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私のインスタグラム顛末記

インスタグラムをはじめたのは、2010年の冬頃のこと。もともと私は写真が好きで工房で自作の針穴写真機を作ったり、トイカメラを抱えて写真を撮りに出かけたりする趣味があり、iPhoneにもカメラアプリをいくつか入れていた。その中で、インスタグラムのアイコンが一番気に入ったので愛用することになった。現在のアイコンはすっかり記号化されているが、初代はポラロイドカメラ風のデザインでかわいらしかったのだ。

インスタグラム初代アイコン。アップデートで変貌してしまった時は悲しかった。

あんなに手間のかかるカメラが好きだったのに

インスタグラムは、手軽にいろんな効果を出すフィルターを使って遊ぶことができるので、あっさりハマった。なにより高額なフィルム代や現像代がかからないのは、大きな理由だった。そもそもわざわざフィルムを使う手間をとってでも味わいを求めたり、予測不能な写真が撮れる楽しさが良くてトイカメラで遊んでいたのに、インスタグラムはなんだかその場で超簡単に「それっぽい」画像が何種類でも出来上がってしまうし、しかも何度でも撮り直しができてしまう。

ううむ、これはいかん、罠だ! フィルムの手間に飽き足らず、さらなる手間をかけまくって大判フィルムを装填できる針穴写真機までいちいち作ったのに、このアプリは、薄っすら私の心に影を落としていた「フィルムって高いなあ~」という気持ちをザクザクえぐってくる。これじゃカメラを使わなくなってしまうじゃないか! 

0.01mmの銅箔に、0.25mmの正円の穴をあけるという大変な苦労を経て制作した木製のシノゴ針穴写真機。……を、インスタグラムで撮った写真が残っていた。このインスタ以降、9年間フィルムを装填していない。

実際には、トイカメラ写真に使っていた以上のお金を、スマホの月賦と通信料として支払い続けているのであり、興味・関心・投資がスマホに集中するという超巨大な「合理化の罠」にハマって、大好きなはずのトイカメラ界を自ら圧迫しているのだが、「便利さ」と「目先の快楽」にいとも簡単に飲まれた私は、案の定、トイカメラも針穴写真機もすっかり手にすることがなくなり、あっという間にインスタグラム一辺倒になってしまった。

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オオカミ少女に気をつけろ!

嘘、デマ、フェイク、陰謀論、巧妙なステマに情報規制……。混乱と不自由さが増すネット界に、泉美木蘭がバンザイ突撃。右往左往しながら“ほんとうらしきもの”を探す真っ向ルポ。

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泉美木蘭

昭和52年三重県生まれ、作家、ライター。日々、愛しさと切なさと後ろめたさに苛まれている不道徳者。社交的と思わせて人見知り。日頃はシャッターをおろして新聞受けから世間を覗いている。趣味は合気道、ラテンDJ、三浦大知。

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