僕は女子と二人っきりになると、全くうまく話すことができない。37歳にしてあんまり症状がひどいもんだからWebで調べてみたら、「思春期にそうなる人は多い、だが普通はそこから数年の間にそういった症状は治まり、異性と自然に交流できるようになる」とのこと。うるせえ。学者だか医者だか知らねーが、てめーが勝手に”普通”を決めんな。まわりからどんだけ異常に見えようが、俺は俺の人生しか生きられねーんだからこれが普通なんだよ。黙っとけやキノコ野郎(自分で調べたくせに☆)
というか僕、女子どころか、男とも二人っきりになるとしんどくて。自分といるとつまらないんじゃないか、早くこの時間終われと思われてるんじゃないか、というストレスが強烈にかかるんです。だからそんな時は、嘘の用事作ってその場を離れるか、酒を飲んでごまかす。三人以上だと全くそんなことないんだけどな。あと仕事だと大丈夫なんだけどな。
で、なんでこんなことになったのかというと、思い当たるきっかけはあります。あれは僕が高校1年生の頃でした。中学時代、スクールカーストでいう2軍だった僕は、入学した高校にヤンキーが全くいなかったのをいいことに高校デビューを決行。つっても、美容室にメンズノンノの切り抜き持ってって髪切って(それまでは街の床屋「バーバーホンダ」で切ってた)、ほんの少しだけ丈の短い学ランを着て(当時熊本ではこの「短ラン」というのが流行ってたのです)、ぐらいのしょぼいもんだったんですけどね。
で、そんときの僕の親友、相棒が、今木という男で。こいつがほんとおもろいやつだった。ギャグのキレが半端ないのと、あとなんか華やかな雰囲気があって、エレキギターも上手くて。僕はいつも今木と一緒にいて、今木もたぶん僕のことを一番のパートナーだと思ってくれていて。なんというか、自慢の友達でした。
でも、そんなふたりの関係は、ある出来事をきっかけに変容することになります。一緒につるんでいた仲間のひとり、キヨシというやつが、親の仕事の関係で県外の高校に移ることになって。そんでキヨシが、密かに想い続けていた江藤さんという女子に告白をする、と言い出したんです。
まあそれ自体はなんでもないことだったんですけど、なんかね、今木がそれを境に、やたらキヨシと仲良くなり始めちゃって。休み時間とか、しょっちゅうキヨシと二人でこそこそ何かを話してるんですよ。僕はそれが凄く不安で、焦った。せっかく高校デビューして最高の相棒を見つけたのに、その人が自分から離れていくのが怖くて仕方なかった。だから必死こいて今木に話しかけるんですけど、なんかよそよそしくて。盛り上がんなくて。
ある日の放課後、今木とキヨシと僕の三人でいたとき、僕は今木に話しかけました。内容は忘れたな。とにかく必死だった。でも今木は「・・・ああ、そう」みたいな曖昧な返事しかしてくれなかった。そしてそのあとすぐキヨシに、「今日一緒に帰ろうぜ」みたいなことを言ったんだ。
こっから僕は、男と二人っきりになると強いストレスがかかるようになった。沈黙を恐れるようになった。盛り上げないといけない、という強迫観念にさいなまれるようになった。てか今思い返してみたら、大した出来事じゃねえなあ。でもそっから20年もたってんのに、未だその傷が消えないんだ。他人からは平凡に見える人生だとしても、激動の人生ではなかったとしても、それでも人は深く傷ついたり、ひどく悲しんだりして生きてるってことだよな。
こんな話をこの前飲みながらバンド仲間にしたら、「柴田さん、俺も昔おんなじ経験しましたよ。俺、親友だったやつに、金属バットでボコボコにされました」って返ってきた。ハードモード人生かよ。
人はみな、傷ついている。
おしぼりを巻き寿司のイメージで食った
いつだって”僕ら”の味方、忘れらんねえよ。
「恋や仕事や生活に正々堂々勝負して、負け続ける人たちを全肯定したい」という思いで歌い続けてるロックバンド。
そんな“忘れ”のボーカル、ギターの柴田隆浩が、3年半ぶりにエッセイを書くことに!メロディーはもちろんだが、柴田の書く言葉に、ヤラレル人多数。
“二軍”の気持ちを誰よりもわかってくれる柴田の連載。
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