6年連続で「R&Iファンド大賞」受賞、直近の運用成績はなんと「年44.3%」を誇るカリスマファンドマネジャー、苦瓜達郎氏。そんな氏が満を持して発表した著書が、『ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること』だ。
多くの人が見逃している優良中堅企業=「すごい会社」を見つけるにはどうしたらよいのか? そして、投資で成功するにはどんなことを心がければよいのか? 本書の中から抜粋してご紹介します。
経営者との面談ではここを見る
経営者と面談する際に見ているポイントは、世間一般にいわれていることと大差ありません。
たとえば経営者としての視野の広さ、実直さや、周囲から愛される人であるかといったことで、特別なチェックポイントがあるわけではありません。
ただ一つ言えるのは、企業のステージによって、経営者に求めるものの水準が変わるということです。
たとえば伸び始めのベンチャー企業の場合、あるいは成熟した会社の場合、私は経営者のあら探しをすることはありません。
できたてのベンチャー企業は、多くは規模が小さくニッチなビジネスを手がけています。そういった領域でスピーディーに成長している場合、仮に社長が未熟で「一度くらいは痛い目を見そうだ」とか「今後の修業が必要そうだ」と感じても、マイナスの評価にはなりません。草創期にある企業なら、その程度のことには目をつぶる必要があります。
「そのビジネスを生み出した」というだけで評価できますから、経営者が未熟だからといってネガティブに捉えることはありません。
逆に、成熟した企業の場合は、「根っこが腐っていなければいい」と考えています。
「ちょっと頭が固いな」「考えが古くておもしろみがないな」「ちょっと頼りないな」などと思うことはありますが、安定成長期にある成熟企業のトップであればそれでも大丈夫と考え、大きなマイナス評価にはしません。
一方、見る目が厳しくなるのは、ベンチャー企業でも競争の激しい領域で生き残りをかけた戦いが続いているケースなどです。
こうした企業は経営者の手腕が先行きを大きく左右すると考えられるため、どうしても要求レベルは高くなります。
「おいしい」企業、2つのタイプ
一つ補足すると、私が実際に投資するのは「伸び始めのニッチなベンチャー企業」や「成熟した安定成長企業」のほうが多い傾向にあります。
これは、激戦区を才覚でもって生き残っている経営者というのは、一般に高く評価されがちで、株価が割高になることが多いというのが理由の一つです。
また、企業が個人の才覚に頼っていること自体がリスクになるという考えもあります。どんなに経営手腕が優れていても、個人の才覚というものがずっと高いレベルで発揮し続けられるのか、疑問を感じてしまうからです。
「投資をして収益を上げやすい対象かどうか」という観点に立てば、「経営者が未熟でも、ニッチで競争が少ない領域でビジネスが立ち上がっていて、少なくとも当面の成長が期待できる」会社と、「競争が激しく誰が勝つか読みきれない領域でビジネスをしていて、そのなかでは少しだけ経営者の能力が上かもしれない」会社とでは、前者のほうが成功確率が高そうだと思います。
また、すでに枯れた業界であれば、そのなかでよいポジションを作り上げていて競合がなかなか追いつけない状況にある企業に対し、安定的な成長を期待して投資するというのは戦略として有効だと考えています。
いってしまえば、「伸び始めのニッチなベンチャー企業」と「成熟した安定成長企業」というのは、株価が割安であれば、目のつけどころとして「おいしい」のではないかと思うのです。
『会社四季報』はここに注目
私の情報収集法は面談とプロ向けのアナリストレポートが中心なので、「自分で株式投資をしたい」という人にはあまり参考にならないかもしれません。
では、個人投資家は何を見るべきかといえば、私のお勧めは東洋経済新報社の『会社四季報』です。
『会社四季報』は、上場企業の財務情報や業績予想など重要な情報を1冊にまとめたもので、年4回発行されています。
1社ずつ、業界担当記者が取材・分析した「業績予想・材料記事」は非常に詳しく書かれており、ときには後から読み返してびっくりするような記事もあるのです。
株式投資で『会社四季報』を活用するというと、財務データの見方を気にする人が多いかもしれません。
しかし、決算発表の数字で一瞬にして起こる株価の動きに乗ろうとするのではなく、長期で投資する企業を探すのであれば、財務データ以上に「企業の変化」を示す記事に目を向けるべきでしょう。
ですから、生きた読み方をするには、「前後の変化」をチェックするのがお勧めです。すべての企業の記事に目を通すのは無理なので、気になる銘柄をピックアップし、その企業について「業績予想・材料記事」を時系列で読み比べるのです。
『会社四季報』は個別企業の環境変化や業績の変化をいち早く察知して記事にしていることが多く、おおいに参考になると思います。