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人形怪談

2019.01.28 公開 ポスト

年末に集まった怖い話田辺青蛙

(写真:iStock.com/Travel and Still life photography)

年末に怪談会に参加して幾つか聞いた話を紹介したいと思う。

欧米では冬が怪談の季節だと聞いた。暖炉や暖房機器の前で、家族が知っている古い怖い話を語りあって団らんするのだという。
実際、数年前にカリフォルニアのUCバークレーの学校の授業で日本の怪談について話してみたところ、なんで日本は冬じゃなくって夏に怪談の特集やTV番組が多いんですか? と学生に聞かれた。

とっさに答えられなかったので、少し考えてから「多分ゾッとすることで少しでも涼を得たいと思うことや、夏は夜でも活動する人が多いこと、お盆という行事が関係しているんじゃないかなあ?」と言ったが、正しい回答だったのかどうかは未だに自信がない。

吹雪の音を聞きながら、耳にする幽霊話の方が雰囲気があるような気もするが、まあ日本じゃ今のところ怖い話は冬より夏の方が盛んだ。いつもは怖い話を披露したくてたまらない人たちで賑わう怪談会も、季節のせいなのかその日は参加者が数人しかいなかったが、さまざまな話を聞くことが出来た。今回は冬の時期に開催した怪談会の内容をテープお越しをしたものを元にした話となっている。定期的に大阪の京橋や天満、放出の辺りで怪談会を企画していて、たまに京田辺でもやっている。時々参加者がゼロの時もあり、そんな場合は借りた会場で一人ぼーっと本を読んでいるか、携帯ゲームをやって時間を潰していることが多い。

怪談会の参加者から聞いた話①

叔母の家に兄と遊びに行ってた時に、蹴ってたボールが床の下に入っちゃって。

ラメの入ったピンクのボールで、気に入っていたから長い竿だけ? でしたっけ。最近はあまり見ないかも知れないですが、あの洗濯物を干す棒みたいなやつを叔父さんに外してもらって兄と一緒につついて出そうとしたんです。

どのあたりにボールがあるのか目星をつけてから棒を突っ込もうと思って、背をかがめて見たら何かボールとは違う別の白っぽい塊が見えたんですよ。私は小さい頃からあんまり目がよくなかったから、兄に何か下にあるよって教えたんです。

兄に見てもらったら手を乱暴に引っ張られて、叔父に見えないところでこう言われたんです。

「床下にびっしり白い首輪をした人形がいて、一斉にこちらを向いた」って。

兄は割と誇張して色々と物を言う人で、私もそれで困らされたことが沢山あるんだけど、あれは冗談とか嘘とか怖がらせたくて言ったんじゃないって何となく感じて。

その話してからかな、翌月くらいに叔母たちが凄い気に入って住んでた古民家だったのに急に引っ越してたのを覚えてるし、何かあれと関係あったのかもって思っています。

でも不思議なのは私は、記憶違いかもですがちょっと何かいるなあって感じだったように覚えてるんだけど、兄は床一面にいたみたいに言ってたんですよね。兄と私とで違うものが見えてたのかな。

白い首輪っていうのも気になって。なんでかっていうと、近所で惹かれた猫が白い首輪をしてて。

どんな毛とか模様とかよく思い出せないのに、その猫が白い首輪だったっていうのだけ覚えてるんです。

怪談会で私が話した話

えーっと、ちょっと思い出すたびに何とも言えない気分になる話をします。

私の親類の住むW市で、赤ちゃんになかなか恵まれない女性は山に入り、地蔵を一目に触れぬよう夜に一人で盗み出して、こっそり同衾すると妊娠するっていう言い伝えがあるんですよ。

私の母は、W市の人じゃないんですが、その話を聞いて、実際に試してみたんですよね。

地蔵と言っても、そう大きいものではなくて、素材は石ですが、高さは15センチから大きくても40センチくらい。

女性が抱えて山から下りられるくらいの重さです。まあ、見られると効果がないって言われているので、この地蔵にしようと決めて拾い上げたら衣服の中に包んで隠したり、鞄にしまい込んで家に持ち帰るのが一般的らしいです。

私の母が25の時に山に入って地蔵を盗んで持ち帰ったらしいんですよ。

その効果があったかどうかは不明ですが、翌年くらいに自分が誕生したんですが……。正直言って両親関係のこの手の話って子供は聞いて複雑にしか思わないっていうかキツイですよね。

すいません、話題が逸れて。

まあ、言い伝えになるのかな? そうやって生まれた子は母親が盗んだ地蔵を山で見るとそれが光って見えるっていう話があるんですよ。

「〇〇ちゃんとこの子も、そうやって生まれてね、お地蔵さんを指さしてオレンジ色にもやもや光って見えたから、あれや! て当てたんよ」みたいな話をよく聞いたわけですよ。

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田辺青蛙

1982年大阪府生まれ。オークランド工科大学卒業。
2006年、第4回ビーケーワン怪談大賞で佳作となり、『てのひら怪談』に短編が収録される。2008年、『生き屏風』で、第15回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。
現在大阪に作家の夫と在住。そんな夫とのアメリカ旅行記&エッセイ集の『モルテンおいしいです^q^』(廣済堂出版)『読書で離婚を考えた。』(幻冬舎)発売中。
怪談と妖怪ネタを常時募集中。

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