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アメリカ中間選挙レポート

2018.10.18 公開 ポスト

第12回

民主党リベラルが憂う“分断”と共和党保守派が憂う“分断”、その視点の違い渡瀬裕哉

Delpixart/iStock

「差異の是正」か「価値観の共有」か

 CNNやNHKなどリベラル系のメディアでは、中間選挙前に米国の「分断」がますます拡がっていることを問題視する論調が拡がっている。しかも「格差社会」「不法移民」「性差・LGBT問題」などの多くの論点が提示されて、トランプ政権の誕生が「社会の分断」を更に深刻化させていると繰り返し述べている現状だ。

 しかし、その大半は民主党側、つまりリベラル陣営が描き出す「社会の分断」を強調しているに過ぎない。「分断」とは何を意味するのか、という基本的な認識からして、共和党支持者とリベラル派支持者の間には大きな隔たりが存在している。そして、その違いを理解することなく「社会の分断」という言葉を一面的かつ軽はずみに使用することの浅はかさは目に余る。現在の米国はトランプ大統領を擁する共和党政権であり、共和党側から見た「社会の分断」を知ることも米国を正しく理解する上で必須のことでもあるにも関わらず。

 リベラル派の人々は「社会の分断」を人間の属性によって捉える傾向がある。それは見た目や数字によって確認できる要素、つまり「人種」「性別」「所得」「学歴」などの社会的ラベリングによるものだ。これらは学術的な研究という意味でも “扱いやすい” 要素であり、リベラルな大学研究者やメディアにとっては “話題にしやすい” 類のものとも言えるだろう。リベラル派は人間の社会的属性に基づく区分を用いつつ、政府の政策を使ってその違いを埋めようとする傾向がある。

 彼らが「人種差別是正」「男女平等」「格差解消」などの政策を主張するとともに、トランプ支持者を分析する際に「白人、男性、低所得、低学歴だ」という表現を用いることも、彼らの思考枠組みの在り方を端的に表していると言えるだろう。自らが一生懸命に社会的な違いを見つけ出すことで「彼らが思う分断を発見」し、その発見した問題を是正して「社会を統合する」と称して、マッチポンプ型のポリコレ・ハンマーを振り回している。

 一方、共和党側は上記のような社会的ラベリングによる分断は重視していない。彼らが重視するものは「米国人であること」である。そして、彼らの「米国人であることの基準」とは、「合衆国憲法に象徴される米国建国の重要な価値観を受け入れているかどうか」である。

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アメリカ中間選挙レポート

11月6日の米国議会選。トランプ大統領の共和党は勝てるのか? 著者独自の情報源と現地報道をもとに、刻一刻と変わる中間選挙の行方を共和党視点で分析。アメリカは変わるのか変わらないのか。この結果が日本にもたらすものとは?

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渡瀬裕哉

1981年東京都生まれ。国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか―アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。

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