1. Home
  2. 生き方
  3. 眩しがりやが見た光
  4. 糖分 of LOVE

眩しがりやが見た光

2018.08.30 公開 ポスト

糖分 of LOVEマヒトゥ・ザ・ピーポー

脳にとって糖分は大切。受験の頃、牛乳瓶の底のようなメガネをかけたガリ勉の奴がそう言いながら、学校でずっとクッキー食べてて、黒い学ランの上にはその粉クズが散らばり、不潔な印象をムント振りまいていた。やっぱしそいつはデブだったし、何より悲しいのは大して成績も良くなかったことだ。

努力は人を裏切るなあとその粉クズを見て思っていたが、今にして思えば、ただ精神的デブであったというだけであって、糖分をないがしろにするのを決定づけるにはサンプル不足なのではないかと思う。余談中の余談だが、そのデブは今、名古屋でデパートの婦人服を売っているらしい。きっとやつのズボンのふくらはぎには今もクッキーのカスが散らばっているはずだ。

睡眠もうまくいかず、ただ夏の陽は脳をぼやかし、ゾンビのように高円寺を彷徨う。千鳥足というわけではないが、風が吹けば揺れるほどにおぼつかない足取り、蜃気楼がうっすらと見える。

一つ打ち合わせを喫茶店にて終えたわたしの足はその日、四谷のとあるお店に向かっていた。

ここから先は会員限定のコンテンツです

無料!
今すぐ会員登録して続きを読む
会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン

マヒトゥ・ザ・ピーポー『ひかりぼっち

いつ、どの部分を遺書として 切り取ってくれても構わない。 あなたがあなた自身である限り、誰にも負けることはない。 オリジナルでもフェイクでもいい。ただわたしであればそれだけでいい。 GEZANマヒト、時代のフロントマン。眩しいだけじゃない光の記録。本連載に加え、書き下ろしを収録。(写真 佐内正史)

関連書籍

マヒトゥ・ザ・ピーポー『銀河で一番静かな革命』

海外に行ったことのない英会話講師のゆうき。長いあいだ新しい曲を作ることができないでいるミュージシャンの光太。父親のわからない子を産んだ自分を責める、シングルマザーのましろ。 決めるのはいつも自分じゃない誰か。孤独と鬱屈はいつも身近にあった。だから、こんな世界に未練なんてない、ずっとそう思っていたのに、あの「通達」ですべて変わってしまった。 タイムリミットが来る前に、私たちは、「答え」を探さなければならない――。 孤独で不器用な人々の輝きを切なく鮮やかに切り取る、ずっと忘れられない物語。アンダーグラウンド界の鬼才が放つ、珠玉のデビュー小説。

{ この記事をシェアする }

眩しがりやが見た光

GEZAN・マヒトの見た、光、幸福、人生。

バックナンバー

マヒトゥ・ザ・ピーポー

ミュージシャン。2009年に大阪にて結成されたバンド・GEZANの作詞作曲を行いボーカルとして音楽活動開始。
2014年からは、完全手作りの投げ銭制野外フェス「全感覚祭」も主催。自由に境界をまたぎながらも個であることを貫くスタイルと、幅広い楽曲、独自の世界を打ち出す歌詞への評価は高く、日本のカルチャーシーンを牽引する。
著書『銀河で一番静かな革命』『ひかりぼっち』、絵本『みんなたいぽ』(絵:荒井良二)。映画監督作品『i ai』がある。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP