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日銀破綻

2019.03.18 公開 ポスト

やがて訪れる財政破綻の「避難先」としての「仮想通貨」藤巻健史

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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仮想通貨が「避難通貨」になる

預金封鎖が起こりそうだとしても、海外に物理的に資金を移すのは大変です。

iStock.com/bodnarchuk

そうなれば、代替案としては仮想通貨が考えられます。別に海外にお金を逃がすわけではありませんが、ドルと同様、有効な避難通貨になると考えられるからです。

実際、資本統制(海外に資金を逃がすことを禁じる)の可能性が出た国では、国民が仮想通貨に逃げ込んでいます。

そもそも仮想通貨であるビットコインが世界的に注目を浴びたのは、2013年の欧州危機です。債務不履行の危機にあったキプロス政府が預金封鎖による資金課税を実施した際、キプロスの預金者と同国をタックスへイブン(租税回避地)としていたロシア富裕層が「逃避先」として選んだのがビットコインだったのです。

ハイパーインフレで有名なジンバブエも、街中にビットコイン対応のATMが設置されているなど仮想通貨がよく使われていると聞きます。2018年中には「KuvaCash」というスタートアップ企業が、仮想通貨を使ったスマホ決済を広めていく予定もあるそうです。ギリシャ危機でも同様の動きが顕在化しました。

また中国は元を安価にしておくために実質ドルペッグ制(ドルとの為替レートを一定にする)を敷いています。そうやって資本が国境を越えるなどの自由な動きを禁止しています。

中国人は皆さんのようにドルを自由に売り買いできない(=「資本統制」と言う)ですし、人民元では海外送金ができません。

そこで海外送金のできる仮想通貨に富裕層が走ったのです。中国政府は、その対抗策として2017年に主要な仮想通貨取引所を閉鎖しました。

これらの事例からは、世界の人々が法定通貨の価値が暴落しそうなときや資本規制(海外送金禁止)が実施されそうなとき、仮想通貨が逃避先として考えられることがわかります。以上が、円暴落の際の保険として仮想通貨を考えては? と申し上げる理由です。

なお後述しますが、私は仮想通貨は将来、広く使われる魅力あるものだと思っています。その意味で仮想通貨を「まがい物」と捉えることだけは避けていただきたいと思います。

インターネットに次ぐ「革命」に?

ブロックチェーン技術・仮想通貨は、インターネットに次ぐ革命になるかもしれないと言われています。社会のインフラを根本的に変えるかもしれないからです。

iStock.com/ismagilov

先日、昔からの知人である、コインチェック社を買収した証券会社マネックスグループ株式会社の会長である松本大氏と話をしました。彼は今のブロックチェーン技術・仮想通貨の状況は、金融界でのデリバティブの萌芽期に似ていると言っていました。

私も東京市場における為替・金利スワップ(デリバティブの代表商品)の萌芽期、為替スワップのほぼ全部、金利スワップのほぼ半分は「藤巻の取引だ」と言われていたくらいにデリバティブにクビを突っ込んでいたので、彼の言うことがよくわかります。

松本氏いわく「『何だ、これは?』とデリバティブをいぶかる人が多かった1980年代、目端の利く少数の投資家、銀行家、優秀な学者、技術者、法律家がデリバティブにクビを突っ込み、急成長していった。ブロックチェーンの現状と似ている気がする」。

私が勤めていたモルガン銀行も、萌芽期にデリバティブにクビを突っ込みました。1980年代後半、会長のウェザストン氏が来日し、「今日のわが社の利益の40%は、5年前には存在しなかったビジネスから稼ぎ出している」と演説したことを鮮明に覚えています。

このビジネスとはデリバティブ、特に金利スワップのことでした。私が東京市場で一番大きくスワップ取引をしていた発端は、このモルガン銀行の先見性にあったのです。

そもそもブロックチェーン技術は、仮想通貨のために開発されたものです。特に不特定多数が使うパブリック型ブロックチェーンでは、仮想通貨の存在が不可欠です。

費用を負担しながらシステムを管理する中央管理者がいないので、仮想通貨の発掘によって利益を得るマイナーと言われる人たちにシステムの管理を任せる必要があるからです。

その意味でブロックチェーンが「インターネットの次の革命」ならば、それと表裏の関係にある仮想通貨の未来も非常に明るいのです。

仮想通貨の創設者たちに会っていると、他のベンチャーと違い、理系出身者が多い気がします。理系だからこそビットコイン・仮想通貨のすごさがわかり、人より早くこの世界に飛び込んだのだと思ったくらいです。逆に言えば理系人間が「すごい」と思うからこそ偉大な技術なのだとも思います。もっとも、これは理系の方に対して、私がコンプレックスを持っているがゆえのコメントかもしれません(苦笑い)。

関連書籍

藤巻健史『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』

ちょっとしたきっかけで日本(株・国債・円)売りは突然始まる! 日銀は国会で、異次元緩和という出口なき後始末をどう弁明しているのか? 効果がないにもかかわらず、政府と日銀は、異次元金融緩和をゆるめようとはしない。 異次元金融緩和の何が問題かというと、その出口戦略が皆無であることだ。 金融緩和をやめれば金利は暴騰、円は暴落するのは歴史をみても明らかである。 現在、市場が暴走しないのは日銀がひたすら国債を買っているからであって、こんなことが永遠に続けられるはずはない。 そして日本の借金は膨れ上がる一方で、世界や有識者からの警告が政府と日銀に届くことはないのが現状である。 危機が起こるのを黙ってみていれば、一文無しになってしまう。 日本人はどうすれば自分の資産を守れるのか? 避難通貨として持つべき米ドル仮想通貨についても詳しく解説する。

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日銀破綻

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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藤巻健史

1950年東京都生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。1980年、社費留学で米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。帰国後、三井信託銀行ロンドン支店勤務を経て、1985年に米銀のモルガン銀行に転職。同行で資金為替部長、東京支店長兼在日代表などを歴任し、東京市場屈指のディーラーとして世界に名を轟かせ、JPモルガンの会長から「伝説のディーラー」と称された。
2000年にモルガン銀行を退職後、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めたほか、一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院商学研究科で6年間、半年の講座を受け持つ。2013年から2019年までは参議院議員を務めた。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。現在、株式会社フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。

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