脳にとって糖分は大切。受験の頃、牛乳瓶の底のようなメガネをかけたガリ勉の奴がそう言いながら、学校でずっとクッキー食べてて、黒い学ランの上にはその粉クズが散らばり、不潔な印象をムント振りまいていた。やっぱしそいつはデブだったし、何より悲しいのは大して成績も良くなかったことだ。
努力は人を裏切るなあとその粉クズを見て思っていたが、今にして思えば、ただ精神的デブであったというだけであって、糖分をないがしろにするのを決定づけるにはサンプル不足なのではないかと思う。余談中の余談だが、そのデブは今、名古屋でデパートの婦人服を売っているらしい。きっとやつのズボンのふくらはぎには今もクッキーのカスが散らばっているはずだ。
睡眠もうまくいかず、ただ夏の陽は脳をぼやかし、ゾンビのように高円寺を彷徨う。千鳥足というわけではないが、風が吹けば揺れるほどにおぼつかない足取り、蜃気楼がうっすらと見える。
一つ打ち合わせを喫茶店にて終えたわたしの足はその日、四谷のとあるお店に向かっていた。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン