歴史上の人物と現代のトップランナーの共通点を探る、この対談。
参加者の皆さんのアツイ要望にお応えして、リポート記事にしています。
登壇者は、『超現代語訳 戦国時代』『超現代語訳 幕末物語』が人気の房野史典さんと、現代のビジネスシーンの最先端で情報発信しているNewsPicksで活躍中の野村高文さん。
戦国時代のヒーローでも、今のビジネスシーンにかさねて考え直すと、意外な話になってきましたよ…⁉
* * *
キャリアとして、プレイヤーでやっていくか、マネージャーでやっていくか。
房野 次は上杉謙信、行ってみましょう。
野村 お願いします!
房野 ザックリ言うと、越後……今の新潟県に生まれ、仏門に入った。兄ちゃんが頭領になったけど、その兄ちゃんがあんまりで、「お前、戦いやってみっか」と言われて戦ったら、「いや、強っ!」ってなる。強いので、兄ちゃんを裏切ったやつらを、どんどん倒していく。「超強えや」ってなって、そこの大将になる。当時謙信は「長尾景虎」という名前だったんだけど、「景虎はすごい」と言われ、グングン成長する。そしたら、武田信玄にやられた村上さんとか、北条家にやられた上杉さんとかが「ちょっと助けてくださいよ」と、やって来る。ほんで「助けまっせ」って戦いに行く。一応やっつけるんだけど、越後って遠いから、留守の間に紛争が起こる。「あ、ヤバい、ヤバい」って越後に帰る。で、なんとかする。そしたら、やっつけた奴も、また暴れ出す。「あ、ヤバい。こっちもやらないと」ってなる。戦いには強いんだけど、「これ、いったい、何をやってるの?」ってなってる(笑)。結局領土は広がらない。
野村 (笑)。
房野 謙信って、義の人ってよく言われるんですよ。正義のために戦う。大義のために戦う。人の道を外れない。カッコイイじゃないですか。でもね、僕、大好きだし尊敬してる上で言いますけど、謙信って、ポテンシャルだけ良いけど、結果、何だったの?って(笑)。能力すげぇ。けど、結果、これ、何だったの?みたいな。名前は残ったけど。
野村 なるほど。あくまでも想像ですが、ひょっとして、領土を広げることに興味がなかったのかもしれないですね。
房野 そうだったとして?
野村 戦いに際して、敵を破ることや、自分の義や自分の価値観に従って「プレイ」で突き抜けるっていうところにモチベーションを持っていたのかもしれないなあと。結果だけ見るとですが。
房野 興味深い!
野村 それを現代風に考えてみたいのですが、人を評価する仕組みっていうのが、やっぱり、昔と今とで、変わってきてる部分があるなって思うんですよ。
房野 それは何ですか?
野村 組織って、みんながもともとプレイヤーじゃないですか、全員、実働部隊。プレイヤーとして何かを売ったり、物を作ったり。昔の社会では、もっとみんなが実働部隊でした。
房野 はい。
野村 企業が生まれると、そういう人が、出世して、マネジャーとなっていく。
房野 なるほど、マネージャーとして統括していく。
野村 少し前の日本組織の評価基準では、統括していって、ビジネスとして結果を出す立場にならなきゃいけないっていうのが、まぁ、出世の道だったんです。なんですけど、よく考えてみたら、プレイヤーとして優秀な人と、マネジャーとして優秀な人って、全然違ったりしませんか?
房野 絶対違う。僕のイメージでは、長嶋監督です、あんま知らないけど。
野村 スポーツだと、分かりやすいですよね。うん。「名選手、名監督にあらず」っていうのは、その通りで、そもそも、使う頭も違うし、モチベーションも違うんです。「自分はプレイヤーとして突き抜けたいんだ」っていう人に、「あなたにはもう現場を外れてもらうので、部下の面倒見てください」って言ったら、腐るじゃないですか。
房野 腐りますよね(笑)。
野村 そういうプレイヤータイプは、熟年プレイヤーとしてずっとやってもらっていた方が、会社のためにもなるんです。それを踏まえた上で、2000年以降は、プレイヤータイプとマネジャータイプを分けるようになってきたんです。
房野 そうか。別個にしてるんだ!
野村 そうです。だから、「あなたはプレイヤーとして突き抜けたいのか、どこかのタイミングで、マネジャーにシフトしたいのか、決めなさい」っていう組織構造になってる。ユニクロとかそうですよね。
房野 そうなんですね⁉それって、高校の時みたいに、「文系か理系か、選んで」みたいなニュアンスですか?
野村 定期的な人事フィードバックによって、どっちの方向で上を目指していくのかが分かれていったりもするんですが。それで、例えば、戦国大名で言うと、戦いが強いのは、プレイヤーですよね。
房野 プレイヤーですね。
野村 一方で、領国を広げていくのは、マネジャーの方ですよね。
房野 マネジャーです。
野村 会社全体のことを考えたら、プレイヤーとして突き抜けることができる人は、もう、プレイヤーとして突き抜けりゃいいっていうのが現代の話なんです。上杉は、マネジャーとしてはダメだったかもしれないですけど、プレイヤーとして歴史に残ってるわけなので、別に、それはそれでいいのかなって気はしますね。
房野 なるほど、プレイヤーとしてはトップだったみたいな感じで。
野村 はい。
土方歳三は、プレイヤーでもマネージャーでも活躍した⁉新選組はブラック企業⁉
房野 「プレイヤーからマネジャー」みたいな意味合いで僕が好きなのが、土方歳三なんです。プレイヤーとして、武士になりたいっていう強い思いで剣で戦ってたのに、後々戦争になったときには、監督してるじゃないですか。兵隊を率いる側へのシフトチェンジ。そんな才能があったの?みたいな。
野村 うん。新選組はけっこう面白いですよね。「ビジョン」の話をしましたが、「幕府を守る」「松平様の理想を体現するために、自分たちが死ぬんだ」っていう鉄の結束で繋がってますね。「この経営者の言うことを、自分たちは絶対体現するんだ」っていうビジョン型組織の構造に共通していますよね。あと、これはちょっと現代では思い浮かばないんですけど、罰がすごいですよね。
房野 本当にえぐいです。
野村 えぐいですよね。辞めたいって言ったら、殺されるわけじゃないですか(笑)。
房野 パワハラどころじゃない!
野村 どっちかっていうと、株式会社っていうよりも、メキシコの薬物のマフィア(笑)。
房野 やってること、そうっすね。
野村 そういうことですよね、新選組は。海外ドラマを見るかのような印象があります。実際、メキシコの薬物のマフィアは現代にもあるわけで。「抜けたら殺すよ」っていうような恐怖で支配している組織が、現代でもあるっていうことなんですね。新選組のあの構造っていうのは、合理的だったのかな……。
房野 ブラック企業ってのは、そうやって成立してるのかな。新選組がブラック企業っていうと、さすがに新選組のファンに怒られそうなんですけど (笑)。
野村 ただ、構造は似てますよね(笑)。ブラック企業の特徴としては、とにかく考える余裕をなくさせるんです。
房野 ですよね。
野村 考える余裕をなくさせる。――本当は、全然辞められるんですよ。なのに「辞めたら何かあるよ」って思わせるのが、ブラック企業の特徴じゃないですか。
房野 そうだ、そうだ。
野村 って考えると、新選組は実際何かある……。
房野 実際あるじゃん(笑)!
(さて、このあと会場での質疑応答に入りました。こちらの連載はここまでです。
『超現代語訳 戦国時代』『超現代語訳 幕末物語』にご興味の方は、ぜひ!)
野村高文(のむら・たかふみ)
愛知県生まれ。東京大学文学部卒業。PHP研究所Voice編集部を経て、ボストン コンサルティング グループ(BCG)でビジネス開発を経験。編集×ビジネス開発の経験を活かし、NewsPicksでは記事編集の傍ら、2017年4月にスタートしたビジネスコミュニティ「NewsPicksアカデミア」のマネージャーを務める。
房野史典(ぼうの・ふみのり)
1980年岡山県生まれ。名古屋学院大学卒業。お笑いコンビ「ブロードキャスト!!」のツッコミ担当。無類の戦国武将&幕末好きで、歴史好き芸人ユニット「六文ジャー」を結成し、歴史活動も盛んに行う。初の著書『笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳 戦国時代』が話題になり、2018年は『笑えて、泣けて、するする頭に入る 超現代語訳 幕末物語』『時空を超えて面白い! 戦国武将の超絶カッコいい話』など、続々刊行。
笑えて、泣けて、するする頭に入る!超現代語訳 幕末物語
歴史大好き芸人・ブロードキャスト!!の房野史典さんの初めての本『笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳 戦国時代』は、面白すぎてヤバイ!ととても話題になりました。発売になると、有名な歴史の先生方も「こんなに面白く読ませるなんて!」と大絶賛でした。
その房野さんが、今回「幕末」を面白く書いた!
幕末は、戦国時代以上に、日本中で”怒涛の人間ドラマ”だらけ。その分、ややこしくもあるのですが、房野さんに任せれば、とても楽しい面白読み物に!
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