テレビでもおなじみの教育学者の齋藤孝さんは、実は大の喫茶店好き。なんでも会社や自宅では発揮できない密度の集中力で、仕事や勉強にとり組めるのだとか。実際、毎日3軒をハシゴして、全仕事の半分以上を喫茶店でこなしているそうです。
齋藤さんの著書、『15分あれば喫茶店に入りなさい。』は、そんな喫茶店の活用術と、効率&集中力アップのコツが満載。読んだら絶対、喫茶店に行きたくなる本書から、一部を抜粋してお届けします。
ストップウォッチを活用せよ
10分でも15分でも、わずかな隙間時間を最大限有効に使うためにも、喫茶店に入ったら、腕時計を外してテーブルの上に置いておきます。いつでも、目を一瞬動かすだけで時間がわかる。その状況をつくることが大切です。
待ち合わせしている人が来る、次の仕事場へ移動する、家に帰らなくてはならない、そうしたさまざまな理由で決まっている終わりの時間から逆算して、あと10分、あと5分と自分を追いつめていくのが、喫茶店での仕事・勉強のコツです。
喫茶店に滞在している間にどこまでやれるか。なにができるか。いくつの仕事をこなせるか。
たとえば1時間あるとき、15分単位の仕事を四つやろうと目標を立てます。ひとつめの仕事を、15分で終わらせる予定のところを13分で終えられたら、2分は自由時間です。すっと緊張を緩めて伸びをして、気分を入れ替えます。そして次の15分にとりかかります。
1分もムダにしない。その心構えがなければ、スピードは必ず落ちてしまいます。そして心構えだけでは心が折れるので、時計で自分を管理するのです。逆算癖をつけて、のんびりするわけにはいかないとつねに自覚しながら作業を進めると、とてつもないスピードが発揮されます。
腕時計のかわりにストップウォッチを使うこともあります。
ストップウォッチには、大きく分けてふたつの使い方があります。ひとつには、制限時間を設けたほうがいい仕事が挙げられます。
「これは15分で処置してしまおう、それ以上の時間をかけても仕方ない」という作業、それを進める場合に、ストップウォッチを15分に合わせてヨーイスタートで始めます。
たとえば「部下が起こしたトラブルを、繰り返さないようにするためのマニュアルを作る」といった作業があります。とても面倒くさい作業ですが、れっきとした仕事です。こんなことに30分もの時間は絶対にとりたくない。そこで、「15分しか使わない」と決めて、そのなかで成果物を出します。
仕事の密度は、かける時間によって決まります。逆算して「15分しかとらない」と決めたら、そのなかで書く。実際は10分程度で書き上げて、残りの5分で見直して終わりにします。
30分かけたほうが、時間を使ってゆっくり考える分いいものができるのではないか。そう思う人もいるかもしれません。
しかし、重要度の低い仕事に、必要最低限以上の時間を費やす意味はまったくありません。
生産的ではない仕事にいくら時間を費やしても、なにも生まれないからです。
早く終わらせたら気分も晴れます。
30分のうち空いた15分は次の仕事に使ってもいいし、その間ボーッとしてもいいのです。
非生産的なつまらない仕事をだらだら続けるよりも、なにもしないで15分を過ごしたほうが、気分がよくなります。
「やる気スイッチ」を押す
ストップウォッチのもうひとつの使い方は、ただ単純にストップウォッチを押す、というものです。
何分まで、と時間を区切るのではなく、スイッチを押したらその後はずっと仕事を続ける、というやり方です。
飽きるところまで仕事を続けてから、ふとストップウォッチを見ると、「もう1時間もやったんだ」とわかる。仕事をやり終えたときの「こんなにやった!」という感じは、普通の時計では味わえません。
ストップウォッチは基本的に時間を計るための道具ですが、スイッチを押した瞬間に仕事の六割方が終わる、といっていいかもしれません。
授業でストップウォッチを活用したところ、「用意、スタート」「カチッ」と押した音が教室に響き渡ると、それだけで学生たちの作業が異常に速くなります。「じゃあ始めてください」と言葉で言うよりも、「カチッ」という音のほうが効くのです。
単純なことなのですが、ストップウォッチの場合、最初に「押す」ということが大事です。
私がいま使っているストップウォッチは、アルバの「ピコ マルチタイマー」という商品です。大きさも手の平サイズでちょうどいい。あまり小さすぎると、自分に対する圧力も小さくなります。ストップウォッチ専用という感じの、しっかりした形もいいです。
なにより、100分の1秒のところに、走る人間の小さいアイコンが出るのが、私は気に入っています。この人間が、パッパッパッと走っている感じがいいのです。