自分自身が初めて、アジア人だという外見を理由に、人に罵声を浴びせられたのも、おそらくこの頃だったと思う。ユニオン・スクエアのマクドナルドのトイレで白人の酔っぱらいに「お前ら、中国人のせいで」と追い詰められたときには恐怖で震え、何も言い返すことができなかった。
クイーンズに暮らし始めてしばらくしてから、電車のホームで私を見ると「このチンク野郎」と囁き続ける白人のおじいさんに日常的に遭遇するようになった。
自分がアジア人という肉体の中で、どんな感情を持ち、どんな風に生きているかとまったく関係ないところでジャッジされるーーそれは衝撃的な体験だった。私という人間に何をされたわけでもないのに、肌の色と顔の造作だけで憎しみを持つ人がいる。
「アンフェアだ!」
と叫びたい気持ちだった。
そして思い出したのは、日本での差別のことだった。自分のまわりにはいつもある程度の偏見や差別が存在した。一番古い差別とのふれあいは、小学校時代だったと思う。12年通った学校のそばには、韓国人学校があった。それを「チョン学校」と意地悪く呼ぶ同級生がいた。世の中の仕組みとか日本の歴史をきちんと理解するずっと前のことだったかもしれない。その子はいじめっ子で、威張っていた。「チョン学校」という言葉に言いようのない気持ち悪さを感じた。そして彼女の優越感を「バカだなあ」と思い、軽蔑した。
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みんなウェルカム
NYで暮らすようになって20年。ブルックリン在住のフリーライターが今、考えていること。きわめて個人的なダイバーシティについての考察。