およそ8組に1組のカップルが抱えている、子どもができないという悩み。これまでは女性に原因があるとされがちだった。ところが、医師の石川智基氏によると、約半数にあたる48%は「男性に原因がある」のだという。
この衝撃的な事実を世に広めたのが、石川医師の著書『男性不妊症』だ。常識がガラリと変わる本書の一部を、抜粋してご紹介します。
約48%は男性に原因があった
WHO(世界保健機関)の調査によると、不妊症の原因は41%が女性のみ、24%が男性のみ、11%が原因不明です。つまり男性に不妊症の原因が見つかるカップルが約48%となりますので、不妊症の検査は夫婦ともに受けることが望ましいと考えられます。
しかしながら、大半はまず妻が婦人科を受診し、さんざん女性側の検査が進められます。女性側に何も異常が見つからない際に、はじめて夫の精液検査を行い、異常が認められると男性不妊症と診断されます。
一般に男性は不妊治療に対して非常に消極的です。全く痛くない精液検査ひとつとっても、妻が説得に説得を重ねて、ようやく採取していただいているのが現状です。それも、自宅で容器に採取したものを、奥さまが一人でクリニックに持って来られるケースがほとんどです。クリニックによっては夫の診察を勧めることさえしないところも多いのではないでしょうか(ほとんどの婦人科の医師は男性不妊に詳しくないのが現状です)。
他院の泌尿器科を勧められたとしても、かつては「泌尿器科」という、性病を連想させる名前に気後れして、受診する割合は極めて低いものでした。こういった態度を許してきた背景が日本にはあり、いきなり変化を求めても上手くはいきませんが、やさしく妻思いの男性が増えてきたのか、男性不妊外来を受診される方が少しずつですが増えてきています。
まだほとんどが婦人科医師からの紹介で、妻側に不妊となる原因がないから……と仕方なしにご主人が来られるケースですが、治療が功を奏するケースも増えてきています。
不妊の原因は1つではない
男性側の原因は多岐にわたります。脳から副腎、精巣、精巣上体、精管、精嚢、前立腺、陰茎(ペニス)、尿道まで、皆さんには耳慣れない臓器もあるかもしれませんが、これらの中にさまざまな原因が考えられます。
たとえば精巣において精子が造られるためには、脳の下垂体というところから出るホルモンが重要な役割を果たしており、このホルモンを出せないと、精子は造られません。また前立腺に炎症があると精液中に白血球が大量に出てきて、膿精液症という病態となり、男性不妊の原因となりえます。
陰茎が十分な硬さにならない勃起不全(ED)もれっきとした男性不妊の原因です。さらに射出された精液内に精子が1匹も存在しない「無精子症」や数が少ない「乏精子症」、運動精子数が少ない「精子無力症」などなど、非常に多くの原因があります。