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日銀破綻

2019.03.16 公開 ポスト

「異次元緩和」は日本株・国債・円の大暴落で幕を閉じる藤巻健史

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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それはある日突然起こる

今まで、日銀の「異次元緩和からの出口はない」と書いてきました。

iStock.com/G0d4ather

景気が過熱して金融引き締めが必要になったとき、もしくは景気過熱に至らずとも巡航速度に入ったとき、今の超金融緩和を継続すれば、いずれ過熱してしまいます。しかし日銀は、長期金利も短期金利も上げることができない。金利を引き上げれば日銀が倒産してしまうからです。

世界最大のメタボになった(=最大限お金をばらまいている)バランスシート(BS)を縮小しようと思うと、意図せざる長期金利の跳ね上がりが起こり、日銀保有国債に巨額の損が積み上がってしまいます。これも倒産要因です。法定準備率を上げれば民間金融機関が倒産し、日本中で残りうる銀行は日銀だけになってしまいます。

要は景気が巡航速度に戻ったとき、金融をコントロールする手段を日銀は失ってしまったのです。

こういう状態で目標のCPI(消費者物価指数)2%を達成したらどうなるのでしょう。

2%で上昇が止まれば万々歳でしょうが、さらに上振れしていく可能性は当然あります。そうなると、上振れを止める手段がないのです。

インフレ率上振れを回避しようと、異次元緩和をやめると、政府の資金繰り倒産の危機です(詳細は書籍内本章の〈参考〉ご参照)。さらには引き締めようとすると日銀も倒産の危機です。「日銀も政府もともに倒産」という事態を避けたいのならば、異次元緩和を継続せざるを得ません。景気が過熱しそうでも、アクセルを目一杯踏み込んでいなくてはならないのです。

CPI2%になっても3%になっても5%になっても10%になっても20%になっても異次元緩和が続き、毎日天から新しく刷ったお金が降ってくるのです。景気が狂乱しても、今のような超金融緩和が続くのですから、ハイパーインフレへまっしぐらです。

要は異次元緩和を始めた以上、出口がなく、どんなに景気が過熱しても天から紙幣は降り続き、ハイパーインフレまっしぐらなのです。それが異次元緩和の結果であることは歴史が教えるところです。

前節でハイパーインフレが進むだろうと書きましたが、それは、ある日突然起こると思っています。日本株、日本国債、円の大暴落、日本売りがいきなり始まるのです(どれか一つがきっかけとなる可能性もありますので、これらの暴落に多少の時間差はあるかもしれません)。

異次元緩和は、究極の日本売りで幕を閉じると思うのです。これを世間は市場の暴力と呼ぶでしょう。しかしそれは違います。当然予想された政策ミスの結果であり、人災です。積もり積もった問題を政治が解決できなかったから、市場が解決したにすぎません。ため込んだ累積赤字を政治が解決しようとしなかったから、市場が暴力的に解決しただけなのです。「飛ばしはこれ以上、無理」と市場が最終判断を下すのです。

ハイパーインフレという「大増税」

今の日本の財政は対GDP比で世界最悪です(の図ご参照。なぜ対GDPで比べるのか。詳細は書籍内本章の〈参考〉ご参照)。

 

 

日本の1088兆円の借金は、尋常な方法では返せっこありません。10兆円ずつ返して109年かかるのです。2018年度予算での税収+税外収入は64兆円ですから、10兆円返すには支出を54兆円に抑えなければなりません。それなのに100兆円も使ってしまうのです。しかも返済に109年かかるといっても、それは低金利がずっと続いたら、の前提です。

こんなに元本が大きいと、金利が上がった場合、支払金利は大変な額となります。支払金利の増加は経済成長による税収増にとても追いつきません。1088兆円の1%は約11兆円、5%では約55兆円です。国債は固定金利がほとんどですから、金利が上がってもすぐに政府の支払金利がここまで急激に増えるわけではありませんが、とにかく大変な事態です。

一方、史上最高の税収は1990年度。バブルの最終年の60.1兆円です。確かに消費税は3%でしたが、狂乱経済とまで言われた好景気でも、60.1兆円の税収にすぎないのです。

バブル以降30兆円から40兆円の赤字を30年近く続けた結果の1088兆円の累積赤字ですから、この返済には30兆円から40兆円の黒字を30年近く続ける(金利を考慮せずに)ことが必要と考えても、いかに巨額の借金かがおわかりかと思います。

こう考えると、尋常な方法では現在の巨大借金を返せません。ならば財政破綻か尋常でない方法での大増税しか返済方法はないのです。

政府は財政破綻を選択しないでしょうから、ハイパーインフレ=大増税という選択肢を取ると思うのです。インフレのことを経済学者はインフレ税と呼びます。インフレは債権者から債務者への富の移行ということで税金と同じなのです(詳細説明は後述の〈参考〉ご参照)。

消費税を明日から40%にすればなんとか財政破綻を避けられるかもしれませんが、政治的に無理でしょう。ですから国民が大反対する時間も方法もないハイパーインフレという大増税で解決すると思うのです。

関連書籍

藤巻健史『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』

ちょっとしたきっかけで日本(株・国債・円)売りは突然始まる! 日銀は国会で、異次元緩和という出口なき後始末をどう弁明しているのか? 効果がないにもかかわらず、政府と日銀は、異次元金融緩和をゆるめようとはしない。 異次元金融緩和の何が問題かというと、その出口戦略が皆無であることだ。 金融緩和をやめれば金利は暴騰、円は暴落するのは歴史をみても明らかである。 現在、市場が暴走しないのは日銀がひたすら国債を買っているからであって、こんなことが永遠に続けられるはずはない。 そして日本の借金は膨れ上がる一方で、世界や有識者からの警告が政府と日銀に届くことはないのが現状である。 危機が起こるのを黙ってみていれば、一文無しになってしまう。 日本人はどうすれば自分の資産を守れるのか? 避難通貨として持つべき米ドル仮想通貨についても詳しく解説する。

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日銀破綻

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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藤巻健史

1950年東京都生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。1980年、社費留学で米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。帰国後、三井信託銀行ロンドン支店勤務を経て、1985年に米銀のモルガン銀行に転職。同行で資金為替部長、東京支店長兼在日代表などを歴任し、東京市場屈指のディーラーとして世界に名を轟かせ、JPモルガンの会長から「伝説のディーラー」と称された。
2000年にモルガン銀行を退職後、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めたほか、一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院商学研究科で6年間、半年の講座を受け持つ。2013年から2019年までは参議院議員を務めた。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。現在、株式会社フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。

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