およそ8組に1組のカップルが抱えている、子どもができないという悩み。これまでは女性に原因があるとされがちだった。ところが、医師の石川智基氏によると、約半数にあたる48%は「男性に原因がある」のだという。
この衝撃的な事実を世に広めたのが、石川医師の著書『男性不妊症』だ。常識がガラリと変わる本書の一部を、抜粋してご紹介します。
精子は「酸化ストレス」に弱い
乏精子症の方にとって、精子の濃度、運動率、そして質すべてが一気に上昇してくれるような内服薬があれば一番いいのです。無精子症の方にとっては薬を飲むことによって精子ができてくることを期待したいでしょう。
しかし残念ですが、それはまず不可能です。これまで述べてきたように、精子形成というのは本当に複雑な過程からなっています。特効薬というのはこれまでの研究からも考えて、まず不可能だと考えます。
それではどうすればいいのか? それは少しでも精巣にとっていい環境を与えてやるしかないのです。たとえば、禁煙すること。喫煙はさまざまな臓器に酸化ストレスを与えることがわかっています。精子はこの酸化ストレスに非常に弱いのです。
精巣の高温環境を避けるために、なるべくサウナや長風呂は控える、自転車やバイクも控える。また月並みな表現になってしまうかもしれませんが、規則正しい生活をし、栄養をきちんと摂り、ビタミンの適量をきちんと摂取する。精液を溜めすぎない(禁欲期間を短くする)。
精子を増やすためにできることは、現在のところ、こういったことに尽きるのです。
悩んだら医師へ相談しよう
この情報化の時代です。知りたいことがあればインターネットで何でも情報が手に入るようになりました。これはこれで素晴らしいことなのですが、残念ながら間違った情報も多く存在します。
多くの不妊クリニックがホームページを開いていますが、中にはもうひとつ理解不足のサイトもあります。一般の方が自分の体験を元に書き込んでいるサイトもありますが、個人個人によって状況は違うわけですし、正しい方針で治療が進められているかどうかもわかりません。サイトの記事を鵜呑みにして外来に来られ、なぜ自分には違う治療を勧めるのか、と怒る方もおられます。
大事なのは医師とのコミュニケーションです。不妊治療は比較的長期間かかるものでありますが、女性側には年齢や金銭的な問題などあまり時間を無駄にしたくないという焦りがあります。この間に医師が信頼できなくなり、病院を替えたりすることは相当な無駄です。ひとつひとつ確認しながら進んでいくべきだと思います。情報に惑わされず、自分自身の病態と不妊の原因に対して一直線に取り組むことが必要なのです。
医師の時間が取れなければ、看護師や胚培養士、カウンセラーなどに尋ねるのもいい案だと思います。疑問を溜めていくと良くありません。すべての治療に納得ができないと前に進むべきではないと思います。
また女性側だけで抱え込むのは絶対に良くありません。時間が許す限り、夫婦二人で病院に行きましょう。一人よりも二人での方が理解も深まりますし、何より一緒に治療を行っているという連帯感が大事です。
精子も卵もどちらも非常に繊細なものです。ちょっとしたストレスで質の低下を来してしまいます。明るく、前向きに助け合いながら取り組んでいきましょう。