看板に誘われていた。
「純喫茶ローレンス」と書かれたその看板を見たとき、その数秒後にはわたしの足は階段を登るために石の床を蹴っていた。
吸い寄せられるような暗がり。重い扉を押して中に入ると、誘われるように惹かれた理由が溢れでてきた。
そこで流れている時間は、時計の針が刻むリズムとは一定の距離を置いた、独自に間延びしたものだった。
何種類もの花や草は枯れ、ドライフラワーとして店内を埋め尽くし、クルミの殻やドライフルーツ、置かれた物たちはくたびれて、でも確かに存在していた。彼らは時代に参加することを拒絶しながらそこにいて、静かだが気丈に振る舞っていた。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン