島の宿に泊まって、「ちょっと言いすぎちゃったかなー」「でも、私は悪くない!」とか、一晩中ぐるぐる考えて(笑)。翌日しんみりと島に戻ったら、「おかえり」って言ってもらって。そういうような甘酸っぱい体験を、このプロジェクトでさせてもらいました(笑)。

こんな紆余曲折があって、この島のパワーが集まったゲストハウスひるねこが完成しました。お披露目する日は大漁旗が掲げられて、茂浦の港に周辺の島の自治会長とか、偉い人たちが自分の船に乗って集まってくれたんです。祝いの酒やお花を持ってきてくれて、20人くらい集まって、その光景はすごく感動的でまるで異世界のように感じました。

私はこのプロジェクトに関して1円ももらっていません。このプロジェクトには、島の人たちとの心のつながりだけで関わったので、島の人たちとの絆というかけがえのないものをもらえたのかなって思います。

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6月8日に上梓された、旅作家・小林希(こばやしのぞみ)さんの最新刊『週末島旅』。
6月27日に、『週末島旅』の発売を記念したトークイベントが開催され、書籍に収録されていない話も含めて、たっぷりと島旅の魅力をお聞きしました。

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小林希 旅作家

一九八二年東京生まれ。旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。1年後帰国して、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。旅をしながらネコの写真を撮り続ける。また、執筆活動の傍ら、瀬戸内海の島にゲストハウスをオープンするなど島おこしに奔走する。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』(幻冬舎)など多数。現在五十五カ国をめぐる。『デジタルカメラマガジン』(インプレス)で「世界のネコに恋して」を連載中。
◆インスタグラム&ツイッター:nozokoneko

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