昨年11月公開の映画『走れ!T校バスケット部』のDVDが発売された。
原作は累計120万部突破、松崎洋のベストセラー『走れ!T校バスケット部』シリーズ。連戦連敗の弱小バスケ部が、最強チームとなって活躍する痛快青春小説だ。
幻冬舎plusでは、モテたくてバスケ部に入ったお調子者・牧園浩司(通称ゾノ)を演じた、劇団EXILE・佐藤寛太さんのインタビューを3回にわたってお届けする。第1回は、合宿のようだったと振り返る撮影の裏話や、バスケ練習の大変さ、そして“あの”シーンについて――。
(撮影:岡村大輔/インタビュー&構成:藤原将子)
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──映画の公開から5か月、撮影からはもう1年半近く経ちますが、公開時の記事などでは、みんなが一丸となって楽しい撮影現場だったというお話をしていましたね。
本当に仲良かったです! 撮影中はデイシーンが多くて、夜のシーンがなかったので、晩飯はみんなで一緒に食べてました。みんなで自転車を借りにいって、お風呂入りにいって、ゲームセンター行ったりとか、もう本当に高校生みたいなことをしてましたね。(撮影が)終わってからも、公開前までにみんなで何回も集まったり。
──本当に一致団結して作られたという感じですね。バスケットボールのシーンの撮影も多かったと思いますが、バスケはとてもハードなスポーツですよね。
そうですね……すごくキツかったです。必死でした。ずーっと練習してましたもん。みんな1日で1キロくらいやせて、1キロくらい食べてました。毎日筋肉痛だったし(笑)。
──でもそれだけ、毎日しんどくても楽しかった。
そうですね。いまでも連絡を取ってるメンバーがいて、それは大きいなって思います。この歳になると友達って、そうそうできないから。人に会う仕事だからこそ、なかなか深い関係にならないじゃないですか。でも、そういうメンバーがいる。それはすごい財産だなって思います。
──練習期間はどのくらいでしたか?
1か月くらいじゃないですかね。みんなそれぞれ仕事があるので、本当に集まりだしたのは1週間前かな。それか、(撮影)本番が始まってから、という感じで。でも撮影終わりにもバスケの練習をして……そういうところがすごくチーム感がありました。
みんな、撮影が終わると自然に「じゃあ練習しよう」って言い出して、ボール持って体育館に行って。それぞれ動きが決まっていたので、各自でシュートやパス練習とか、自発的にやっていました。体育館がめっちゃ暑くて汗だくで、“the青春”って感じでした。
……でも悔しかったな~。もっとやりたかったな。
──バスケが、ですか?
どの作品でもそうかもしれないけど、終わったら「もっとできたな」って、やっぱり思いますね。
近い時期に公開された別のバスケの映画を観させてもらって、そっちは出演者の6人中5人が経験者で。やっぱり(バスケが)うまいんですよ。うまいからこそできるカメラワークとかもあって、「こんなふうにできてたら、試合のシーンとかも全然違ったのに!」とか思いました。
こっちは8人中、経験者はゼロだったから。「T校」は、その場にいるような臨場感があるシリーズじゃないですか。だから、そこの部分をもっと……バスケのシーンはもっとカメラがコートの中に入ったり。カメラマンさんが中に入っての撮影だと時間もかかるし、ケガの危険性もあるから、僕らみたいな素人じゃできない。そういう心配があって踏み切れなかった部分はあるかもしれないから、「もっとやっておけばよかったな」って思いましたね。
でも、撮影のときは本当にみんな一生懸命演じたし、実際に仕上がりを見たら、応援している保護者や部員、顧問の先生の気持ちも映し出されていて、素敵なシーンになっていたと思います。
──シュートシーンなど、バスケの撮影では緊張感のある場面も多かったと思うのですが、そういうシーンはどうやって乗り切りましたか?
撮影中は「緊張してる」とか言えないじゃないですか。みんな、そのシーンにいくまで練習してましたし、初めてやるシュートじゃなかったので、いい緊張感でした。みんな気負わず、お互いミスしても声をかけ合って、すごく明るい現場でしたね。イライラすることもなく、変なストレスがあるわけでもなく。スムーズにいかないこともいっぱいありましたけど、すごくいいムードで撮影が進みました。
──撮影がスムーズにいかなかったことというのは?
やっぱり試合シーンで、シュートが決まらないとか。わかりやすいところでは、シュートとかドリブルさばきとかなんですけど、パスの連携とか、ディフェンスのポジションといった細かいところもありますから。バスケをやったことがある人たちが見ると、ディフェンスやカバーの動きも目についちゃう。そういうところを補うために、みんなで撮影終わりに練習してました。
──経験者がいないというのが嘘みたいでした。
最初は「大丈夫かな」って思ってました(笑)。バスケ指導の半田さん(元日本代表の半田圭史さん)の教え方がめちゃくちゃうまいんですよ。あの人のおかげでうまくなりました。人を育てる才能が半端じゃないと思います。だって全員素人ですよ。最初お仕事をもらったときに「俺、やったことないですけど大丈夫ですか?」って聞いたら「全員素人だから」って言われて(笑)。終わったあとに知ったんですよ、半田さんがめちゃくちゃすごい人だって。
そういえば半田さんから、「高校時代とかに始めてたら、いいとこまでいったかもよ」って言われました。これ大きめに書いといてください(笑)。
──それはすごい! コーチ目線の方ですから、何かを感じたんでしょうね。
僕、絶対いちばん練習やってましたから!(笑)。(陽一役で主演の志尊)淳くんが、前の現場の撮影で朝6時に集合だったときに、コンビニで偶然会ったんですよ。で、「何してるの、寛太?」って聞かれて、「T校の映画のためにバスケの練習にいくんです!」って。朝はリングが空いてたので、公園の路上リングで練習してたんです。そこで、ストリートで集まってきている高校生とか、バスケがうまそうな人たちと一緒にやってました。
──知らない人と一緒に? 「ちょっと交ぜて」みたいな?
そうですね。逆もありました。「こっち5人で、入ったら6人になるからやらない?」って誘われたり。やりましょう、みたいな感じで。撮影が終わってからも、たまにやりますね。みんなで集まったりして。この映画のメンバーじゃないんですけど、(北村)匠海とかと一緒にやったりします。
――映画では脱いでいるシーンもありますが……
練習のときに脱いでたら、(監督から)「それゾノっぽいから、本番でも脱いで」って言われて。でも、バスケって本当に痩せるんですよ。「ガリガリだけど大丈夫かな」と思って、ずっと腕立てとかしてました。
それが撮影の2週間前くらい。脱ぐならもうちょっと早く言ってくださいよって(笑)。前日はみんなで焼肉行ったんですけど、僕だけバナナを持参して、バナナと焼肉食べて「よし、これで明日ムキムキだな」みたいな。その後、(佐野)勇斗と一緒にサウナにも行って(撮影に)挑んだんですけど……。
調べたら、ボディビルダーの人もローカーボダイエットは1週間前からするんですって。皮下脂肪を落としてから、当日と前日は炭水化物をめっちゃ食べる。そしたらエネルギーが筋肉になるらしいんですけど、僕はその逆をしちゃった(笑)。
(第2回へつづく)