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日銀破綻

2019.03.17 公開 ポスト

現実味を帯びてきた「日銀倒産→新・中央銀行創設」のシナリオ藤巻健史

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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「円」が紙くずになる

私が、今、一番ありそうなシナリオとして考えているのは、日銀を倒産させ、新しい中央銀行を創設することです。ガラガラポンの世界です。

iStock.com/Nuthawut Somsuk

1998年12月に寝ころびながらテレビのニュースを見ていたら、アナウンサーが「日銀がつぶれました」と原稿を読んだので、びっくりして飛び起きたことがありました。実際は日本債券信用銀行、略して日債銀の話で、すぐに訂正が入りましたが、今そのようなニュースが流れても驚かなくなってしまった状況には悲しいものがあります。

ちなみに日銀法では「日銀が解散した場合、残余財産分配権は出資者には認められておらず、国に帰属する」となっています。仮に日銀が解散する場合でも出資者への分配はないということですが、先人は、法律とはいえ中央銀行の解散も頭の中に入れていたのです。さすが、です。

ドイツでは戦前の中央銀行であるライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)が第1次世界大戦の戦費調達のために異次元緩和を行い、1923年に大変なハイパーインフレを引き起こしました。1月にパン1つ250億マルクだったのが、12月には3990億マルクになっていたのです。これで懲りたかと思いきや、ヒットラーの圧力に負け、第2次世界大戦でも戦費調達の異次元緩和を行い、戦後ついにつぶれてしまいました。

当然、発行していたライヒス・マルクは紙くずになったのです。そして新しい中央銀行のブンデスバンクが設立され、通貨ユーロに取って代わられるまで、ドイツ・マルクが流通したのです。このライヒス・マルクからドイツ・マルクへの切り替えで、通貨の安定性と銀行の健全化が混乱期にもかかわらず保持できたのです。

私には日銀も、ライヒスバンクと同じ道を歩んでいるとしか思えません

もちろん日銀が消滅しても、社会の基本インフラである中央銀行が存在しない国はありませんから、新しい中央銀行が作られます。今の日銀は残務処理を行う機関としてしばらくは残るでしょうが、中央銀行としての役割は終わりです。

この結果、円預金をしている人はそれが無効になりますが、そもそもハイパーインフレで、円にはほとんど実質的価値なぞ残っていません。1億円の預金が残っていても、ハイパーインフレでタクシー初乗り1億円なら、それはなきに等しいことはおわかりでしょう。

政府はどちらの道を選ぶか?

今回の危機対応(ハイパーインフレの鎮静化)は昭和2年や昭和21年に行われた預金封鎖と新券発行との組み合わせではなく、日銀倒産&新中央銀行設立という形で行われるのではないかと私は思います。

iStock.com/itasun

もっとも預金封鎖・新券発行と日銀倒産&新中央銀行設立のどちらを選択するかは、時の政府がどう考えるかであり、現段階では頭の体操の域を出ていません。

先ほど述べたように昭和2年はもちろん、昭和21年も終戦後といえども、明治憲法下で行われました。私有財産権のなかった明治憲法と違い、日本国憲法が適用される現在は、私有財産権に配慮しなければなりません。

預金封鎖や新券発行は、この私有財産権に抵触するのではないか? と思うのです。

一方、日銀という半官半民の会社がつぶれて国民が財産を失っても、それは政府が私有財産権を犯したことにはならず、憲法違反にはならないと思うのです。一般の会社がつぶれて債権者が損を被るのと同じです。発行銀行券や日銀当座預金等の日銀の債務を債権者である我々国民が失うのは、一般企業の倒産による債権者の権利喪失と同じです。

日銀という半官半民の会社がつぶれて、債権者(=国民や民間金融機関)が債権(=日銀の債務である発行銀行券や日銀当座預金)を実質失うことは、憲法で認められている私有財産権の侵害にはならないと私は思うのです(ただ私は法律の専門家ではないので、この辺はこれから専門家と詰めてみたいと思います)。

さらには預金封鎖・新券発行ではハイパーインフレ鎮静策の発動前に、国債という政府の債務をなんとか名目上減らしておかねばならないと本書籍第1節に書きました。日銀倒産・新中央銀行設立なら、その心配もありません。

以上の理由から、今回は預金封鎖・新券発行ではなく、日銀倒産という形を取るのではないかと個人的には思っています。

関連書籍

藤巻健史『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』

ちょっとしたきっかけで日本(株・国債・円)売りは突然始まる! 日銀は国会で、異次元緩和という出口なき後始末をどう弁明しているのか? 効果がないにもかかわらず、政府と日銀は、異次元金融緩和をゆるめようとはしない。 異次元金融緩和の何が問題かというと、その出口戦略が皆無であることだ。 金融緩和をやめれば金利は暴騰、円は暴落するのは歴史をみても明らかである。 現在、市場が暴走しないのは日銀がひたすら国債を買っているからであって、こんなことが永遠に続けられるはずはない。 そして日本の借金は膨れ上がる一方で、世界や有識者からの警告が政府と日銀に届くことはないのが現状である。 危機が起こるのを黙ってみていれば、一文無しになってしまう。 日本人はどうすれば自分の資産を守れるのか? 避難通貨として持つべき米ドル仮想通貨についても詳しく解説する。

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日銀破綻

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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藤巻健史

1950年東京都生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。1980年、社費留学で米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。帰国後、三井信託銀行ロンドン支店勤務を経て、1985年に米銀のモルガン銀行に転職。同行で資金為替部長、東京支店長兼在日代表などを歴任し、東京市場屈指のディーラーとして世界に名を轟かせ、JPモルガンの会長から「伝説のディーラー」と称された。
2000年にモルガン銀行を退職後、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めたほか、一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院商学研究科で6年間、半年の講座を受け持つ。2013年から2019年までは参議院議員を務めた。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。現在、株式会社フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。

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