棋士と哲学者が人間をめぐる様々な問いについて語り合った話題作『僕らの哲学的対話 棋士と哲学者』(イースト・プレス)。戦いによって生計を立てている棋士は、勝負のプレッシャーをどう乗り越え、負けをどう受け止めるのか。第1章「勝負論」からの抜粋をお届けします。
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負けることに慣れる。でも悔しさを忘れてはダメ
戸谷 練習には強いけど、本番には弱いという人がいますよね。糸谷さんは、勝負の緊張やプレッシャーをどう乗り越えているんですか。糸谷さんが実践されているメンタルトレーニングについて聞きたいんだけど。
糸谷 よく聞かれるんですが、負けることに慣れるしかないですね。負けているうちに鍛えられていく。もちろん、慣れすぎて悔しさを忘れてはダメですよ。
戸谷 悔しさは必要?
糸谷 勝負に勝つという点においては、多少あったほうがいいと思います。
戸谷 同じ負けでも、プラスに転化することができる人と、マイナスに転化してしまう人とに分かれますよね。負けをどう解釈するかという話だと思うんだけど、その違いってどこにあると思いますか。
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僕らの哲学的対話 棋士と哲学者
AI論、勝負論、幸福論……人間をめぐるさまざまな問いを、同じ1988年生まれの棋士と哲学者が語り合った「知的異種格闘技」として話題の書『僕らの哲学的対話 棋士と哲学者』の読みどころをご紹介。