根拠のない自信がありすぎる。相手の都合や気持ちは眼中にない。プライドが傷つきやすい。ホンネで話せる友だちがいない。イラッとするとツイッターでつぶやく……あなたのまわりにも、こんな人はいませんか? いま、自分のことしか考えられない「自分大好き人間」が急増しています。そんな彼らの心理メカニズムを徹底解明したのが、心理学者、榎本博明先生の『病的に自分が好きな人』。本書の一部をダイジェストでお送りします。
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「うつ」には2つのタイプがある
うつになりやすい性格として、昔からよく知られているのが、執着気質だ。執着気質とは、何ごとも徹底的にやらないと気がすまない、凝り性、几帳面、責任感が強い、生真面目でいい加減なことができないといった性質をさす。
従来は、このような生真面目で責任感が強く、ものごとがうまく進まなかったり、問題が生じたりすると、何とかしなければと一生懸命に頑張り、それでもうまくいかないと自分を責めるといったタイプがうつになると考えられてきた。実際に、そのような傾向が顕著だった。
ところが最近では、責任感に欠け、思い通りにならないとすぐに投げ出し、人のせいにして攻撃する他罰的なタイプの人物が、落ち込んだとか傷ついたといって休みをとったり、うつの診断を求めたりするケースが増えてきたことが話題になり、新型うつとか現代型うつとかいわれている。
従来型が人のためにきちんと責任を果たさなければと思うあまり追い込まれていくのに対して、現代型は思い通りにならない自分をもてあまし、何とかしてくれと周囲に助けを求めるかのように落ち込みや傷つきを訴える。いわば自己中心的な感じのするうつだ。
従来主流だったうつが、真面目で責任感の強いタイプのうつだとすれば、最近増えてきたうつは、依存的で甘えの強いタイプのうつということができる。
仕事や勉強がうまくいかないとき、自分が悪いと思い、自分が何とかしなければと思うよりも、だれかが何とかしてくれるべきだと思い、何とかしてくれない人が悪いと考える。職場で思うような評価が得られないと、もっと頑張らなくてはと思うよりも、評価する立場の上司に対して批判的になる。
自分が落ち込んで、仕事に前向きになれなくなったのも、そんな上司の責任だといって攻撃する。自責型のうつではなく、他人を責めるタイプのうつといえる。
ちょっとしたことで傷つき、キレる
うつになりやすい人が自分大好き人間だというと、意外な感じがする人がいるかもしれない。
だが、ものごとが思い通りにいかないときに、自分のやり方が悪い、自分は無能だ、自分の努力が足りないなどと自分を責める従来型のうつと違って、段取りをちゃんと整えてくれない周囲が悪い、自分を評価してくれない上司が悪いなどと他人のせいにするところに過剰な自己愛が読みとれる。
自分かわいさのあまり、何でも他人のせいにして自分の傷つきを防ごうとするのである。うつになるのも自分を守るひとつの戦略なのである。
自分大好き人間のうつは、自責の気持ちによるものではなく、責任を転嫁し、同情を誘い、手心を加えてもらうためのもの、特別扱いをしてもらうためのものとみなすこともできる。
このタイプには、ちょっとした他人の言葉に過敏に反応し、傷つくという特徴もみられる。
情緒不安定で、感情的に動揺しやすいため、ミスを指摘し注意されたり、期待したような評価が得られないと、ひどく落ち込み、あたかも自分の全人格を否定されたかのように、怒りを爆発させたりする。ミスを注意した側からすると、逆ギレとしか言いようのない反応になる。
だが、本人が傷ついたのは事実であり、落ち込んでいるのも事実なのである。つまり、周囲からすればあまりに調子のよいうつということになっても、本人が傷つき落ち込み苦しんでいるというのも事実であり、そこに対応の難しさがある。
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