2月27・28日に行われた2回目の米朝首脳会談。事実上の決裂に終わった理由をめぐり、「トランプ流」を批判する分析が多く出回っているが、それらは当たっているのか? 本当に何も成果はなかったのだろうか?
* * *
世界中の注目を集めた2回目の米朝首脳会談は、非核化をめぐって折り合えず、目に見える成果なく終わった。事実上の決裂と言っていいだろう。
なぜ、「取引(ディール)の達人」と自賛するトランプ大統領は、「信頼できる友人」の金正恩委員長との溝を埋めることができなかったのか。合意文書案まで用意されていたのに、手ぶらで帰国の途につかなければならなかった本当の理由は何か?
事務方による協議の積み上げを軽視し、首脳間の信頼関係に過度に依存する稚拙なトップ外交、アドバイザーや専門家の意見に耳を貸さない政権運営、強烈なエゴと自身の交渉力への過信……。
会談が終わった途端、こうした「トランプ流」がアダになったという解説が、日米の主要メディアでまことしやかに流れ始めた。発信源は、ワシントンで外交・安保のプロを自任するシンクタンクの専門家と、歴代政権の元幹部、新聞などの論説委員ら。俗に「外交エスタブリッシュメント」と呼ばれる非公式ネットワークを形成している専門家達だ。
はっきり言って、彼らの解説には違和感を覚える。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
トランプ時代の地政学
「世界の警察官を辞める」だけでは収まらず、いまや世界秩序の攪乱要因になりつつあるトランプ大統領のアメリカ。海外取材経験の豊富なジャーナリストであり、国際政治研究も続ける著者がトランプ大統領・アメリカの本音を読み解き、日本とのかかわりを考察する。