◆人事部が悪い社員を社内調整=ブッ殺す!?◆シリーズ累計150万部「ニンジャスレイヤー」チームが描く衝撃の社内スパイアクション『オフィスハック』待望の4thシーズン! 舞台は東京・丸の内の巨大企業T社。人事部特殊部隊「四七ソ」の香田と奥野に今日も新たな社内調整指令がくだる。不正を働くオフィス内のクソ野郎どもをスタイリッシュかつアッパーに撃ち殺せ。テイルゲート! ショルダーサーフ! 禁断のオフィスハック技の数々を正義のために行使せよ!
◆22◆
BLAM! BLAM!
「えうッ!?」「ヒイッ!」
最低限の銃声と調整。おれは武装した見張りを始末すると、テイルゲートから抜け、会議室ドアの前に立った。
ドアの隙間からは、大麻のあの臭いが漏れ出している。
「おい、頼むぜ! 無事でいてくれよ……!」
おれは祈りながら、会議室のドアを勢いよく蹴り開けた。おれを待っていたのは絶望だった。部屋の真ん中、会議机の上には、めらめらと燃える機密ダンボールがあった。
奴らは何て恐ろしいことをやってのけるんだ。隠蔽のために、ここまでやるのか。
しかし感傷に浸る暇は無い。銃弾のお出迎えだ。
BLAM! BLAM! BLAM!
「くそッ……!」
おれは防弾ブリーフケースで防ぐ。会議室内、物陰に隠れた敵が、おれに弾を浴びせてきやがった。なんとか防いだが、ブリーフケースがそろそろ限界だ。
「ざまあ見やがれ、死神め!」「燃やしてやったぜ!」「手を突っ込んで火傷してみな!」
BLAM! BLAM! BLAM!
燃え盛る機密段ボールを挟んで、銃撃戦が開始される。
「ナメんなよ人事部め!」「俺たちゃ生活かかってんだよ!」「体張ってんだよーーッ!」
BLAM! BLAM! BLAM!
ふざけやがって。こいつらの必死アピールは完全に詭弁だ。普段ナメた仕事ばかりして、ケツに火がつくまで散々汚い手で金稼ぎをして、いざヤバくなったらこれだ。
「大麻工場じゃなくて、本来の業務に邁進すべきだったな!」
BLAM! BLAM! BLAM!
「あうッ!」「ひイッ!」「ワック!」
おれの怒りの銃弾は、会議室の奥にいたならず者社員3人を速やかに調整した。
「間に合ってくれ! せめて、キングジムの1個だけでも……!」
おれは会議机まで走り、その上の機密段ボールに蹴りを入れた。火の粉が舞った。靴底から危険な熱が伝わってきた。機密段ボールは床に落ち、燃え残ったキングジムの金属部品や、黒い煤を吐き出した。石油製品の燃える匂いが鼻をついた。
「ダメかよ、ちくしょう……!」
やられた。機密資料はもう、ほぼ全て消し炭に変わっていた。
「香田さん、どうっスか!?」
後藤が駆けてきて、戸口をくぐった。そして燃やされた段ボールを見てがくりと肩を落とし、声を失った。こいつはなんだかんだ、喜怒哀楽が激しくて、情にもろいんだ。
「こんなのって……ないッスよ」
BLAM! BLAM! BLAM!
「香田さん! 後方、室長たちが苦戦しています!」廊下から高橋の声と銃声が聞こえた。
「状況どうした! ダークガバナンスか!?」おれと後藤は気持ちを切り替え、ドアを開けて飛び出した。
「違います! コンサルはおそらくリモートで、ここにはいません! しかし敵が予想外に重装備で、手こずっています!」
高橋が歯切れよく室長の見立てを説明した。その時だ。
テッテッテ、テッテッテテテテ。
着信音が鳴り、おれのiPhoneがバイブした。液晶画面には「奥野さん」の文字。
「すまん高橋、奥野さんから通信だ」
「大丈夫です、僕と後藤が援護していますので!」
BLAM! BLAM! BLAM!
「助かる!」
おれは後藤がここまで運んできた移動式ホワイトボードの陰に隠れ、iPhoneを取った。しばしば頭のすぐ横、ホワイトボードの金属面で甲高い跳弾が起こり、火花が飛んだ。
「奥野さん! 奥野さん! 大丈夫ですか!?」
『御子柴は非常階段を逃げています! 私はこれを追っています!』
「了解です! 段ボールは……駄目でした。燃やされました……!」
電話の向こう側で、奥野さんが嘆息するのがわかった。無念さが伝わってきた。顔が見えなくたって分かる。あれはやはり奥野さんの成し遂げた、大切な仕事なんだ。それが一瞬で灰に変わった。
「すみません、奥野さん、間に合わなかった……!」
おれは頭の中が灰のように真っ白になっていた。やはり御子柴は狂った獣だ。奴らを野放しにしたら、何をするかわからない。
『……香田さん。このまま御子柴を追わせてください。単独追跡の許可を』
おれはハッとした。奥野さんに決断を迫られている。メンターとのツーマンセル時に独断行動は禁じられているからだ。おれが許可を出さねばならない。
おれは一瞬だけ思案した。こんな判断をおれが下す日が来るなんて。いつまでも室長や安曇さんの仕事だと思っていた。
でも奥野さんは今おれの部下なんだ。おれが責任を負い、おれの判断が生死を決める。
グラついてる場合じゃない。
「勝ち目は、あるんですか?」
『相手は2人です、手に負える範囲です。今なら間に合うはずです』
「わかりました、安全第一でお願いします! おれは屋内の援護を!」
『感謝します』
奥野さんとの通話はそこで終了した。おれは銃弾飛び交うオフィスに意識を戻した。
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