ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することを指す。政治的妥当性ともいう。
(Wikipediaより)
この日本で一番ポリコレに萎縮しているのはミュージシャンかもしれない。「音楽に政治を持ち込むな」なんてことを言い出すリスナーが多発した日には、そりゃミュージシャンもバランスをとるというもの。バランス?社会状況とバランスをとるミュージシャン、というのもなにかの皮肉に聞こえなくもないが。
それにしても社会や政治の話題をしないのは、この国の人々の特徴でもあるのだから仕方がないと捉えるのか、それともミュージシャンだからこそ、その状態すらも露わにするような楽曲をつくってしまえないのか、と考えるのかは、どちらが先に始まるとも言えないイタチごっこの議論になるに違いない。しかも、その原因を探り出すとどこまでも深みに嵌(はま)って、とてもこの連載の文字数では書ききれない。
その点、海の向こうの音楽はヨーロッパにしてもアメリカにしても、社会に政治に切り込んでいくものも少なくないのは当たり前の光景で、もちろんMVもその点では社会的なメッセージを包含してないことの方が少ないのかもしれないくらいだ。そして、そのメッセージが過激すぎてリアルな社会問題にまで広がる場面もあったりもする。それでも折れないアーティスト、ディレクター、そしてプロダクトを支える面々、って書くとなんだかクールだが、海の向こうでもやっぱり大迷惑なことには変わりないのだろう。
それでもどうしても惹きつけられる落とし前をつけるアーティストがいる。今回もその筆頭としてマドンナを挙げたい。以前「Vogue」という楽曲を紹介した時に書いたように、彼女はマイケル・ジャクソンと並んでMTVの歴史の常に中心にいた。そしてマイケル・ジャクソンが早逝した後の時代をも走り続けている。自分自身が常に輝き続け、そして多くのクリエイターをアッパーなシーンに送り込み、新しい時代の空気をいつも自分流のアレンジメントで、音にも、そして映像にも反映させてきた。
それでも彼女が飛び抜けて社会問題とリンクしたのは、巨大飲料メーカーのペプシとの確執だろう。
きっかけはこの楽曲。「Like A Prayer」だ。
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MTVが教えてくれたこと
1981年8月1日午前0時に「観る音楽」の文化を作り出し、熱狂を巻き起こした音楽番組MTVは始まった。CM→MV(ミュージック・ビデオ)→映画監督という流れができ、あらゆる映像技術がMVで試されて行ったあの時代を振り返る。
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