photography by Shiori Ikeno
冬の朝、かじかむ指でアイフォンに触れ、顔のあたりにだけ温度のないうす光を浴びて、今日をはじめる準備にはいる。足の指先をまるめ毛布にしまいこみ、さてさてなんて言ってからが長い。
この熱くもなんともない光を発明したのが誰だかわからないが、いつまでも違和感が消えず、わたしは真の意味で光として認めていない。光熱費が安くなり、主婦の味方だかなんだか知らないが、このエジソンフォロワーが光と光のような何かを混同させた罪は重く、密かだが確かに極東の青年が一人、軽蔑しつづけている。
まずLEDなんていうスカした名前は90年代のJ-POPのバンド名のようで、調子に乗りすぎている。電気ならば電気らしく厳かな名前こそがふさわしい。例えるなら「陽華〜ひか〜」だとか、「雷兎〜らいと〜」など、厳かで品のある名前をつけるべきだった。ELTみたいなLEDなど、エイベックスの闇の力にねじ伏せられてほしい。わたしはそれを強くのぞんでいる。ピース。
名前とは、それをイメージするときに一番最初に出会うもので、風向きを左右するから大切だということは十分皆、理解している。わたしの名前、マヒトゥ・ザ・ピーポーなど最底辺の極み、ふざけていて、ふしだらで堕落的で、「・」を二個使いしている箇所など、耐え難く、今も下唇に犬歯が刺さり血をにじますほどの苦痛の表情でタイプライトしている。
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