まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス」大国・日本。しかも消費者は知らずに廃棄のコストを負担させられている。食品をめぐる、この「もったいない」構造に初めてメスを入れた衝撃の書「賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか」。
小売店、メーカー、消費者、それぞれの問題点をあぶりだし、どうすれば食品ロスを減らすことが出来るのかを考えさせられる本書から、その一部をご紹介します。
京都市はなぜ15年でゴミを半分近く減らせたのか
食べ物を捨てる人が多い自治体ほど、廃棄物処理にお金がかかります。それは誰が負担しているのか。私たちです。
捨てた食べ物を燃やして最終処分までするためには、私たちが払っている税金が使われます。捨てる食べ物の量が少なければ少ないほど、税金は、ほかの有用なことに使うことができ、より効率的な行政につながります。
ということは、自分だけが食べ物を捨てないだけでなく、隣の人も、またその隣の人も、できるだけ食べ物やゴミを捨てないようにすることが必要、ということです。そのためには個人の努力だけでなく、行政と市民が一体となっての取り組みが必要になります。
京都市は、2000年度に81・5万トンあったゴミの量を、2015年度には44・0万トンと、4割以上も削減しました(2016年5月18日、京都市発表)。2020年度までには39万トンまで減らすことを目標としています。
京都市の取り組みについて、ご紹介したいと思います。
まず、食品ロスなどを含む生ゴミなどの処分には、焼却施設が必要です。ゴミと食品ロスを半分に減らす「ごみ半減プラン」に取り組む京都市では、ピーク時に5工場あった清掃工場を3工場に縮小し、年間で106億円もの大幅なコスト削減を実現させました(平成27年3月、新・京都市ごみ半減プラン 京都市循環型社会推進基本計画 2015─2020による)。
しかし、それだけ減らしてもなお、ゴミ処理に261億円もの費用を要しています。
食品ゴミは水分を含んでいるため、燃えにくく、焼却費用が余計にかかります。京都市では1トンあたり約6万円の費用がかかっています(「京都生ごみスッキリ情報館」ホームページより)。
また、食品事業者から出る食品を廃棄する場合、食品リサイクル法にのっとって、資源ごとにリサイクルに取り組むため、一つの加工食品につき2~4分類したリサイクルが必要です。
たとえば、ガムを製造する企業に聞いたところ、外側のプラスチック・フィルム、その次の紙製の外箱、中にあるガムをくるんでいる紙、そしてガムそのもの、という4つに分割し、それぞれリサイクルしているそうです。それだけ、手間とコストがかかります。
さらに清掃工場や焼却炉を長期的に運用していくためには、住宅と同様、定期的なメンテナンス費用や大規模改修費用が必要です。
京都市は、2012年度の、家庭ゴミの1人1日あたりの排出量は、政令指定都市20市中で最少の445グラムです。ちなみに最多は静岡市の695グラム、京都市を除く平均が595グラムです(環境省「一般廃棄物処理事業実態調査」)。
きっかけは世界に向けた目線
では、なぜ京都市はゴミ削減に成功しているのでしょうか。2016年2月と5月に京都市環境政策局循環型社会推進部ごみ減量推進課へ取材に行ってきました。
それによると、一番のきっかけになったのは、1997年12月に京都で開催されたCOP3だそうです(通称「京都会議」、気候変動枠組条約第3回締約国会議)。この会議では、先進国及び市場経済移行国の温室効果ガス排出の削減目的を定めた京都議定書が採択されました。
これを受けて、京都市では、「世界一美しいまち・京都」を目指し、1998年度から「世界の京都・まちの美化市民総行動」を実施しています。また、京都議定書が発効した2005年2月16日にちなみ、毎月16日を「DO YOU KYOTO?デー」(環境に良いことをする日)とし、マイバッグの使用によるゴミの減量や、車を使わず公共交通機関を利用すること、節電など、環境にやさしい取り組みを進めています。
もう一つ、差し迫った理由として、「燃やして埋める場所がもうない」という事情もあったと伺いました。
京都大学名誉教授、高月紘先生の存在も大きいでしょう。家庭ゴミの調査は著しい手間がかかりますが、京都大学では、継続的に家庭ゴミの中の食品ロスの調査を進めてきました。
他にも、2006年10月に家庭ごみ有料指定袋制を導入、2010年4月に環境行政の拠点窓口「エコまちステーション」を各区役所と支所に設置、同年10月にエコイベント実施要綱策定、2011年8月に「KYOTOエコマネー」開始、「NOレジ袋&食品ロスゼロキャンペーン」を行うなど、家庭ゴミ減量の関連施策を次々打ち出しています。これは業者から出る業者ゴミに対しても同様です。
2度にわたる京都市への取材により、京都市は、「オール京都」と謳う通り、360度全方位での対策が取られていることがわかりました。
たとえば、2015年10月は、ゴミ半減をめざす「しまつのこころ条例」(京都市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例)も制定されました。
食品ロスに限らず、ゴミ全般を減らし、循環型社会をつくるための基本は「3R」と言われます。「Reduce(発生抑制 ゴミを減らす)」「Reuse(再利用・再使用 くり返し使う)」「Recycle(再資源化 ゴミをもう一度資源にする)」の3つです。
「しまつのこころ条例」では、3Rのうち、ゴミになるものを作らない・買わないといった「Reduce」と、再使用する「Reuse」を推進しています。
この条例は一般市民ならびに事業者を対象としています。市内の製造業者や食品小売業者、ホテル・旅館業者や土産物の製造業者・小売業者、催事主催者、大学、共同住宅等の所有者など、京都市の定める規模要件を満たす事業者に対しては、2Rの取り組みの実施状況を伝える報告書と計画書の提出が求められています。
さらに京都市は、「こごみちゃん」「スッキリちゃん」などというキャラクターを複数作り、次の「生ごみ3キリ運動」を推進しています。
・買った食材を使い切る「使いキリ」
・食べ残しをしない「食べキリ」
・ごみを出す前に水を切る「水キリ」
一つめの「使いキリ」では、買い過ぎず、買った食材は使い切り、冷蔵庫や冷凍庫をスッキリさせることを目指しています。京都市の「燃やすごみ」のうち、実に4割が生ゴミ(約8万トン)です。
二つめの「食べキリ」では、残さず食べ切ることを勧めています。京都市で発生する生ゴミのうち、4割が食べ残しです。そのうち半分以上が手つかずの状態で捨てられています。
三つめの「水キリ」は、生ゴミを捨てるときにひとしぼりし、水を切ることを勧めています。京都市ではゴミを燃やして発電しており、水分が多い生ゴミは発電効率が落ちるためです。
市民向けに「生ごみ減量ハンドブック」や「食材の使いキリ・食べキリ・リメイク・レシピ集」などの小冊子を作り、「お買い物&3キリクッキング講座」などの市民講座で配るなどの活用をしています。
また、子どもに対する環境教育も進めています。教科書で「ごみ」という単元を習う小学4年生に対しては、この「3キリ」をイラスト入りで説明した、両面カラーの下敷きを配布しています。
そこには、京都市内の5つの小学校で、給食の調理くずや残渣(食べ残し)を使って肥料を作り、校内の花壇や近くの畑で活用していることや、クイズで学べる食品ロスの情報が書かれています。
2015年10月からは、レジ袋が有料化されました。京都市内では年間約3億5000万枚、約3200トンものレジ袋がゴミとして排出されています。そこで、京都市内にあるスーパーマーケットのうち、1000平方メートル以上のすべての食品スーパーにおいて、レジ袋有料化が実施されるようになりました。
家庭と飲食店、どちらの食べ残しも減らしたい
京都市内の飲食店および料理を提供する宿泊施設に対しては、「生ごみ3キリ運動」の取り組みなどを推進する飲食店を募集し、京都市が認定する「京都市食べ残しゼロ推進店舗」認定制度を実施しています。
以下の8項目のうち、2項目以上を実践している飲食店や宿泊施設を、店舗ごとに認定するものです(2014年12月発行 京都市環境政策局循環型社会推進部ごみ減量推進課 「『食べ残しゼロ推進店舗』認定制度が京都市ではじまりました!」より)。
(1)食材を使い切る工夫
(ア)食材の無駄が出ないように仕入れている。
(イ)魚のあらや骨、野菜の皮などを利用したメニューの提供
(ウ)余った食材をスープやパテ、スタッフのまかない料理に利用している。
(エ)その他
(2)食べ残しを出さない工夫
(ア)小盛りメニュー、SMLサイズ、ハーフサイズメニューの設定
(イ)写真を掲載するなど、内容(量・カロリー・辛さ等)がわかるメニューの作成
(ウ)アレルギーや好き嫌いに対応するため材料をメニューに詳しく記載、又は注文時に食べられない物等を確認している。
(エ)コース料理でも量を選べるようにしている。
(オ)注文時に分量のリクエストを聞く、又は量について説明している。
(カ)その他
(3)宴会、冠婚葬祭での食事等における工夫
(ア)宴会幹事等へ食べ残さないルールやマナーの呼び掛けを行う。
(イ)予約時にお客様の年齢層、男女比、好み等を確認し、適量の料理提供を行う。
(ウ)その他
(4)食べ残しの持ち帰りができる工夫
(ア)持ち帰り用容器(ドギーバッグ)、又は客が持参した容器を使用している。
(イ)持ち帰り可能の店内案内をしている。
(ウ)要望があった場合に、消費期限等を説明した上で持ち帰り可能としている。
(エ)その他
(5)ごみ排出時の水キリ等の工夫
(ア)水キリ専用ザルを取り付け使用している。
(イ)生ごみをコンポストに入れている。
(ウ)その他
(6)使い捨て商品の使用を抑える工夫
(ア)マイ箸・マイボトル持参を推奨している。
(イ)間伐材使用の割り箸への移行や繰り返し洗って使える箸を用いるようにしている。
(ウ)紙製やプラスチック製の使い捨て容器等を使わない工夫をしている。
(エ)その他
(7)食べ残しゼロに向けた啓発活動
(ア)ポスター等を掲示している。
(イ)その他
(8)上記以外の食べ残しを減らすための工夫
こうして見てくると、京都市の取り組みは、まさに全方位的。まったく同じことを他の自治体が実施するのは難しくても、見習うべき点はたくさんあります。
◇ ◇ ◇
現在、幻冬舎では期間限定の電子書籍フェア「料理・美容関連本が全品199円 自分磨きフェア」を開催中!対象159作品が2週間限定で、全品199円でお楽しみいただけます(11月29日まで)。
◆角森脩平「小顔美人になれる30の習慣」880円→184円(税別)
◆細川貂々「40歳から「キレイ」と「オシャレ」始めました。」960円→184円(税別)
◆為井真野 GINGER編集部「センスのいい女は安い服をおしゃれに見せるワザを持っている」880円→184円(税別)
◆奥田けい「月たった2万円のふたりごはん」800円→184円(税別)
◆梅津有希子 高谷亜由「終電ごはん」857円→184円(税別)
賞味期限のウソ
まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス」大国・日本。小売店、メーカー、消費者、悪いのは誰なのか。食品をめぐる「もったいない」構造にメスを入れる。