綺麗になることだけを追求する人生は、薄っぺらい小田切ヒロ（ヘア＆メイクアップアーティスト）

女優、タレント、モデル……様々な人にメイクをしてきた大人気ヘア＆メイクアップアーティストの小田切ヒロさんが、文字だけの美容本を刊行しました。その名も『美容中毒』。女性に生まれたからには、思いっきり美を楽しみ、追求してほしいという小田切さんの思いが込められた一冊です。メイクルームでたくさんの女性を観察するなかで発見した、本当の美しさとは？ 内容を一部抜粋してお届けします。

年齢を重ねるほどに
潔くシンプルに。

年齢を重ねても、いつもごくナチュラルな印象で、どうしようもなく惹きつけられる人がいる。濁りのない透けた肌に、血色のある唇。清潔感がふわりと漂う香り。何かに縛られることのない素顔には微量の努力が宿り、その人をさらに魅力的に輝かせる。
隠したいところがだんだんと増え、ファンデーションやコンシーラーをつい重ねてしまい、メイクの工程がつい増えていく。これが大人メイクの現状。でもそれでは厚化粧になるだけだし、綺麗なところまでカバーする必要はないの。そもそも、隠しきった！ なんていう安心感はいらない。
エイジングサインが出てくる程に、メイクは潔くシンプルにするべき。盛る発想は、もう潔く捨てていい。

顔に透けた魂は、
本能的に見抜かれている。

魅力が記憶に刻まれる。
ファーストステップは、出会い頭、ほんの一瞬の雰囲気。そのインスピレーションは、信じるに値する。だって、人の顔には、魂が透けて見えているから。メイクで隠そうとしたって、相手はちゃんと察知していて、すべてお見通しなの。
誰にだって、秘密にしたい過去はある。けれど、もう起きてしまったのだから仕方がない。その生き様があなたの姿や魂を育てたの。過去は過去で受け入れて、隠さずに、心をもっと解放して。そうすれば今より、もっと自然な笑顔を宿らせることができるし、軽やかに自由になれるはず。
さらけ出す勇気をまずは持って。今からでも遅くはない。人って案外、そんな素直な心を受け入れてくれるもの。初対面でもね。

表面的な美しさを
ただ追い求めることは執着。

本物の綺麗は、この世に授けられたあるがままの素材に、老いと共に上手く寄り添い合うことで叶う。時計の針を止めることじゃ決してない。
美しくなりたいという執着には、実は微量の邪念が含まれている。その邪念が気づかないうちに募って、いつの頃からか意地悪そうな雰囲気を醸し出すの。しかも、大きく育つと不穏な雰囲気が漂ってコントロールが不能になる。綺麗を求める意識は素晴らしいけれど、そのがむしゃらな美への貪欲さこそが醜い状態であるとは、誰も教えてはくれない。
邪念を取り除くためには、“綺麗を捨てる”そんな時期を作るといいと思う。人生の中で一度でも、なりふり構わず仕事や趣味などに夢中になり、何かを成し遂げていく過程があってこそ、人としての真の美しさを引き出す事ができる。そこには計り知れない本物の美学がある。
綺麗になることだけをひたすら追求する人生は、ただの薄っぺらい人を作り上げるから要注意よ。