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photography Shiori Ikeno

死んだじいちゃんに「何か怒れることがあったり、悲しいことがある時は、言葉や力に頼らずに自分の仕事で清算しなさい」と言われたことがある。

説教臭い人ではなく、いつもは寡黙だった。自分が道をそれると、後ろから引き止めるようにどやしつけるのではなく、ボロボロになり頭を垂れて戻ってくる時、角を曲がると、そこで最初から腰を休めてたかのように空を見ているような、そんなじいちゃんだった。

夕さりの沈黙はやさしい。空に飛んだツバメは、もう花の咲くことのない痛んだ桜の木の枝で同じように羽を休める。わたしはじんじんと腫れた掌をさすりながらただ黙って空を睨んでいた。

今の時代、仕事で清算するまでもなく、SNSの中で自分を表現することができる。有名人のいいねに喜んだり、繋がっているような感覚? でも、どこまでいってもそこに温度はなく、その先は暗く冷たい。軽薄なものの中できゃんきゃん吠えている自分の姿が液晶の黒くなった画面に映った時、その文字を打っていた男を静寂はじっとりと軽蔑している。

わたしの仕事とはなんだろうか?

いまだにわからないまま、畦道を歩いている。両脇、カエルが鳴いていた夏はゆうに越え、冷えた年末の空気が鉛のような低い温度を引き連れ、靴と靴の間を巡回していた。

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マヒトゥ・ザ・ピーポー『ひかりぼっち

いつ、どの部分を遺書として 切り取ってくれても構わない。 あなたがあなた自身である限り、誰にも負けることはない。 オリジナルでもフェイクでもいい。ただわたしであればそれだけでいい。 GEZANマヒト、時代のフロントマン。眩しいだけじゃない光の記録。本連載に加え、書き下ろしを収録。(写真 佐内正史)

関連書籍

マヒトゥ・ザ・ピーポー『銀河で一番静かな革命』

海外に行ったことのない英会話講師のゆうき。長いあいだ新しい曲を作ることができないでいるミュージシャンの光太。父親のわからない子を産んだ自分を責める、シングルマザーのましろ。 決めるのはいつも自分じゃない誰か。孤独と鬱屈はいつも身近にあった。だから、こんな世界に未練なんてない、ずっとそう思っていたのに、あの「通達」ですべて変わってしまった。 タイムリミットが来る前に、私たちは、「答え」を探さなければならない――。 孤独で不器用な人々の輝きを切なく鮮やかに切り取る、ずっと忘れられない物語。アンダーグラウンド界の鬼才が放つ、珠玉のデビュー小説。

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眩しがりやが見た光

GEZAN・マヒトの見た、光、幸福、人生。

バックナンバー

マヒトゥ・ザ・ピーポー

ミュージシャン。2009年に大阪にて結成されたバンド・GEZANの作詞作曲を行いボーカルとして音楽活動開始。
2014年からは、完全手作りの投げ銭制野外フェス「全感覚祭」も主催。自由に境界をまたぎながらも個であることを貫くスタイルと、幅広い楽曲、独自の世界を打ち出す歌詞への評価は高く、日本のカルチャーシーンを牽引する。
著書『銀河で一番静かな革命』『ひかりぼっち』、絵本『みんなたいぽ』(絵:荒井良二)。映画監督作品『i ai』がある。

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