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胃腸を最速で強くする

2019.04.27 公開 ポスト

牛乳やキノコスープはNG!胃にやさしい食事の誤解奥田昌子

通勤電車でお腹が痛くなる、逆流性食道炎がなかなか治らない、若い頃より便秘がちになってきた……。口から肛門まで、体を貫く消化管トラブルに悩む人への最新バイブル『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』(奥田昌子氏著・幻冬舎新書)が発売2週間で3刷となる大反響です。
今回は本書の内容から「逆流性食道炎」と「胃に優しい食事」についてご紹介します。
「胃が痛いから今朝は温めた牛乳だけにしておこう」「昼は消化のいいキノコスープで胃を休ませよう」……。ちょっと待った! その選択、間違いかもしれません。

*   *   *

(写真:iStock.com/kazoka30)

逆流性食道炎、ゆるんだ巾着との付き合いかた

逆流性食道炎が増えた原因の一つが、お腹の脂肪、正確には内臓脂肪の蓄積です。お腹の空間には限りがあるため、内臓脂肪は増えるにつれて臓器を圧迫するようになります。
胃に関しては下から押し上げるような形になるので、本来なら小腸に流れていくはずの食べものが進むに進めず、逆流しやすくなります。


内臓脂肪がどのくらいたまっているか正確に調べるには、お腹のCTスキャン検査を受ける必要がありますが、簡単にできるチェック法は、20歳のころと体重をくらべてみることです。10キログラム以上増えていたら危険信号です。
内臓脂肪が気になる人は、まずは脂肪の摂取を控えてください。そして、歩く、階段を使う、自転車をこぐなどの有酸素運動を一日に合計30分、週に5日以上行って、内臓脂肪を燃やしてしまいましょう。


かりに内臓脂肪が付いていなくても、お腹を圧迫すれば胃酸が上がります。巾着の口がゆるくなっているときに、袋をぎゅっとにぎれば中身が口からあふれますね。それと同じことが起きるわけです。
前かがみの姿勢をできるだけ避けて、ベルトや締め付けるタイプの下着でお腹をしぼらないようにしてください。

どちら向きで寝るのがよいか

逆流性食道炎を予防し、改善するには、睡眠中の姿勢も大切です。
寝るときくらいのびのびさせてよ、と、うんざりしたかもしれませんね。しかし、姿勢によっては、喫煙、飲酒と同じくらい逆流性食道炎が悪化することがわかっています。一日の3分の1近くを寝て過ごすのですから、影響が大きいのも納得です。
といっても、難しいことではありません。
ポイントは、「大きめの枕かクッションを使って、頭だけでなく肩の下まで持ち上げる」ことと、「左側を下にして寝る」ことです。


寝るときの姿勢でおそらくもっともよいのは、あお向けで、上半身だけを45度くらい持ち上げた状態です。
頭部が上がるリクライニング式のベッドがあればよいのですが、なくてもかまいません。その場合は枕かクッション、座布団、丸めた毛布などを使って肩全体を持ち上げてください。


横向きで寝るなら右向きのほうがよいという考えかたもあります。胃の形から考えると、右を下にするほうが胃酸が逆流しにくいというのですが、右が下だと巾着の口がゆるみやすいとされ、総合的に考えると左向きのほうがよいと思われます。
図に、それぞれの姿勢で寝たときの胃酸の状態を示しました。

図 寝るときは左向きがよさそうだ (イラスト:坂木浩子)

ただし、胃の形や位置には個人差があります。胃酸が上がってくれば自分でわかりますから、どちら向きが自分にとって心地よいか、実際に試してみましょう。

「胃にやさしい食事」の誤解

「胃が弱っているときは、胃に負担がかからないように消化によいものを食べましょう」という言葉はよく耳にします。
正確にいうと、胃は消化作業をもともとあまり行っていません。脂肪と炭水化物の消化はほぼゼロで、蛋白質を途中まで分解するくらいです。
胃のおもな任務は消化の下準備です。胃液を分泌しながら、蠕動(ぜんどう)運動によって食べものを攪拌(かくはん)し、どろどろにしています。となると、胃の負担にならないものとは、攪拌が楽で、胃からスムーズに出て行く食べもの、ということになります。


攪拌に時間がかかるのは脂肪と食物繊維を含む食品なので、脂肪の多い肉と魚、食物繊維の多いキノコや野菜は元気になるまで控えましょう。
少量ならかまいませんが、食物繊維の多い食品は、繊維の走りかたをよく見て、繊維が短くなる方向で切り、細かく刻み、口に胃の代わりをさせるつもりで、よく嚙んでください

(イラスト:坂木浩子)

攪拌しやすい食品であっても食べ過ぎはいけません。一日3食にこだわらず、何回かに分けて食べれば負担が軽くなります
風邪や疲れ、飲み過ぎ、食べ過ぎで胃が痛いときは、胃酸の分泌を高める食品を控えるのが有効です。カフェインの多い飲料とチョコレート、唐辛子やネギなど刺激の強いもの、酸っぱいもの、炭酸飲料などです。ストレスもできるだけ避けたいところです。


ひところは、胃が荒れているときに牛乳を飲むと、粘膜に膜を張って、回復を助けると考えられていました。温かい牛乳には心も体も温めてくれるイメージがあります。
しかし、研究によると、牛乳で胃の症状が早くおさまることはなく、むしろ牛乳に含まれる脂肪が胃酸の分泌を促すようです。牛乳は控えるか、低脂肪、無脂肪のものにするのが無難です。

 

 

関連書籍

奥田昌子『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』

口、喉、食道、胃、小腸、大腸、肛門。私たちの体は巨大な一本の管=消化管でできている。食べたものを運び、消化し、吸収する消化管は生命活動に欠かせない高度な機能を担うが、繊細で不調をきたすことも多く、消化管の病気を抱える日本人は1010万人にのぼる。最も多いがんも消化管のがんだ。ところが軽い胃もたれや下痢は「そのうちよくなるだろう」と見過ごされ、その陰でがんをはじめ重大な病気が進行する。最新の研究をもとに、強い消化管をつくるために欠かせない食事や生活習慣、ストレス対処法を解説。「管」のすべてが腑に落ちる。

奥田昌子『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』

肉中心の食生活をしてきた欧米人と比べ、魚と穀物中心だった日本人は摂取した脂肪を「皮下脂肪」としてたくわえる能力が低く、より危険な「内臓脂肪」の形で蓄積しやすい。放置すれば高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種がんや認知症の原因になることもわかってきた。 だが、体質だからと諦めるのは早い。内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちやすく、普段の食事や生活習慣の改善が減量に直結するのだ。 肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを、最新の論文をもとに解説。読むほどやせる内臓脂肪の新常識。

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胃腸を最速で強くする

奥田昌子氏著『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』の最新情報をお知らせします。

『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』とは……

口、喉、食道、胃、小腸、大腸、肛門。私たちの体は巨大な一本の管=消化管でできている。食べたものを運び、消化し、吸収する消化管は生命活動に欠かせない高度な機能を担うが、繊細で不調をきたすことも多く、消化管の病気を抱える日本人は1010万人にのぼる。最も多いがんも消化管のがんだ。ところが軽い胃もたれや下痢は「そのうちよくなるだろう」と見過ごされ、その陰でがんをはじめ重大な病気が進行する。最新の研究をもとに、強い消化管をつくるために欠かせない食事や生活習慣、ストレス対処法を解説。「管」のすべてが腑に落ちる。

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奥田昌子

京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。愛知県出身。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で30万人近くの診察にあたる。航空会社産業医を兼務。著書に最新刊『血圧を最速で下げる』のほか、10万部を突破した『内臓脂肪を最速で落とす』や、胃腸を最速で強くする欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』『日本人の病気と食の歴史などがある。

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