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奇跡のホルモン・スイッチ

2019.05.11 公開 ポスト

やる気のスイッチは「恐怖心」と「プチ目標」加藤雅俊(薬剤師・体内環境師)

(写真:iStock.com/Topp_Yimgrimm)

体内でつくられ、生命活動をコントロールする「ホルモン」。その一つ、生きる意欲をつくるホルモンがドーパミンです。ドーパミンは、達成感や快感、爽快感、喜び、感動などをもたらしてくれます。そんなドーパミンがたくさん分泌される「魔法のスイッチ」はどこに? 加藤雅俊さんの最新刊『奇跡のホルモン・スイッチ――潜在能力を引き出す』からお届けします。

記事の終わりに、加藤雅俊さんの健康セミナーのご案内があります。

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失敗する社長と成功する社長は目標の立て方が違う

私のオフィスは高層ビルに入っているのですが、以前、私のオフィスの上の階に、名の知れた社長さんの会社が入っていました。その人は、よくテレビでも取り上げられていたIT社長でした。しかし、2~3年はメディアをにぎわしていたものの、やがて失脚していきました。

これは、私の推測ですが、彼はきっと「お金持ちになりたい」という気持ちでビジネスを始めたのだと思います。もちろん、お金持ちになりたいというのは、起業する上で 当然の願望なので、否定するつもりはありません。

けれども、彼にとって問題だったのは、本当にお金持ちになれたということです。普通は、願っても大金は手に入りません。だからみんな、試行錯誤して努力を続けます。

でも、彼はものすごいスピードで成功し、大金を手にしました。そして、早くに目的を  達成したため、仕事の中でお金以外の目的を見出せずにドーパミンを出すことができなくなり、お金持ちになったことで、無気力な状態に陥ったのではないかと思うのです。

私はいろいろな企業の経営者ともお付き合いがありますが、本当の意味で成功する社  長というのは、お金を目標にはしません。「こういうことがしたい」「仕事が楽しい」「人の役に立ちたい」という思いこそが出発点であり、お金はあとからついてくるものだと考えています。

たとえば、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は、総資産が10兆4000億円ですし、日本人では、ソフトバンクの孫正義氏が、2兆3000億円です。彼らも、生活のために働いているわけではないでしょう。

億万長者になっても、なお働く理由はなんなのか? 

ズバリ、「自分の才能を生かせる」「自分の可能性を試せる」「人に喜んでもらう」「社会に貢献している」。そして、そのプロセスにやりがいを見出しています。だから、いくつになってもリタイアせずにいる。仕事が楽しいからです。

成功する人は、信念を胸に、未知なる目標を持ち、ワクワクドキドキしながら、さらなる高みを目指し、達成したら脳内から報酬としてドーパミンが出る。そうした好循環を築いているのです。

平穏無事な生活をしているとドーパミンが減る

ドーパミンは、達成感や快感、爽快感、喜び、感動などをもたらしてくれるホルモン なので、不足すると無感動、いわゆる「イヤなヤツ」になります。あなたの周りに、いつも無表情だったり、ほとんどリアクションをとらない人はいないでしょうか。

たとえば、誕生日に、奥さんがおいしい料理を作ってお祝いしてくれたとします。でも、ドーパミンが出ないと、喜びがありませんので「だから何?」という状態になります。奥さんは、サプライズであなたが欲しがっていたものもプレゼントしてくれました。 でも、あなたは「あぁ、これね。ふーん」と、薄いリアクションです。これでは、夫婦関係が終わるのは時間の問題でしょう。

日頃から、「どうしてもっと喜んでくれないの?」「なんでこの映画を見て、泣かずにいられるの?」など、無感動を指摘されているなら、ドーパミンが分泌されにくくなっているのかもしれません。

実は、平穏無事な生活を続けていると、脳内のドーパミンが減ってくることがわかっています。人は、変化のない生活だと、退屈に感じます。そして刺激を求めるようになります。ですから、退屈を感じている主婦に不倫が多いのは、ワクワクドキドキすると ドーパミンが出るからです。

何かを得るために苦労すればするほど分泌される

平穏無事な生活をしているとドーパミンが減ってきます。では、どのようにすればドーパミンを増やせるのでしょうか。

ワクワク、ハラハラ、ドキドキすることで分泌されるということを踏まえると、お勧めしたい方法があります。

それは、「未知なる恐怖心」を体験することです。

たとえば、今まで出たことのないマラソン大会に参加するなど、未経験な分野にちょっとした恐怖心をもって取り組むのです。

未知なる恐怖心があると、「どうすれば完走できるんだろう」「普段、どのような練習をしたらいいのだろう」「もっと速く走るためにはどうすればいいんだろう」と、勉強をすると思います。
「10キロ走れた」となれば達成感や幸福感が生まれるので、「15キロ走れるかも」「今度はハーフマラソンに出てみよう」というふうに考えられるようになります。こうやって、 達成感、幸福感、自信が積み重なって、どんどん新たなドーパミンが分泌されるのです。

そして、本当にマラソンを完走したときには大きな達成感を得ることができます。ただし、このときに出るドーパミンを貯めることはできません。その瞬間と同じ達成感に浸り続けることはできないのです。

けれども、その代わりに「達成した」ということが記憶に刻まれます。実は、これがとても大切。快楽を経験してドーパミンが分泌されると、その記憶が脳の中の「海馬」という器官に蓄積されます。脳にとってこのドーパミンはご褒美のようなものです。だから、また ご褒美を手に入れるために、人は努力するのです。

ドーパミンは面白いホルモンで、何かを得るために苦労すればするほど、達成したときに分泌されるドーパミン量も多いのです。振り子の幅が大きければ大きいほど、反対   側に同じくらい動くのと同じように達成するまで、どんなに辛い思いをしたかで、苦労  の振れ幅の大きさが全てドーパミンとしてかえってきます。

目標は「ドカンと大きく」より「小刻みにして習慣化」

大きなプロジェクトが無事に終わったとき、あなたは大きな達成感を得ると思います。でも、その後になかなかやる気が出ない、モチベーションが上がらない、空虚な気持ち   になってしまうということはありませんか? いわゆる、燃え尽き症候群です。

何かを達成したときに、次の目標がないと廃人のようになります。なぜなら、ドーパミンが分泌されないからです。

ですから、何かを達成した後は、すぐに新たな目標を立てることが大切です。目標は、  大それたものである必要はありません。むしろ、小さなもののほうがよいでしょう。

ポイントは、小刻みに目標を刻んで、その都度ドーパミンを獲得し、次なるやる気に つなげることです。

たとえば、1か月後に提出する企画書があるとします。その場合「今日は17時までに、
このページまで仕上げよう」くらいの目標で充分です。達成できたらビールを飲んだりして、自分にご褒美をあげます。そしてこれを習慣化していきましょう。

小さな目標をクリアする習慣をつけるためには、目標を「見える化」することが大変おすすめです。

現在、わたしは血圧相談室というものを開設しているのですが、そこでも必ず血圧を記録し、折れ線グラフで記載しています。「徐々に落ちてきてますね」ではなくて、「先週は200でしたけど、今は180ですね。1週間で20も落ちましたよ」という具合です。

やはり、記録というのはとても大切です。少しずつ変化すると自分ではよくわからなくなるので、目に見える形で自分に教えてあげるのです。

そういう意味で言うと、「仕事を17時までに終わらせる」「1日5人ではなく、7人の
お客様を訪問する」というように、数値で測れるものはわかりやすくていいですね。

もちろん、数値化しにくい事柄でも大丈夫です。たとえば、「最近、上司に褒められるようになった」「愚痴を言わなくなった」など、毎日、自分の“良いところ”を10個書き出すことを習慣化すると、分泌されるドーパミンのおかげで、やる気エネルギーの充填もできますし、人の良い部分が見えるようになってきます。

*   *   *


*ほかにも、精神を安定させるセロトニン、強い体とメンタルをつくるテストステロンなど、ホルモンについてさらに詳しくお知りになりたい方は『奇跡のホルモン・スイッチ――潜在能力を引き出す』をお読みいただけると幸いです。

*5月16日(木)19時からは、幻冬舎にて加藤雅俊さんの健康セミナーを開催します。ホルモンだけでなく、1人1人の疑問・不安にお答えする質問コーナーもあります。詳細・お申し込みは幻冬舎大学のページからどうぞ。

加藤雅俊『奇跡のホルモン・スイッチ 潜在能力を引き出す』

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加藤雅俊『薬に頼らず血圧を下げる方法』

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奇跡のホルモン・スイッチ

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加藤雅俊 薬剤師・体内環境師

JHT日本ホリスティックセラピー協会会長。JHT日本ホリスティックセラピストアカデミー校長。ミッツ・エンタープライズ株式会社代表取締役社長。薬剤師。体内環境師。薬学予防医療家。薬に頼らず症状に対して食事や運動など多方面からアプローチする「ホリスティック理念」を日本で初めて唱えた第一人者。現在、昭和大学薬学部研究室にて「食と運動と脳(心)の関連性」について臨床研究に取り組んでいる。著書は『薬に頼らず血圧を下げる方法』(アチーブメント出版)、『1日1分で血圧は下がる! 薬も減塩もいらない!』(講談社)、『食事をガマンしないで血糖値を下げる方法』(マガジンハウス)ほか多数。著書累計は220万部を超える。

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