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日銀破綻

2019.03.19 公開 ポスト

世界最悪の財政状態…なぜ日本は「借金大国」になったのか?藤巻健史

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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「これ」が本当の理由だ

次の図を見ていただければわかるように、日本はこの30年間の経済成長に限って言えば、世界の超劣等生です。

 

 

日本の名目GDPが中国に抜かれて世界3位に下落したと大騒ぎしたのは2010年で、たった8年前。それから中国の名目GDPは2.3倍(名目GDPベース)になり、1.1倍にしかなっていない日本との経済格差は大きなものになってしまいました。中国の背中が見えなくなりつつあります。

名目GDPとは国の経済規模、言い換えれば、国全体の豊かさです。「名目GDPが伸びなかった」とは、人口が変わらなければ「1人当たりのGDP、すなわち豊かさも変わらなかった」ということです。もちろん給料など上がるわけがありませんし、世の中に活気が感じられないのは当たり前の話です。

「米国にいると経済がダイナミックに動くことを感じるが、日本では停滞しか感じない」とよく聞きますが、名目GDPの伸びを見れば当たり前です。

さらに名目GDPが大きくならなかったことこそが、ここまで財政が悪化した最大の理由だとも言えます。

「税収弾性値」という概念があります。名目GDPが1%上昇したら、どのくらい税収が上がるかという概念です。短期でのブレはありますが、内閣府の各種試算ではだいたい1.1を使っています。より長期的には1.0が妥当かと思います。名目GDPが1%上昇したら税収も1%上昇するということです。経済成長の果実は国民と政府が等しく分配すべきと考えるからです。そうでなければ国民の不満がたまります。

名目GDPがたとえば2倍になっているのなら税収も2倍になり、国民の豊かさも2倍になるのが当たり前の姿です。名目GDPが2倍になったときに、税収が3倍になっていれば、国民は怒ります。成長の果実を国がより多く持っていってしまったからです。働くモチベーションも削がれるでしょう。

この30年間で名目GDPは1.55倍にしかなっていません。ですから税収も1.5倍のはずです。実際のところ、税収も1985年の38.2兆円から、2017年の57.7兆円と約1.5倍にしかなっていません。

問題は税収が1.5倍にしかなっていないのに、歳出が2倍になっている点です。1985年に53.0兆円だった歳出が、2017年には99.1兆円にもなっているのです。これこそ日本が世界最悪の財政状態に陥った理由です。

ハイパーインフレは「借金の棒引き」

30年間で税収が1.5倍になったのに歳出が2倍になってしまったので、巨大な累積赤字がたまってしまいました。ここまで累積赤字が大きくなると財政破綻か、それが嫌なら増税で埋めるしかありません。しかしこの巨大累積赤字を解消するためには、過激な増税が必要となります。これは本書籍内にて詳述します(「『政府には徴税権があるから破綻しない』という嘘」の節ご参照)。

iStock.com/peshkov

尋常な方法では財政再建できず、かといって財政破綻は嫌だということで政府・日銀は「飛ばし」を行ったのです。財政危機を「異次元緩和」という形で先送り(=飛ばし)したのです。しかし、その結果、日銀のBSが世界最大のメタボ(=お金ジャブジャブ)になってしまったのです。

景気が過熱した際、BSの縮小(メタボ解消)も、長短金利の引き上げも不可能です。今まで説明してきたとおりです。これではハイパーインフレ(=大増税)へまっしぐらです。

こう考えると、政府・日銀は、意図的かどうかは知りませんが、粛々と(=国民に非難されない形で)大増税による財政再建を図っているように思えます。異次元緩和政策の採用とは、最悪の財政状況をハイパーインフレで解消するとの決断だったことになるのです。

こんなにひどい財政赤字なのに、大型予算を組んでいるのは、いくらばらまいても「どうせハイパーインフレで国民から回収するのだから、今のうちに国民を喜ばせてやれ」と思っているとしか私には考えられないのです。

「こんなに借金がたまったら、借金の棒引きしかないのではありませんか?」とツイッターで聞かれたことがあります。まさにそのとおりです。ハイパーインフレとは、実質的に借金の棒引きを意味します

財政破綻とハイパーインフレ、どちらも国民にとっては地獄です。高層ビルで火事にあったとき、飛び降りて墜落死するか焼け死ぬかの選択でしかないのです。財政赤字を放置した罪は深いと思います。

関連書籍

藤巻健史『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』

ちょっとしたきっかけで日本(株・国債・円)売りは突然始まる! 日銀は国会で、異次元緩和という出口なき後始末をどう弁明しているのか? 効果がないにもかかわらず、政府と日銀は、異次元金融緩和をゆるめようとはしない。 異次元金融緩和の何が問題かというと、その出口戦略が皆無であることだ。 金融緩和をやめれば金利は暴騰、円は暴落するのは歴史をみても明らかである。 現在、市場が暴走しないのは日銀がひたすら国債を買っているからであって、こんなことが永遠に続けられるはずはない。 そして日本の借金は膨れ上がる一方で、世界や有識者からの警告が政府と日銀に届くことはないのが現状である。 危機が起こるのを黙ってみていれば、一文無しになってしまう。 日本人はどうすれば自分の資産を守れるのか? 避難通貨として持つべき米ドル仮想通貨についても詳しく解説する。

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日銀破綻

開始以来、まもなく6年が経とうとしている「異次元緩和」。現政権が推進する、世界でも類を見ないこの政策に警鐘を鳴らしているのが、経済評論家で参議院議員でもある藤巻健史氏だ。藤巻氏は著書『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』の中で、「ちょっとしたきっかけで、株・国債・円売りが突然始まる」と警告。やがて訪れる「Xデー」に、私たちはどう備えればよいのか……。本書からポイントを選りすぐってご紹介します。

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藤巻健史

1950年東京都生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。1980年、社費留学で米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。帰国後、三井信託銀行ロンドン支店勤務を経て、1985年に米銀のモルガン銀行に転職。同行で資金為替部長、東京支店長兼在日代表などを歴任し、東京市場屈指のディーラーとして世界に名を轟かせ、JPモルガンの会長から「伝説のディーラー」と称された。
2000年にモルガン銀行を退職後、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めたほか、一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院商学研究科で6年間、半年の講座を受け持つ。2013年から2019年までは参議院議員を務めた。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。現在、株式会社フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。

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