6年連続で「R&Iファンド大賞」受賞、直近の運用成績はなんと「年44.3%」を誇るカリスマファンドマネジャー、苦瓜達郎氏。そんな氏が満を持して発表した著書が、『ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること』だ。
多くの人が見逃している優良中堅企業=「すごい会社」を見つけるにはどうしたらよいのか? そして、投資で成功するにはどんなことを心がければよいのか? 本書の中から抜粋してご紹介します。
「食品加工機械メーカー」は宝の山
中小型株のファンドマネジャーとして多くの企業と面談し、調査を重ねるなか、私はたくさんのおもしろい中堅企業と出合ってきました。
そのなかには、多くの人が見落としたり気づかなかったりしているだけで、投資対象として有望な企業も数多く存在します。
ここでは、複数の業界や具体的な企業名を挙げながら、おもしろい企業を発見するための視点をご紹介していきたいと思います。
まず取り上げたいのは、食品加工機械メーカーです。「この世の中には、世界中で何百人、あるいは何千人だけがやっていればいいけれど、確実に必要とされているビジネスが無数にある」と指摘しましたが、食品加工機械メーカーはその代表例といえます。
もともと食品は、機械で扱うのにはあまり向いていないといえます。
少々乱暴な言い方になりますが、機械は本来「硬いものや重いものを少々手荒くてもいいからスピーディーに処理する」のが得意なものです。
そう考えると、食品は柔らかかったり、ベタベタしていたり、ふんわりさせる必要があったりして、機械で扱うには繊細すぎるのです。
しかし、そういった困難を乗り越えて独自に開発されてきた食品加工機械は少なくありません。そして、市場は小さくても一定の支持を得て、堅実にビジネスを成長させている企業も多いのです。
日本にユニークな食品加工機械メーカーが多いのは、日本ならではといえる背景があるように思います。日本人は味覚が繊細でかつ細かいことに凝る傾向があるので、食品加工機械も
「いったい、本当に消費者はこれほど高いレベルを求めているのか」
と思えるほど、こだわり抜いて開発されているのです。
寿司ロボットメーカー「鈴茂器工」
たとえば、寿司ロボットメーカーの鈴茂器工(証券コード6405)。寿司ロボットを手がける企業は、ほかにオーディオテクニカなど数社ありますが、競合は多くはありません。
おそらく、過去に寿司ロボットづくりに挑戦した人は数え切れないほどいたことでしょう。しかし寿司のシャリを握るには大変な繊細さが求められますから、機械で扱うのはなかなか大変です。数少ない生き残りのうちの一社が鈴茂器工というわけです。
同社はまず回転寿司店向けの寿司ロボットでブレイクしましたが、その後「第二次ブーム」がやってきます。海外の寿司ブームに乗り、寿司職人のいない現地の日本食店などにどんどん売れたのです。
さらに国内では、スーパーでも寿司ロボットの導入が進んでいます。弁当売り場などで販売されている寿司パックは、かつては業者に外注するケースが多かったのですが、より鮮度のよいものを提供しようという流れのなか、インストアでつくる店舗が増えていったのです。
今では、大きなスーパーならバックヤードに鈴茂器工や他メーカーの寿司ロボットが置いてあるのが当たり前の光景になっています。
もちろん、寿司ロボットが広がっていく過程では、日本メーカーならではのこだわりが盛り込まれていきました。
たとえば回転寿司店にしろスーパーのバックヤードにしろ、機械を入れるとなれば、サイズはできるだけ小さいことが求められます。客席は一つでも多く、商品を並べるスペースはすこしでも広くしたいのがお店のニーズだからです。
また、同社の寿司ロボットは上からご飯を入れるのですが、女性パートタイマーなどでもラクに作業できるようにするために、機械の高さをできるだけ抑えることも重要です。
こういった現場視点での細かい要求を一つひとつクリアしていく「泥臭さ」こそ、鈴茂器工の強みといえるでしょう。
「レオン自動機」も成長の余地あり
次に、「日本的」な食品加工機械メーカーといえば、レオン自動機(証券コード6272)です。
同社は饅頭の餡を包む機械の製造から始まった企業で、ベタベタした生地を扱うのが得意です。饅頭のほか、パンやピザの生地、ハンバーグなどのタネを成形する機械を展開しており、饅頭でつちかった技術の転用が強みになっています。
細部へのこだわりにも相当なものがあります。
たとえばハンバーグを成形する機械では、外側は細挽き、内側は粗挽きにすることもできます。饅頭をつくるときに餡を包むのと似た工程ですが、このような成形によって外側はカリッとしながらも、切ったときには中から肉汁がジュワッと出るようになるのだそうです。
展開力という点では、製パン機の存在感が大きいといえます。コンビニ向けに商品を供給している大手製パン会社の案件が決まって大きく利益を伸ばしたり、アメリカでは成形したパン生地そのものをスーパーなどに供給するビジネスを展開したりしています。スーパーは店頭で同社のパン生地を焼いて販売するわけです。こうした海外事業は、今後成長する余地があるかもしれません。