やる気がないときは、努力や根性のような精神論で解決しようとすると、効果があるどころか悪化します。
原因は、あなたの中にあるのではなく、思わぬところにある場合が多く、それらが身体を蝕み、無気力状態に陥っているのです。
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今回は、やる気が出ない理由、第二弾です。今回も意外すぎて最初はびっくりすると思いますが、少しずつ咀嚼してみてください!
母親との関係性が作る無気力
この章では、脳のネットワークが作り出す「無気力」のうち、「嫉妬」以外の要素について紹介していきます。中でも無気力に大きく影響する要素として「母親との関係」がありますが、それ以外にも、いま陥っている無気力状態にはさまざまな脳のネットワークが関係していることを知ってほしいと思います。
母親との関係性が、自分の「無気力」状態に影響していると言うと、嫉妬の場合よりも、さらに「どうして?」と感じる人が多いかもしれません。
「私はずっと母と仲がいいので、関係性は良好です」とおっしゃる方も多くいます。しかし、必ずしも母親と不仲な方が無気力になるというわけではありません。
子どもがこの世に生まれて、初めて親密な関係を築く他者は、ほとんどの場合母親です。そのため、母親と自分がどういう関係を築いて現在に至っているかが、社会においてその人が他人と築く関係性にも非常に大きな影響を及ぼしています。子どもと母親との距離感は、ある程度長い時間をかけて築いてきたものですから、当人にとってはそれが「当たり前」と感じられているはずです。しかしだからこそ、その人の思考や行動の習慣のおおもとを作り出しているのは母親との関係性であるにもかかわらず、気づきにくくなっている、とも言えます。
では、母親との関係性が作り出す「無気力」にはどのようなものがあるかについて見ていきましょう。
母親と仲がいい人ほど、他人との距離がおかしい!?
■エピソード 他人との距離感がわからず、動けなくなるCさん
他人との境界線がうまく引けないと感じています。親しい人ができると、その人と自分との境界が曖昧になってしまい、たとえば「その人が優遇されているのに、何で自分はこんな扱いなんだ」というように、相手が目上の立場だとしても、親しくなるとその人と自分を同じステージにいる人間だと考えてしまいます。相手に対して引け目を感じたり、逆に嫉妬を感じたりすることもあるので、そんな自分を嫌いになります。そしてだんだん新しい交友関係を築くことが億劫になってきます。(35歳、女性)
Cさんは親しい人との距離感をどのようにして作ったらいいのかで悩み、バグを起こしています。Cさんのような悩みを抱える人には、現在の人間関係が直接悩みに影響しているというよりも、幼児から続いた母親との関係性が影響しているケースがしばしば見られます。
親しければ親しいほど、その他人との関係において、母親と自分の関係性を再上演してしまう可能性が大きくなるのです。
Cさんの場合、母親とCさんが対等な関係であったことが推測されます。
本来、母親は自分を守ってくれる存在であるべきです。その意味では、母と子は決して対等な関係性ではないのです。母が上、子が下でいいのです。それを無視して対等な関係性を持つことで、上の立場になるはずだった母親が嫉妬の発作を起こし、いつのまにか母娘で「嫉妬する/される」関係になってしまっているのです。第3章で説明してきた「嫉妬攻撃による『無気力』」と深く関係しています。
よく「友だちのように仲の良い母娘」というフレーズを聞きますが、幼少期からそのような対等な関係性を母親と築いていると、人との距離感がつかみづらいという悩みを抱えることがあります。
人間関係はすべてが対等である必要はなく、差があってもいいのだ、という感覚をCさんが持てなくなっている可能性があるのです。
Cさんが人間関係をそのように捉えるようになる原因として、母親との関係があることを指摘すると、Cさんは「え? 母との関係がいまの悩みに影響? 私自身の問題ではないんですか?」と言って驚きました。母親は子に対して無意識に嫉妬の発作を起こしており、子のことを嫌ったりいじわるをしたりしているわけではないため、お互いに気づかないケースがほとんどなのです。しかしその後、次のように答えました。
「でも、言われてみると、確かにそうかもしれません。私自身、子どもを産むのが怖いという感覚があります。たとえば娘が自分よりとても可愛かったり、自分よりスポーツや芸術の才能があったりしたら、嫉妬してしまうんじゃないかと思って。応援する気持ちになれないんじゃないかと思うと、とても怖くて子どもを産みたくなくなります」
Cさんがこう言うのは、母親と自分の関係性──嫉妬する/される関係──が自分と自分の娘とのあいだで再上演されることに恐怖を感じていることを表しています。
その容姿コンプレックス、お母さんのせいかも!?
■エピソード 容姿コンプレックスに悩み続けるDさん
私にはいとこが10人いるのですが、その中で私が一番不細工だったんです。それで子どものころ、いとこたちに「デブ」「不細工」とよく言われていました。そのことが関係していると思いますが、現在でも容姿にコンプレックスがあり、異性に対して積極的になれません。どうしたら「自分の容姿なんて関係ない」「心が大事だ」と思えるようになるのでしょうか。(55歳、男性)
Dさんは、55歳になる現在まで容姿へのコンプレックスに苦しめられてきました。
現在はスラリとした体型ですが、子どものころ、いとこにいじめられた当時は太っていたと言います。私は「子どものころのDさんを太らせたのは、お母さんだと思いますよ」と、母親の嫉妬のメカニズムについて説明しました。
Dさんには生まれつき容姿に秀でたところがあったのです。ただしそれらがあることで、母親は自分の影が薄くなります。それで嫉妬の感情から、無意識に息子を太らせるという行為に至った、と考えられます。Dさんに光るものがあったからこそ、それが外にわからないようにするために、太らせたというわけです。
いじめられた過去と決別すれば問題が解決すると思っていたDさんは、いま陥っているバグの原因が母親からの嫉妬だと知り、驚いていました。
では、いとこたちはなぜDさんをいじめたかというと、それは容姿以外のDさんの能力──知性など──があったからでしょう。容姿以外の能力にいとこたちは恐れをいだき、嫉妬したため、いじめて潰そうとしたと言えます。Dさんが何か優れたものを持っていなければ、いじめないわけです。
その意味で嫉妬とは本当に怖いものですし、Dさんの場合、幼少期のこうした身近な人間関係が大人になってからのコンプレックスを作り出している、と言えます。
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いかがでしたでしょうか。
この他にも、母親から受けた扱いが、呪いのように今のあなたの「やる気」「前向きになろうとする気持ち」を縛っているかもしれません。
本書『「やる気が出ない」が一瞬で消える方法』には、やる気と母親との関係をさらに掘り下げ、その解決方法が書いてあります。母親との関係が良い人も悪い人も、「やる気が出ない」状態から脱出するために、一度ぜひ読んでみてくださいね。
これで、5回に及ぶ試し読みは終わりです。本書では、あと一つ「やる気が出ない」原因が書かれています。すでに「この本を読んで、やる気が出た!」という喜びの声が続々と編集部に届いているので、最後まで読むことをお勧めします!(編集部)