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未来の稼ぎ方

2018.10.15 公開 ポスト

2024年アフリカで富裕層が急増。人口増によるビジネスが勃興坂口孝則

MrRuj/iStock

これから儲かる業界とそのピーク? 未来に後悔しないために今、何ができるのか?
そんな問いへの大きなヒントを与えてくれる新書『未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038』。2019年~2038年の20年間に何が起きるかを広範のデータをもとに予測した本書。2024年は、アフリカの人口増に注目です。

2024年の変化の特徴

●Politics(政治):アフリカ開発会議などで日本が大幅な経済援助を約束。

●Economy(経済):富裕層の数の伸び、またGDPの伸びはアフリカ全体で堅調。

●Society(社会):人口は世界の20%弱をしめるが、2100年には40%に拡大する見込み。

●Technology(技術):ICT(情報通信技術)を活用したビジネスが増加。

人口増が続くアフリカでは、GDP等の経済指標も堅調に推移している。そこで企業は人口増に伴い、市場としてアフリカを見るようになった。またICTの応用により新たなビジネスも生まれている。

ただし、アフリカ経済は原油の市況に大きく影響され、また農業生産性も悪いままだ。リスクを抱えながら、日本はアフリカ市場をいかに戦略的に攻略するかが課題になっている。

 

遥かなりアフリカ

高校時代、鬼才の文化人類学者・西江雅之さんの著作を私は愛読していた。氏といえば講義が面白くて大学の名物講義となり、かつ歩くのが速すぎて、人間離れしていると思われ、さらに10カ国語以上を操る、私のいわばヒーローだった。

私のアフリカなるもののイメージは、氏の著作を通じて作り上げられてきた。西江さんは驚くほど美しい文体で、しかし淡々とアフリカの日常を記述していった。以下はケニアの首都ナイロビでの出来事を切り取った記述だ。

 

食堂には、隣国のタンザニアから来た少年が二人、ルイヤ族の青年が二人、ボーイをしており、その他には、緑の制服を着たルイヤ族の女が五、六人ほど、ウエイトレスとして働いている。十七、八歳から二十四、五歳位までの女たちで、午前の十時頃から夜の十一時頃までの時間、仕事をしながらビールを飲み、ビールを飲みながら仕事をする。絶え間なく、ジュークボックスに硬貨を入れては、巨大な音でアフリカの流行歌を次々に流し、歌い、踊り、笑い、怒鳴りあう。わたしはその女たちが泣くのを一度も見たことがない。その女たちが人前で嘆くのも一度も見たことがない。

夜中に店を閉めると、女たちは近くの安ホテルへと、その晩に店で行き会った男と共に消え去るか、または、ひとまず自分一人の安ホテルへと向かい、改めて男を探しに街に出る。彼女たちには帰って寝る自分の部屋がないのである。

(西江雅之『花のある遠景』)

 

西江さんの紡ぐアフリカには、女性たちの売春があり、暴力と犯罪があり、しかしそのなかで、しなやかに強く生き、ただただ衝動に動かされて踊るアフリカ人たちがいた。悲惨な状況にもかかわらず、なぜか読後感は陰惨なものではなく、むしろ清々しささえある。それは氏の描くアフリカに、躍動と鼓動と、原始的な生命の歓喜を感じずにはいられないからだろう。

音楽家ブライアン・イーノはWIREDの編集長だったケヴィン・ケリーとの対談で、

「問題はコンピュータにアフリカが足りないことだ」
(The problem with computers is that there is not enough Africa in them.)と述べている(米WIRED 1995年5月号、ならびに日WIRED 2017年VOL. 3)。

イーノは、クラシック音楽が古典的な階層構造、序列化、統御を象徴しており、そのカウンターとしてアフリカを持ち出している。イーノにとって、アフリカとは予測不能で統御の観念もないものだった。

果てしなきリズム、そして原始欲求としてのダンス。

その鼓動とともにアフリカは世界においてラスト・フロンティアを超え、世界の中心に座しようとしている。

各国とアフリカ

アフリカは地球上で2番目に大きな大陸だ。3000万の面積をもち、低い平地が少なく高原大陸と呼ばれるように海抜300m以上の高原となっている。アフリカと日本は地理的にも心理的にも近いとはいえず、日本人の多くはアフリカ出身のひとと話したことすらないだろう。

アフリカというと内戦やテロなどぶっそうなイメージをもちがちだ。ただ、いっぽうで豊富な地下資源が眠っていることも知られている。莫大な量の石油が眠っており、またダイヤモンドも世界一の量がアフリカに眠る。ウランなどの資源も同様だ。この資源を先進国としては見逃すわけにはいかない。

2016年8月にはケニアの首都ナイロビで第6回アフリカ開発会議が開催された。日本も参加し、安倍首相は3年で1000万人の人づくりに取り組み、3兆円のインフラ整備等、アフリカの未来へ投資すると宣言した。

そしてもう一つ、忘れてはいけないのは中国だ。

中国はかつて石油の輸出国だったが、1994年からは輸入国に転じた。それから年度7%の高成長を見せている。あらたな石油源を見つけ、国民に供給せねばならない。

中国はアフリカの植民地からの解放運動を支援してきた。国家主席だった胡錦濤は2003年から頻繁にアフリカを訪れ関係強化に動いた。習近平もおなじく頻繁にアフリカを訪問し続けている。中国のアフリカ援助は過剰ともいえるほどだ。

2006年のFOCAC(中国アフリカ協力フォーラム)北京サミットにおいては、アフリカの重債務国と低所得国には債務が免除されるとしたほどだ。私はアフリカ人の知人の二人に聞いたことがあるが、いろいろな感想はあれど、全体として中国を悪くはいわなかった。なお、アフリカ3カ国に聞いた好感度調査によると、英>中>南ア>独>日>仏>印>米だという(東大塾『社会人のための現代アフリカ講義』東京大学出版会)。

中国としてはアフリカを開発して資源を確保し、さらに自国商品を販売したいと考えるのは当然だろう。

そこで、まずはアフリカの人口や経済がどれくらい拡大しようとしているのか見ることにしよう。

アフリカにおける富裕層の拡大

日本の人口が1億2000万人を切ると考えられている2024年に、アフリカでは富裕層が増えると考えられている。The Wealth Report 2015によれば、2024年までアフリカ富裕層の数は二桁の成長率で増えていく。

そのなかでも、UHNWIの推移を見てみよう。このUHNWIとは、聞きなれない言葉だが、ultra-high-net-worth individualの頭文字をとったもので、超富裕層とでも訳せるだろう。定義では、3000万USドル以上を有する。つまり、33億円以上をもっているひとの数だ。アフリカ各国ともに増加するのがわかる。アフリカ全体では、この期間に59%伸びる。

もっとも、アフリカだけで見てもわからないので他の地域とくらべておくと、UHNWIは同期間で、全世界平均が34%、アジアの伸びが48%、ヨーロッパ/米国ともに25%となっており、アフリカはアジア以上に伸びているのがわかるだろう。

また、象徴的なUHNWIから比較したが、通常の富裕層と定義されるミリオネア(資産100万ドル=1億1000万円以上)の数も、同時期にアフリカは53%も増加する。この伸び率は、おなじく世界のどの地域の伸び率と比べてももっとも高いことを追記しておく。

人口やGDPの伸び

富裕層だけではなく、人口全体も見てみよう。国際連合World Population Prospectsによれば、今後アジアは老い、人口カーブは減少に向かう。いっぽうで、アフリカは急上昇していく。

細かな数字を覚える必要はないとして、世界人口の中心がアフリカになっていくことは理解できる。推計では現在(2015年国際連合調査)、世界人口73億5000万人のうちアフリカの人口は12億を占める。これは比率でいえば16%となる。それが、2024年には18%に上昇し、2050年には26%、2100年にはなんと40%になっていく。

さらに2050年には世界における人口トップ20のうち、7カ国がアフリカになると予想される(ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア、エジプト、ケニア、ウガンダ)。とくにナイジェリアは4億1006万人を有し、世界4位になる。

人口が増えるので当然かもしれないが、GDPの伸びも継続していく。アフリカ開発銀行によれば、今後50年にわたって成長が見込まれる。

……

後半は、本日(10月15日)16時公開です。

**
<イベントのお知らせ>
坂口孝則×竹村優子
「短命化する仕事とDIY化する人生のなかでどう稼ぐか?」

日時:2018年10月29日20時~22時(19:30開場)
場所 :本屋B&B(東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)
入場料:■前売1,500yen + 1 drink ■当日店頭2,000yen + 1 drink
詳細、お申込みのページ

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坂口孝則

1978年生まれ。調達・購買コンサルタント、未来調達研究所株式会社所属、講演家。大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買に従業。現在は、製造業を中心としたコンサルティングを行う。著書に『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『1円家電のカラクリ 0円iPhoneの正体』『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。』『稼ぐ人は思い込みを捨てる。』(小社刊)、『製造業の現場バイヤーが教える調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。

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