◆人事部が悪い社員を社内調整=ブッ殺す!?◆シリーズ累計150万部「ニンジャスレイヤー」チームが描く衝撃の社内スパイアクション『オフィスハック』待望の4thシーズン! 舞台は東京・丸の内の巨大企業T社。人事部特殊部隊「四七ソ」の香田と奥野に今日も新たな社内調整指令がくだる。不正を働くオフィス内のクソ野郎どもをスタイリッシュかつアッパーに撃ち殺せ。テイルゲート! ショルダーサーフ! 禁断のオフィスハック技の数々を正義のために行使せよ!
◆11◆
「お、香田ちゃん、おはよう」
室長が新しい席でコーヒーを飲んでいた。もう段ボールは畳まれ、私物は全て新しいデスクへと移住している。残っているのは、おれの机の上の段ボールだけだ。
「あ、おはようございます」
「うーン、その顔は、旧デスクに行っちゃったって顔だろ?」
「すみません」
室長相手に嘘はつけない。おれは首の後ろを撫でた。
「室長も、もう終わったんですか? ずいぶん早く来てたんですね」
「そりゃ引越しだもの。テンション上がっちゃうじゃん? どうこれ」
「ああ、眺めがいいですね。開放感ありますよ」
「でしょ?」
室長の後ろには、床から天井までの開放感あふれる全面窓ガラスがあった。さらに観葉植物まで置いてある。
しかし、おれには少し引っかかる点というか、違和感があった。
おれたちの新しいエリアは、第2ビルの14階南側だ。広くて風通しの良いフロアで、南側の席数は全てあわせると200席近い。そして、それらの間に壁はないのだ。猛暑でボケたおれの頭も、次第に回るようになってきた。
「えっ、ここ、オープンプランじゃないですか」
「そうなんだよねえ」
室長が他人事のように言った。
オープンプランとは、壁やドアで仕切られていない、だだっ広いフロア環境のことだ。ついたて式のパーティションは一応あるが、おれたちの島からパーティション一枚隔てた向こうには、他の通常部署の机が並んでいるのだ。
「というか、ウチは機密部門なのに、こんなところに来ていいんですか?」
「それがさア、聞いてよ香田ちゃ〜ん。この前の人事部総会で上が揉めて、うちのグループは密室性が良くないんじゃないの、っていう話になってねえ。バカヤローだよね」
「密室性が、良くない……?」
おれは室長が何を言っているのかよく理解できなかった。
しかし口ぶりからして、室長もまた、人事部の意図に対して何一つ納得できてはいないことが察せられる。いつものことだ。
「そうそう。最近業績がパッとしないし、ならず者部署も増えてきてるでしょ? そういうのは、T社全体が密室で奇妙なローカル文化を育ててるせいじゃないか、っていう指摘が上の方であってね。うちも巻き込まれちゃったわけ」
「まあ、社全体としてなら、解らなくもないですよ。縦割りすぎて、他はみんな敵みたいな感じですからね。でも、ウチはちょっと違うじゃないですか。やってることが」
「だよねえ。でもウチもほら、ただでさえ調整とかやってるのに、自分たちしか入れないような秘密基地みたいな所にいたら、必要以上に怖がられたりするでしょって言われて」
「今さら感がありますね」
「でももう決まったことだからねえ。こうしてお隣さんの部署もできるわけだし。もうこの際、いいじゃないの。隣と仲良くして、四七ソのイメージアップ大臣になってよ!」
おれはハイともイイエとも返事しないことにした。こんなところで迂闊な合意は危険だ。うまくかわして、井上などに回さねばならない。
「ちなみにこれ、隣の部署はどこなんです?」
「どこだっけな。後で挨拶しようか。ランチ会とかやってもいいけど」
「ランチ会。びっくりですね」
「時代に合わせて、変わらなくちゃね。四七ソも」
「しかし、本当にこんな引っ越しで何か変わるんですかね」
おれは最後に、愛用のペン立てを机に置いた。これで段ボールは完全にカラだ。
「ハハハハ。ないない。要するにさあ、振り子だよ、いつもの。あんまり深く考える必要なし」
「ああ、なるほど……。そういう振り子ですか」
その言葉で、おれは室長の言わんとすることが理解できた。
T社グループは、いわば目の見えない巨大なマンモスだ。地響きをあげてその巨体を揺らし、右へ行ったり、左へ行ったりしている。そして業績が上がらなくなってくると、このマンモスは単純に逆方向へと方針転換を行う。
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