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賞味期限のウソ

2018.11.24 公開 ポスト

新しいほどいいわけではない?!「食べごろ」と「賞味期限」の差井出留美

まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス」大国・日本。しかも消費者は知らずに廃棄のコストを負担させられている。食品をめぐる、この「もったいない」構造に初めてメスを入れた衝撃の書「賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか」。
 小売店、メーカー、消費者、それぞれの問題点をあぶりだし、どうすれば食品ロスを減らすことが出来るのかを考えさせられる本書から、その一部をご紹介します。

賞味期限の切れた頃が一番おいしいものもある!?

 ある発酵食品のメーカーの方が、「実は賞味期限の切れた頃が熟成して一番おいしいんですよね」「でも、こんなこと、お客さんには絶対言えませんけどね」と話してくれました。

 

 そこで発酵食品の一つ、納豆について調べてみました。納豆の賞味期限は1週間から10日と設定されています(徳江千代子監修『賞味期限がわかる本』宝島社)。

(iStock/kuppa_rock)

 全国納豆協同組合連合会・納豆PRセンターの公式サイト「納豆Q&A」に「納豆の食べ頃はいつですか」という質問があり、次のような答えが掲載されています。

 

 納豆は、1日~7日くらいが食べ頃です。現在では流通システムが整っているため、室(発酵後、熟成のために保管する冷蔵室)から出た当日か翌日には店頭に並んでいます。そのため、購入から一両日中くらいが一番おいしく、そのままにしておくと発酵が進んで味に深みがつきます。

  納豆は古くなると、水に溶けないアミノ酸の結晶が出てきます。それは食べてもいっこうさしつかえありません。粒が舌にさわりますが、これは水に溶けにくい一部のアミノ酸ですから気にすることはないのです。

 

 日本には、初物・生ものなど、新しいものをありがたがる風潮があります。また、「食品は新しければ新しいほどいい」と考え、近所にスーパーマーケットやコンビニエンスストアがある場合、毎日、買い物に行く人も少なくないのではないでしょうか。

 

 もちろん食品によっては、新しければ新しいほど、品質や味がよいものもあるでしょう。でも、マグロは、獲れたてより、少し寝かせるプロセスを経たほうが、おいしくなると言います。

煮物、缶詰、熟成肉…時間を置いておいしくなる食品

 肉も、死後硬直の期間を超えてからのほうが、やわらかく、おいしくなります。煮物やカレーは、時間を置いてこそ、味がしみてきます。缶詰は賞味期間が3年間なので、作ってすぐより、ある程度、日にちが経過したほうが味がしみておいしくなるように、そもそも設計されているそうです。

(iStock/Alphonse99)

 また手延べそうめんの食べ頃は、作ってすぐではなく、作ってから2~3年だそうです(1717年に創業した株式会社三輪そうめん山本ホームページより)。高温多湿の梅雨を越すと、そうめんは蔵の中で一種の高温発酵をします。これを「厄(やく)」と呼びます。「厄」を越したそうめんは、コシが強く、ゆでたときにのびにくく、食感がよくなるのだそうです。そうめんの「古物(ひねもの)」とは、2回目の梅雨を越す(製造から2年目を迎える)そうめん、「大古物(おおひねもの)」は3回目の梅雨を越すそうめんを指します。

 

 最近は「熟成」食品が注目を浴びています。「熟成肉」だけでなく、魚の刺身も1~2週間熟成させたほうが、味が濃厚になっておいしいということで、「熟成鮨屋」が開店しています。肉・魚のほかにも、果実や茶、ワイン、日本酒、泡盛、味噌、酢、魚醬、マカロン、ケーキなど、熟成食品が次々登場しています。

 

 食品は、新しければ新しいほどいいわけではないという理解が、日本人の間でも浸透してきたのでしょうか。

今日からできること

 *スーパーやコンビニで、賞味期限の迫った発酵食品があって割引シールが貼られていたら、買ってみる。

◇ ◇ ◇

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井出留美『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』

卵の賞味期限は通常、産卵日から3週間だが、実は冬場なら57日間は生食可。卵に限らず、ほとんどの食品の賞味期限は実際より2割以上短く設定されている。だが消費者の多くは期限を1日でも過ぎた食品は捨て、店では棚の奥の期限が先の商品を選ぶ。小売店も期限よりかなり前に商品を撤去。その結果、日本は、まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス」大国となっている。しかも消費者は知らずに廃棄のコストを負担させられている。食品をめぐる、この「もったいない」構造に初めてメスを入れた衝撃の書!

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賞味期限のウソ

まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス」大国・日本。小売店、メーカー、消費者、悪いのは誰なのか。食品をめぐる「もったいない」構造にメスを入れる。

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井出留美

食品ロス問題専門家。消費生活アドバイザー。博士(栄養学 女子栄養大学大学院)、修士(農学 東京大学大学院)。女子栄養大学・石巻専修大学非常勤講師。日本ケロッグで広報室長と社会貢献業務を兼任し、東日本大震災の折には食料支援に従事する。その際、大量の食料廃棄に憤りを覚え、自らの誕生日であり、人生の転機ともなった3・11を冠した(株)office3.11を設立。日本初のフードバンク、セカンドハーベスト・ジャパンの広報を委託され、同団体をPRアワードグランプリのソーシャル・コミュニケーション部門最優秀賞や食品産業もったいない大賞食料産業局長賞受賞へと導く。市会議員、県庁職員、商店街振興組合理事長らと食品ロス削減検討チーム川口主宰。平成28年度農林水産省食品ロス削減国民運動展開事業フードバンク推進検討会(沖縄)講師。同年11月、国際学会で本著内容発表。www.office311.jp

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