2018年8月に公開された「クレイジー・リッチ・エイジアンズ」(邦名「クレイジー・リッチ!」)という映画のタイトルを最初に目にしたとき。まあなんとステレオタイプな、と思った。そう思った理由は、ニューヨークに住んでいれば、異常なレベルのお金持ちのアジア人は目に入ってくる。日本にはほとんど存在しないタイプのお金持ちである。ニューヨーク・コレクションの中国席の最前列は、もうずいぶん前から、明らかにお金持ちで美しい人たちで埋まっていたのだから、メインストリーム娯楽の題材になることはなんら驚くべきことではなかった。ストーリーは、なんのことはない、アジアのスーパーリッチであるプリンスとアメリカ育ちの叩き上げ経済学者の女性の恋物語である。
ところが、アメリカのアジア人口が沸きに沸いた。劇場公開最初の週末、ボックスオフィスは北米も劇場だけで2500万ドルの興行成績を叩き出した。そもそも、ハリウッドには、マイノリティ・オンリーのキャストの映画は売れないという定説があった。オール黒人キャストの「ブラック・パンサー」が大成功を収めた後だっただけに、アジア人オンリーの映画の成功に、アジア系アメリカ社会が盛り上がるのも当然といえば当然のことだ。
アジア人映画が大ヒットした、それくらいの認識しか持たなかった私は完全に間違っていた。映画の成功は、新しい現象を生んだのである。
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みんなウェルカム
NYで暮らすようになって20年。ブルックリン在住のフリーライターが今、考えていること。きわめて個人的なダイバーシティについての考察。