映画『走れ!T校バスケット部』のDVDが好評発売中だ。
原作は累計120万部突破、松崎洋のベストセラー『走れ!T校バスケット部』シリーズ。連戦連敗の弱小バスケ部が、最強チームとなって活躍する痛快青春小説だ。
幻冬舎plusでは、モテたくてバスケ部に入ったお調子者・牧園浩司(通称ゾノ)を演じた、劇団EXILE・佐藤寛太さんのインタビューを3回にわたってお届けする。最終回は、いまの仕事を始めたきっかけや、自身の学生時代、先輩として中高生へアドバイスするとしたら……?
(撮影:岡村大輔/インタビュー&構成:藤原将子)
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──原作や映画のように、高校時代は人生の方向がぼんやりと見えてくる時期ですよね。佐藤さんは高校3年生でいまのお仕事を始めていますが、きっかけはどんなことだったのですか?
オーディションです。僕はただ運がよかっただけなんです。宝くじが当たったみたいな(笑)。中学校の友達がいまの事務所のEXPG STUDIOというスクールに通ってて、「オーディションあるから受けてみなよ」みたいな、本当にそういう軽いノリで受けてみました。
僕は歌もダンスもできなくて、でも映画が好きだったので俳優業に興味があったんです。特待生として迎え入れてもらって、それからスクールに通って。1年後に東京で開かれたオーディションに合格してから、すぐに「上京してください」って言われて上京しました。何も考えてないです(笑)。それこそ本当にぼんやりでしたね。ぼんやり「ああ、どうしよう……」という感じです。
それまでは「理学療法士になりたいな」って思ったこともあったんです。僕、めちゃくちゃマッサージうまいんですよ! 国家資格を取ろうかなとも思ってました。もう一つは、普通に大学に行って、選択肢を広げてから将来のこと決めていこうかな、とのんびり考えていました。
──オーディションに受かっていく過程で、自分の将来の姿がぼんやり見えてきたという感じですか?
いや、見えてないですね。いまも見えてないですもん(笑)。(俳優の仕事を)やめることはないと思いますけど、そんなに大きな決断をしたとはいまでも思っていないです。ただ、やりたい仕事ではありました。僕のなかでは「仮面ライダーになりたいな」というのと同じ感じですね。
──ちょっとだけ人生の先輩として、中高生の読者たちにアドバイスするとしたら、高校時代はどういう過ごし方をするのがおすすめですか?
中学は野球部に所属してたのですが、顧問の先生が厳しくて(笑)。運動部ってエネルギーがありあまってる子たちが集まるじゃないですか。でも顧問の先生が怖くて怖くて、校内で「思いっきり羽を伸ばす」みたいなことができなくて。課外活動してる子たちのことをうらやましく思ってました。なので、高校で自分が部活に所属することなく、課外でいろんなことをはじめたときは本当に楽でした(笑)。
──縛られるものがなかった。
何もなかったですね。課外でキックボクシングをやってたから、(高校の)体育祭とか体力テストでも上位にランクインできたし、不自由はなかったです。
中学校のときは先輩も後輩も大好きだったし、チームスポーツを経験しておいてよかったなと思いますけど、高校のときはもう、やりたいことを自由にやって、途中からEXPG STUDIOにも通い始めました。自分のやりたいことをやって、それに対して融通をきかせてくれる先生も多かったので、すごく恵まれてたなって思いますね。
……でも、それがいいかはわからないですよ。成績は落ちましたし(笑)。いまはそれが仕事になっているから、「ああ、ラッキーだな」と思います。
──どんどん学校の外に出ていったほうがいいよと。
それはあるかも。でも、それは(高校生ではなく)中学生に向けて言いたいかもしれないですね。高校はある程度学力で分かれてて、似た考えの人たちが集まってくるけど、中学校って地域で集められてるから、生徒がそれぞれに好きなものとかも全部違うんですよね。小学校ではまだ体も大きくないし、ケンカとかしても大ケガにはならないけど、中学生だとちょっと危ないなって思うから。
中学校の子にこそ、外に出て、自分の好きなことでつながれる人とつながれたらいいんじゃないかなって思います。高校生になったら、そこで一生付き合っていくような友達ができるんじゃないかと思うので、中学生のときこそ課外で何かをやって、いろいろな人と出会うのがいい。そして高校では、自分の好きなことをそのままやったらいいんじゃないかな。
──学校の外の社会に出ると、友達の年齢の幅も広がりそうですね。
地元だけじゃなく、外につながりを持つことが大事だと思います。世代を超えて人付き合いすると善悪の判断も身につけられるし、学生の時期に物事に対する嗅覚を身につけることも大事ですよね。「知らない」っていうことが、いちばん危ないから。いろんなことを学生のうちに知っておくといいと思います。
──最後に、原作を読んでいた中学生の自分に何か声をかけるとしたら?
いまになってカルチャーというものに関心が湧いてきたので、中学生のときの自分には頑固になりすぎず、柔軟に自分の好きなことに自信を持ってそれを追いかけ続けられる情熱を持ち続けてほしいと思います。それがいつか自分の糧となり、土台になるものだから。
(おわり)