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日銀破綻

2019.03.15 公開 ポスト

異次元緩和という禁じ手で「先送り」されている財政破綻藤巻健史

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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今の平穏がいつまで続くか?

世界最悪の財政が破綻しないように日本は得意の危機の先送り(=飛ばし)を行ってきました。政府に足りない資金を、日銀に新しい紙幣を刷らせることによって賄ってきたのです。

iStock.com/plusphoto

これで政府の資金繰り倒産の危機は先延ばしになりました。しかし、そのせいで倒産時の衝撃は一層大きくなってしまったのです。

後で詳しく触れますが、この飛ばしの手法が世界中で禁じ手と言われていた「量的・質的緩和(異次元緩和)」なのです。

この飛ばしのせいで日銀のバランスシート(BS)は対GDP比で世界最大規模になってしまいました。これは経済規模に対して大量にお金をばらまいたということです。しかも日銀の財務諸表は極めて不健康で脆弱になってしまいました。インフレが加速すると、日銀にはなす術がありません。何かしようとすると、BSが脆弱なゆえに日銀が倒産してしまうのです。

「異次元緩和」は「非伝統的金融政策」と言われています。非伝統的金融政策は、昔の伝統的金融政策とは全く違うという認識が必要です。

伝統的金融政策では、インフレを制御する方法がありました。ですからインフレが加速しても、全く心配する必要がなかったのです。

しかし今は「異次元緩和」を行ったがゆえに、インフレを制御する方法がなくなってしまったのです。この制御方法があるか否かの議論が、俗に言う「出口」議論なのです。

参議院に初当選した2013年夏以降、私は財政金融委員会で「異次元緩和に出口はあるのか」と追及し続けてきました。

2016年4月12日の朝日新聞「波聞風問」では原真人編集委員が「藤巻健史参院議員は、安倍晋三首相や黒田東彦日銀総裁にこの問題を問い続けている。外資系銀行で『伝説のディーラー』と呼ばれ、著名投資家ジョージ・ソロス氏のチームにいたこともある市場のプロだ。その目には、財政出動や日銀の異次元緩和が国民の潜在的な負担をとてつもなく膨らませている、と映る」と書いてくださいました。

その私は「出口を議論するのは時期尚早」と答弁してきた黒田日銀総裁のことを「Mr・時期尚早」と揶揄してきました。最近でも「出口がないのでは?」と私が突っ込むと、日銀幹部は「そんなことはありません」と答えます。そう答えざるを得ないのはわかりますが、答弁はシドロモドロです。

たとえば「どうやってハイパーインフレを防ぐのですか?」という私の質問に対して、若田部昌澄副総裁は「消費者物価指数(CPI)目標を持ち続ける限り、ハイパーインフレにはなりません」と回答されるのです。

私はインフレ加速の際の対処方法を聞いたのです。若田部副総裁の回答は根性論でしかありません。目標さえ掲げれば東大に入れるのなら、今頃私は東大卒です。人生は目標さえ持てば必ず達成できるほど甘いものではありません。それと同じです。

「今までインフレにならなかったのだから、今後もインフレにはならない」と信じるのなら話は別ですが、これだけお金をばらまいているのです。何かの契機でインフレが始まらないとは限りません。始まったら最後、ブレーキがないのが日本の現状です。

「出口」なしの異次元緩和

日銀は2018年7月31日の金融政策決定会合で「長期金利の一定幅の動きを容認」することとしました。これは実質的に「長期金利の上昇を容認した」ことです。

iStock.com/shironosov

長引く異次元緩和の結果、地方銀行の経営が苦しくなるなどの副作用が出てきたからだというのが、その理由のようです。異次元緩和の副作用は、これだけではありません。財政規律が失われることもその一つです。日銀という市場原理の働かない(=損益に関係なくなんでも買う)機関が爆買いをするのですから、いくら政府がばらまきを行い、国債発行でその原資を賄っても、長期金利が上昇しません

普通、財政赤字がたまると長期金利が上昇し、財政赤字への警告が発せられ、累積赤字の蓄積が止まるのです。日本では、その機能を封印してしまったのです。

9月28日、イタリアが来年の財政赤字見通しをGDPの2.4%に設定しました。その結果、財政赤字膨張の見通しで国債価格が急落(=長期金利急騰)したのです。健全だな~と思いました。こういう長期金利の動きで財政赤字の拡大に歯止めがかかるのです。

日本は財政赤字がGDPの6%を超えるのに日銀の爆買いでビクともしないのです。財政黒字のドイツ国債利回りが0.47%なのに対し、財政最悪の日本は0.12%(9月28日)。日本にはもはや財政規律が存在しません。

しかし異次元緩和の副作用には、もっと懸念すべきことがあります。「異次元緩和からの出口がない」こと、すなわち「景気上昇期に、そのスピードを調整するブレーキをなくした」ことです。それを忘れてはなりません。

7月31日の金融政策決定会合の後、マーケットが多少荒れましたが、序の口もいいところ。本格的に出口に向かうときの荒れ方は、次元の違う衝撃だと思います。最大の副作用と直面するからです。この章の以下の節では本当に出口がないのか(=副作用があるのか)を検討していきたいと思います。

2017年3月21日の参議院財政金融委員会で、私は岩田規久男副総裁(当時)に出口の方法を聞きました。

副総裁は、(1)日銀当座預金の付利金利(金融機関が日銀に預ける当座預金のうち、「法定準備預金額」を超える金額に付く金利のこと。法定準備預金とは、民間銀行が日銀に預け入れなければならない最低金額のこと)を上げていく、(2)日銀バランスシートを縮小していく、という方法があるとお答えになりました(後述の〈参考〉ご参照)。

それに対し、私は「その方法では無理だ」と返しましたが、その理由をこの章では詳しく分析してみたいと思います(岩田副総裁にもこの内容で反論いたしました)。

関連書籍

藤巻健史『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』

ちょっとしたきっかけで日本(株・国債・円)売りは突然始まる! 日銀は国会で、異次元緩和という出口なき後始末をどう弁明しているのか? 効果がないにもかかわらず、政府と日銀は、異次元金融緩和をゆるめようとはしない。 異次元金融緩和の何が問題かというと、その出口戦略が皆無であることだ。 金融緩和をやめれば金利は暴騰、円は暴落するのは歴史をみても明らかである。 現在、市場が暴走しないのは日銀がひたすら国債を買っているからであって、こんなことが永遠に続けられるはずはない。 そして日本の借金は膨れ上がる一方で、世界や有識者からの警告が政府と日銀に届くことはないのが現状である。 危機が起こるのを黙ってみていれば、一文無しになってしまう。 日本人はどうすれば自分の資産を守れるのか? 避難通貨として持つべき米ドル仮想通貨についても詳しく解説する。

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日銀破綻

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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藤巻健史

1950年東京都生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。1980年、社費留学で米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。帰国後、三井信託銀行ロンドン支店勤務を経て、1985年に米銀のモルガン銀行に転職。同行で資金為替部長、東京支店長兼在日代表などを歴任し、東京市場屈指のディーラーとして世界に名を轟かせ、JPモルガンの会長から「伝説のディーラー」と称された。
2000年にモルガン銀行を退職後、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めたほか、一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院商学研究科で6年間、半年の講座を受け持つ。2013年から2019年までは参議院議員を務めた。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。現在、株式会社フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。

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