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飲み込めなくてもいいのにね

2019.02.25 公開 ポスト

ドリンクバー加藤拓也

最近ロケバス内での朝御飯が続いた。

泊まりなら朝御飯を、例えばビュッフェとか健康なものを健康な気持ちで食べれるけど、場所を転々とする作品だったので仕方がない。

朝御飯って作るのも楽しいし食べに行くのも楽しい。バスの中でビュッフェとかドリンクバーへのワクワクはまだある年齢なんだなと思い出す。
高校生の頃はサイゼリアとかガストとか、カラオケもそうだし、ドリンクバーって最強だった。おかわりして沢山話してた。ビュッフェとかドリンクバーって響きが最強。

 

 

この前、何となく朝からハンバーグが食べたくてガストに行ったら目の前の席でおじいちゃん二人組がハンバーグを食べていた。
片方のおじいちゃんがめちゃめちゃ喋ってて、片方のおじいちゃんは何故か僕が椅子に座った瞬間からずっとこっちを見ていた。

ここからは喋っているおじいちゃんを喋おじい、聞いてるおじいちゃんを聞おじいにする。ややこしいので。

喋おじいは聞おじいがこっちを見ていても気にせず喋り続けた。気にせずというか気づいてなかったかもしれない。
聞おじいはとにかくこっちを見てきた。時代が時代ならあれだ。ガンを飛ばしてるのかと絡まれる。

一応、目をそらしてメニューを見る振りをした。ちらっと目の前の席を確認するとまだこちらを見ていた。完全にガン見。

聞いてるおじいちゃんを聞おじいにしますと言ったけどそもそも聞おじいは全然聞いていないっぽい。メニュー越しの僕と目が合いながら相づちを打っている。本当はガン見おじいだ。でも聞おじいのまま行きます。


聞おじいが朝の定食についていたドリンクバーのおかわりで席を立つと喋おじいは少し黙る。戻ってくると喋おじいはすぐに喋る。聞おじいはまたすぐにこっちを見る。そんな朝御飯だった。
ただ、ずっと見られていてもドリンクバーは最高だった。お茶飲んで食後にコーヒーが飲める。最高&最高。ドリンクバーまでの道に聞おじいが居なければ星五つ。

見られながらハンバーグを食べてる時の僕は見ざる言わざる聞かざるの三猿を思い出していた。喋おじいは喋ってるけど、聞おじいは、喋ってる方を見てないし、聞いてない。

二人があらかた喋り終えて帰ろうかとなった時だと思う。喋おじいが聞おじいにこの話、言わないでねと言っていた。聞いてないから言えねーだろと思った。聞おじいちゃんは口が裂けてもこの話は言わないって言ってた。言わざるが産まれた。

あんなに喋り続けられるのはドリンクバーのお陰だ。年取ってもドリンクバーって最強だ。飲み放題よりドリンクバーの方が響きも良い。朝御飯にドリンクバーがあるのはもっと良い。おじいちゃんたちもドリンクバー最強って思ってたのかなー。

ちなみに喋おじいの話の中身はガチなお金の話でした。

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加藤拓也

1993年12月26日生まれ。大阪府出身。脚本家。演出家。監督。 「劇団た組。」主宰。わをん企画 代表。17歳で構成作家を始め、18歳でイタリアへ渡り、映像演出を学ぶ。帰国後、「劇団た組。」を立ち上げ。23歳で三越劇場作演出家の最年少記録を樹立。若手演出家コンクール2017優秀賞受賞。『部活、好きじゃなきゃダメですか?』では初の連続ドラマの脚本を担当。

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