2025年、日本の大企業にも「40歳社長」が多く誕生する――。
変化が予測できない時代に求められるリーダーとは何なのか?先見的な経営トップのいる会社は、次世代のハイポテンシャル人材たちに向けて「社長候補づくり」への取り組みを既に始めています。15年間、毎年200人以上の経営者のリーダーシップ開発を支援してきた著者が明かす「40歳社長」のなり方・創り方のノウハウを、『40歳が社長になる日』から抜粋してご紹介します。
大企業でも40歳社長が誕生する
2025年には、大企業でも40歳の社長が誕生していても決しておかしくない。私はそう強く感じています。もしかしたら、もっと早いかもしれません。
人生100年時代になり、労働寿命が60年以上になるような時代がもう来ています。これだけの長期間の仕事をマネージする人たちは、やはり長期間の思考で経営も考えていかないといけなくなります。
先にもGEが139年の歴史の中で、わずか9人しかCEOがいない、という例を紹介しました。GEのやり方が唯一の正解ではありませんが、GEは、実際に100年以上にわたってイノベーティブな会社として君臨していますし、アメリカ企業を代表するダウ平均にもずっと入り続けています。その事実は高く評価すべきだと思います。
60歳をすぎてから社長になり、3年、5年で交代を続けていくのがいいのか。あるいは40歳で社長になり、最も体力、知力も充実しているときに10年、15年と企業を率いていくのがいいのか。これだけ激しい変化の時代であることを考えれば、答えは明白です。破壊的イノベーションを起こしていかなければ、企業の未来は難しいものになります。
先日もある損害保険会社で経営者とディスカッションをさせていただきましたが、AI時代、ロボット時代、そして自動運転時代がやってきたとき、現在、損害保険事業の屋台骨となっている自動車保険はどうなってしまうのか、経営トップは本当に危惧していました。
保険の世界には、複雑な数式を用いて保険料を計算するといった、プロフェッショナルな仕事がたくさんあります。しかし、計算はAIが最も得意なところです。AIが普及すれば、その部分がごっそり機械に取って代わられてしまうかもしれません。
要するに、成功体験や過去の前例が役に立たない世の中になっていく、ということなのです。問われてくるのは、未経験な状況、不確実な状況、先がよくわからない中で、意思決定することができるかどうか。正しいタイミングで、正しいことが見分けられるか。思い切った判断を下すことができるかどうかです。
これからの経営者が担わなければいけないのは、こういう時代の意思決定です。年齢や経験、過去の資産は通用しません。これまでとは、違う経営者をつくっていかないといけません。だからこそ、大企業でも40歳の経営者が誕生するというシナリオは十分にあり得ると思うのです。
40歳が変化をリードする理由
これらの話は、40歳より上の世代にとっては、不都合な真実かもしれません。ようやく自分たちに順番が回ってきた。それなのに、下の世代に委ねなければいけないのか。自分たちには、もう出番はないのか……。そうおぼろげに感じている人も少なくないのではないでしょうか。冷静に社会を分析すれば、そうした結論に行き着くからです。
ひとつは、先にも少し触れたテクノロジーのリテラシーです。インターネット、AI、ロボット、自動運転、ブロックチェーンはじめ、これからのビジネスにはテクノロジーの本質的な理解が欠かせないものになってきます。
しかも、テクノロジーそのものをつくったりするだけではなく、テクノロジーを使い、テクノロジーをドライバーにしてビジネスをつくっていかなければ、競争相手に太刀打ちできなくなります。自動車産業しかり、電機業界しかり、さらには医療、小売りなど、あらゆる業界で、テクノロジーをビジネスに組み込み、最適なモデルをつくっていくことが求められてきているのです。
これは50代の私自身も日々痛感することですが、この点で、やはりITネイティブ、ネットネイティブには、かないません。実際、私自身も自分よりも20歳近く若い世代のメンターを数人持っており、最先端のテクノロジーやミレニアル世代の生態など、教えを乞うことも多いのです。
2025年に40歳と言えば、1985年生まれです。幼い頃からパソコンや携帯があり、それを使いこなしてきた世代です。学生の頃から、空気のようにスマートフォンが生活に組み込まれていた世代と、わざわざコンピュータを学んだ世代とでは、感覚がまったく違います。
若い世代は、深く考えるまでもなく、ITで発想できます。自然に、インターネットという手段を発想できます。そういう人たちがすでにたくさん出てきているのです。これは、上の世代が学んで真似をしようとしても、決してできないことなのです。
経営を舵取りしていく上で、テクノロジーやインターネットが絶対に欠かせないものになったとき、リテラシーがある経営者と、足りない経営者のどちらが選ばれることになるのか。その答えは明確でしょう。