「緊張して手が震えてるねん。」
電話口で声も震わせ神谷亮佑はそう言った。彼の撮ったGEZANのドキュメンタリー映画「Tribe Called Discord」の告知がはじまったからだ。
「緊張しても何もかわらんねんから、ほっとけよ。」
緊張している相手には全く響かない真っ当な返しに案の定黙り込む神谷。考えてみれば、この男と出会ったのももう10年近く前になるだろうか。
「オレ。パンチでるおって言うねん。」
そう言って差し出した手をわたしは払いのけてシカトしたように思う。なんて胡散臭い名前なんだと思い、関わることを拒んだが、かくいうわたしも何とかかんとかピーポーというふざけた名前をしているから、人のことを言えたたまじゃないことは薄々勘づいていた。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン