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渋谷で君を待つ間に

2019.06.05 公開 ポスト

守って守られて。親と子、家族。

【居場所を考える】孤独と引き換えに自由を手にしてー『Shelter』Porter Robinson & Madeon〔再掲〕カワムラユキ(DJ/作家/作詞家/プロデューサー)

幻冬舎plusフェスまであと8日!!

絵に描いたようなしあわせな家族、絵に描いたような仲のいい親子、なんて幻想で、しあわせの形は人それぞれ。そんな話はわかっているはずなのに、悩みもつきない家族というふしぎな関係。遠かったり、近すぎたり……。あなたにとって、家族や親子関係は、ちょうどよい距離、居心地のよい場所ですか?

*   *   *

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。

*   *   *

いつも心はそばにいたの? 

体はずっとはなればなれだったね

あなたの体温や感触は3歳の頃のままで

 

 

硝子ケース越しに眺めているみたいに

恐る恐る対話をしていた

いつまでも子供ではいられなくて、世界の意地悪と運命に翻弄されてしまった

早く大人にならなければいけなくて、家を飛び出したあの日

もう追われることはなく、帰る場所もない

 

20年以上の歳月を経て対話をはじめた私たちは

もう親子のままではいられなくて、大人と大人だった

あなたの抑圧から遠く離れた場所で、孤独と引き換えに自由を手にして

 

何事もなかったかのように、それぞれの新しい暮らし

また10年と数ヶ月

悲しすぎる過去には触れないように、あなたとあなたが見つけた新しい理想の愛を交えた対話

 

体の中には過去の悲しみが詰まっている

圧倒的な理想の愛を前に、不似合いな悲しみを持ち帰るには気が引けて

自然と家からは足が遠のいていた

 

独立心豊かな大人になった子供を演じるしかなくて

本当は何も言わずに抱きしめてほしいのに、何も出来ずに佇んでいるだけ

でも、それでも良かった

 

小さな小さなその家は、あなたが作ったシェルターで

悲しみの記憶に溢れたその家で、新しい記憶を描こうと、もしかしたらそんな事を考えていたのかな

 

そして私は私自身が作ったシェルターに、あなたを招いた

絵に描いたような団らんがそこに

演じきれたのだとしたら、たとえそれでもいい

 

もうあんまり早く歩けなくなったあなたは、いつの間にか小さくなった体を、神泉の交差点からタクシーに詰め込んだ

ありがとうと、たった一言だけ

あの頃のあなたはあんなにも強かったのに、その面影はない

 

あっという間に月日は過ぎて、あなたがこの世界から消えてしまって

一ヶ月と少し

でも今は、前よりもずっとそばにいると感じている

これからもずっと私のシェルターでいてほしい

 

そしてこの悲しみに満ちあふれた体は、いつか必ずや解き放たれる

時間はあっというまに、跡形もなく哀しみと悦びのすべてを貫いて

 

でも、もう一度だけ、あの頃のように私を抱きしめてほしかった

この思い出に結末はない

 

 

Porter Robinson & Madeon『Shelter』(Sony Music Labels inc.)2016年

 

イベント情報

幻冬舎plus presents
「人生の居場所をどう作る?
~つながりの見つけ方、孤独との付き合い方~」

出演:山口真由/カワムラユキ/松永天馬/矢吹透

日時:2019年6月13日 OPEN 18:30/START 19:30

場所:LOFT9 Shibuya
(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 1F)

チケット:前売¥2000/当日¥2500(税込・要1オーダー500円以上)

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渋谷で君を待つ間に

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。

バックナンバー

カワムラユキ DJ/作家/作詞家/プロデューサー

バレアリックやチルアウトを軸に渋谷拠点で活動中のDJ/作家/作詞家/プロデューサー。

2001年に「灼熱」でデビュー後、メキシコシティーの独立記念塔で開催されたLove Parade Mexico 2003にて10万人を前にプレイ。その後もパリのBatofarやIbiza島のamnesiaなど、世界各国をDJしながら放浪する。

近年は渋谷区役所の館内BGM選曲や、TOKYO 2020 東京オリンピック及びパラリンピックの会場DJ及び音楽演出、アートパラ深川の清澄庭園でのアンビエントインスタレーション、文化庁メディア芸術祭エンターティメント部門優秀賞を受賞したオープンワールドRPG「CYBERPUNK 2077」楽曲プロデュース、スクウェア・エニックス「NieR Re[in]carnation Chill Out Arrangement Tracks」にリミックス参加するなど、活動は多岐に。

作家としては幻冬舎plusにて音楽エッセイ「渋谷で君を待つ間に」を隔週連載中。

音楽家としての最新リリースはIbiza島のレジェンドでDJの師匠でもある、故Jose Padillaに捧ぐ「R.I.P. Sunset」を、自身が運営するウォームアップ・バー「渋谷花魁」のミュージック・ブランド&レーベル「OIRAN MUSIC」よりリリース。

渋谷道玄坂に築約60年の古民家をリノベーションしたウォームアップ・バー「渋谷花魁 shibuya OIRAN」を2010年にオープン、6月で14周年を迎える。

 

Web: OIRAN MUSIC公式サイトカワムラユキ Yuki Kawamura
X(旧Twitter): @yukikawamura821
Instagram: @yukikawamura821

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