根拠のない自信がありすぎる。相手の都合や気持ちは眼中にない。プライドが傷つきやすい。ホンネで話せる友だちがいない。イラッとするとツイッターでつぶやく……あなたのまわりにも、こんな人はいませんか? いま、自分のことしか考えられない「自分大好き人間」が急増しています。そんな彼らの心理メカニズムを徹底解明したのが、心理学者、榎本博明先生の『病的に自分が好きな人』。本書の一部をダイジェストでお送りします。
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日本人に多い自己愛タイプ
アメリカ人に多い誇大的で無神経なタイプの自己愛過剰は、自己顕示性が強く、特権意識が強く、傲慢で、人に対して優位に立ちたがり、人の気持ちに無関心で、平気で人を利用する、非常に押し出しの強いタイプである。
それに対して、日本人に多い引っ込み思案で神経過敏なタイプの自己愛過剰は、人からどう思われるかばかりを気にし、人の顔色を窺うあまり自己主張ができず、人から拒否されたり批判されたりすることを極度に恐れるため率直に自分を出せないタイプが多い。
人から賞賛されたい気持ちが強いのに、それを表に出せずにうじうじしがちで、自分を抑えすぎるタイプも少なくない。
このようなタイプが極端になった場合、DSMIV TRのパーソナリティ障害の分類のうち、自己愛性パーソナリティ障害でなく、回避性パーソナリティ障害に近い状態になると考えられる。
回避性パーソナリティ障害というのは、あらゆる面で自信がなく、失敗したり傷つけられたりするのを避けるため、仕事も対人関係もすべてにおいて消極的なタイプである。
行動しなければ失敗することもないが、うまくいくこともない。消極的なスタイルに徹するあまり、いつまでたっても自信をつけることができないところが問題となる。
失敗や傷つきを恐れる気持ちはだれにもあるものだが、それが極度に強く、日常生活に支障をきたすほどになった場合に、回避性パーソナリティ障害ということになる。
4つ以上当てはまった人は……
DSMIV TRによれば、社会的制止、不全感、否定的評価に対する過敏さの3つが、このタイプの行動様式に広範にみられる特徴である。診断基準をわかりやすくまとめると、つぎの7つの特徴のうち4つ以上が当てはまれば、回避性パーソナリティ障害と診断される。
(1)批判されたり拒否されたりするのを恐れるあまり、対人関係が重要となる仕事を避けようとする
(2)嫌われるのが怖いため、好かれているという確信がもてないかぎり、人とかかわりたいと思わない
(3)恥をかくことやバカにされることを極度に恐れるため、親しい間柄でも遠慮を示して距離を保つ
(4)人前では、批判されることや拒絶されることに神経過敏になっている
(5)不全感のために、知り合ったばかりの人たちの前では自由に振る舞えない
(6)自分は社会的に不適格である、長所がない人間である、他の人より劣っているといった劣等感が強い
(7)どうせうまくいかずに恥をかくことになるといった思いが強く、何かに挑戦したり、新たなことに取り組んだりすることに対して、異常に引っ込み思案になる
4つ以上当てはまる人となると少ないかもしれないが、そこまで極端でなくても、引っ込み思案で神経過敏なタイプは日本人に非常に多いと思われる。
人のことを思いやり、自分を抑えて、協調的な人間になるように躾けられる日本では、人からどう思われるかを極度に気にする引っ込み思案なタイプは、ごくふつうにみられる人間像なのではないか。
そのような意味では、自分はすごいという自己誇大感を潜在的に抱えつつ、賞賛されたいという気持ちを密かにもちながらも、自信がもてずに人からどうみられるかにビクビクし、評価されなかったり失敗したりしたときの傷つきを恐れるあまり何ごとにも引っ込み思案になるという形の自己愛過剰は、多くの日本人が陥りがちな心理といえる。
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